軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

学園の小さな祭り 午前

学園で行われる小さい祭り。

学園中の生徒や教師が参加していて、村でやっている祭りと同規模かそれ以上なので小さいとは思わないけど、本人たちが小さいと言うから小さいのだろう。

まあ、少し前にやったパレードを考えれば、小さい祭りでいいのか。

俺は無心でラーメンを作り続ける。

今回の屋台で出すラーメンはオーソドックスな豚骨醤油ラーメン。

太めのストレート麺に、トッピングはチャーシューとホウレン草、それにコーンが少々。

いつもの屋台なら実験的なラーメンを提供しているのだが、今回は準備時間が短いうえに食数が必要とのことで、このチョイスになった。

豚骨醤油ラーメンなら、メンマやノリもトッピングしたかったのだけどな。

量を確保できなかった。

残念。

屋台の近くにテーブルや椅子が用意されているので、客が食べる場所には困っていない。

困ってたのは 箸(はし) が使えない客が多く、フォークが足りなくなったことだな。

学園の食堂で使っているフォークを貸してもらうことになった。

このあたり、学園の生徒たちがいろいろと駆け回って手配してくれた。

ありがたい。

この学園は貴族の子供たちが主に通うと聞いていたので、もう少し扱いに困る生徒が多いのかと思っていたけど、勝手な思い込みだったようだ。

考えてみれば、貴族の子供たちが通うのだから礼儀作法には厳しいのだろう。

学園に在籍していたフラウたち文官娘衆や、在籍中のイースリーも礼儀作法はしっかりしているしな。

まあ、何人かは俺に対する貴族語がどうこうでアルフレートたちに注意されていたけど……

俺は気にならなかったから、そこまで厳しく注意しなくていいと思うぞ。

生徒には生徒のルールがあるのだろうから口は出さないけど。

ラーメン作りに集中する。

三台の屋台をフル活用し、注文の手間を省くためにメニューを一種類にし、流れ作業でラーメンを作ることで、五分で八杯の提供を可能にした。

五分で八杯だから、十分で十六杯、一時間で九十六杯。

俺の屋台で用意したのは二百食だったので、午前で完売となってしまった。

追加の食材を用意したくても、長時間の仕込みが必要なものもあるのですぐには用意できない。

つまり、今回はこれが限界。

俺やスタッフの疲労も、大きいしな。

ティゼルがもてなしたい人には最優先で提供しているし、魔王やビーゼル、グラッツ、ランダン、ユーリに学園長など、提供していないとまずい相手にもちゃんと提供できた。

俺がここにやってきた目的は、果たせたと言える。

屋台の撤収作業をしながら、周囲を見回す余裕もできた。

ほかの屋台も、順調に販売している。

マルーラの屋台は従業員による列処理が見事だ。

今回のマルーラの屋台を取り仕切っているのは、ポッテ。

マルーラが創業したときからの古株従業員で、マルコスとポーラの代理を任されることもあるマルーラの幹部の一人だ。

彼女にはマルーラの二号店を任せたいとポーラは言っているのだが、本人はポーラのもとで働き続けたいらしい。

もう少し独立心を持ってほしいと、ポーラは 零(こぼ) していたが……

安定した職場を望む気持ちもわからないでもない。

まあ、無理やりに二号店を任せても上手くいかないだろうから、本人がその気になるまで待ちたいところだ。

クロトユキや甘味堂コーリンの屋台も問題はない。

こっちは調理をしなくて済む物を中心に持ってきているからな。

代金も魔王国の一括払いとなれば、会計で時間も取られない。

渡すだけだ。

酒の提供をする屋台は……

宴会場になっているな。

まだ午前中なんだが?

まあ、見た感じ子供の姿はないから、問題はないのか?

おっと、ホウの姿を確認。

楽しそうに利き酒みたいなことをやっている。

しかし、全員が全員ではないだろうけど、ラーメンを食べて、カレーを食べて甘味を食べてと、なかなか大食漢が多い。

アルフレートに聞いたら、ほぼ全員が数日前から胃の調整をしているらしい。

なかなかの気合の入りよう。

喜ばれているようでなによりだ。

さて、当然ながら俺たちが持ってきた屋台だけでは提供数が足りず、不足分を補う形でゴロウン商会やダルフォン商会が屋台を出している。

なので腹が減って困るという事態にはならないだろう。

酒は不足しそうだが、飲み物のほうは十分にある。

アースがやっている店の屋台を発見。

メイドさんが給仕をしてくれている。

提供しているのはコーヒーと紅茶の二種類だけ。

甘味はクロトユキや甘味堂コーリンと被るので、避けたらしい。

「ティゼルさまがもてなしたい方は、当店のコーヒーをお望みだったので」

なるほど。

ちなみに、アースの店で出しているコーヒーは、ブレンドコーヒーになる。

俺は品種を考えずにコーヒー豆と考えて【万能農具】を使ったので、一つの種類のコーヒーの木ができると思っていたのだが、どうやら複数種類のコーヒーの木を育てていたらしい。

それらを同じ種類だとまとめて収穫して、加工していたので自然とブレンドになってしまった。

これはこれで美味しいのだが、コーヒーの木の種類が複数あることを知ったルーとフローラによって、種類別にコーヒー豆が採取された。

すっぱかったり、苦味がきつかったり、好みはあるだろうけど、種類があるのはいいことだ。

多様な好みに対応できる。

これに 炒(い) り方まで変化させれば、奥深いコーヒー道の始まりになるだろう。

……

まあ、村のみんなはブレンドコーヒーでいいやと落ち着いたけど。

横道に逸れた。

ブレンドコーヒーは美味しい。

屋台の撤収作業を終えた俺はアースの屋台でブレンドコーヒーをもらい、大きな 催(もよお) し会場のような場所に近づく。

そこには、十メートル四方の大きさのジオラマが展示されていた。

スケールはわからないが……ぱっとみて魔王国の一部だろう。

山や川、海の場所がよくわかる。

街は……かなり小さい?

いや、廃墟になるのかな?

ジオラマの横にいたグラッツが、ティゼルが新しく作る国の周辺だと説明してくれた。

「ワイバーンたちによる上空からの情報をもとに、トラインとマアが作ったものだ」

へー。

実際にはトラインが指揮をして、マアが材料を用意し、協力してくれた生徒たちが作ったのだろうけど。

よくできている。

「うむ。

一目瞭然。

軍の行軍に役立つ」

子供たちが作った物を、軍で利用しないでほしいなぁ。

「ははは、たしかに。

軍は軍で作ってみるようにしよう」

そうしてくれ。

で、ティゼルが新しく作る国(街)は、どこになるんだ?

見た感じ、高い山も少なく、まっ平らとは言わないが荒野が広がっている。

「あそこだ」

グラッツが、魔法で場所を示してくれる。

荒野のど真ん中にある廃墟だな。

もともと街があったから、水には困らないらしい。

ただ、交通の便は悪そうだ。

「まあ、だいたい破壊したからな」

なるほど。

目の前にあるジオラマの場所は、魔王国と人間の国々との緩衝地帯。

昔、魔王国が大きく攻め込み、その後に大きく戦線を下げた。

本来なら人間の国々が押し返すのだが、魔王国は戦線を下げるときに街や橋などの破壊を行った。

それゆえ、人間の国々は簡単には押し返せなくなった。

軍が休憩できる場所がないからだ。

さらに軍の行動は隠しにくくなり、攻勢の様子が見えれば魔王国は準備する。

苦労して移動して、待ち受ける魔王軍と戦うのは厳しい。

人間の国々はそう判断し、押し返すのを諦めた。

いや、一応は緩衝地帯を浸食するように前線を押し上げているので、諦めてはいないか。

即座に奪還するのを諦めただけだ。

そのあいだ、魔王国は領土の防衛拠点として大きな要塞を作った。

侵攻を考えなければ、魔王国が有利ということか。

……

当時、魔王国はさらに侵攻する予定はなかったのか?

「食糧が足りなかった。

占領した地域の住民の世話ができないぐらいに」

なるほど。

無理に侵攻して占領しても、反乱を起こされるだけか。

しかし、聞いてはいたが、大きく戦線を下げるのは凄いな。

戦果を放棄するかのような案を実行できるのは魔王の指導力かな。

グラッツが得意気な顔をしているのは、この戦線を下げるアイデアを出したのがグラッツだからだ。

知ってるよ。

過去に何度も聞いているから。

うん、酒の席で。

ロナーナにも言ってたぞ。

とりあえず、荒野の中央にある廃墟。

そこがティゼルが作る街の予定地らしい。

現在、そこにはワイバーンたちが巣を作っているらしいけど。

……

「なにか気になることでも?」

あー、いや、専門家が意見を出しあって決めた場所なんだろ?

「ティゼルを中心に、軍の幹部を交えて決めたな。

人間の国々を刺激しすぎないように、ほどよい距離をと……とりあえず、参考までに気になる点を聞かせてほしい」

参考って、俺は素人だぞ。

「素人の意見も大事な視点だ」

そうか。

それじゃあ、言うが……

交通の便が悪すぎないか?

「?

それはさっきも説明したが……」

いやそうじゃなくてだな、ティゼルが作るのは魔王国との交渉を代行する国だろ?

「そう聞いているが?」

その国に行くのに、人間の国からも魔王国からも交通の便が悪いのはどうなんだ?

「……」

魔王国側はビーゼルがいるから、なんとでもなるとして……

人間の国側からは、大国二つが蓋をする形で存在するから、その大国二つと仲がよくないと 辿(たど) りつけないんじゃないか?

俺としては、北か南の海岸に街を作ったほうが便利だと思うぞ。

船さえあれば、いろいろな場所からやってこられるし、万が一のときは海へ逃げられる。

俺の意見を聞いたグラッツは深く頷き……

ティゼルを呼んで、街を作る場所を変更した。

え?

いいのか?

俺の思いつきを、そのまま取り入れて?

ティゼルとグラッツは、声を揃えて問題ないと返事してくれた。

そ、それならいいんだけど。