作品タイトル不明
お疲れさま会
村に戻った。
落ち着く。
王都でなにかあったわけじゃないけどね。
一仕事(ひとしごと) 、終えた気分というやつだ。
アルフレート、ティゼル、ウルザ、トラインらは学園があるので王都に残ったけど、それ以外は全員が戻ってきている。
無事でなにより。
とりあえず、今晩はお疲れさま会の名目で宴会をやって、明日からはいつも通りになる予定だ。
天使族やドワーフたちは一足先に宴会をやっているようだが……
まあ、見逃そう。
準備の邪魔にならないように、会場予定の広場の隅のほうでやっているしな。
その宴会に参加しているわけではないが、会場予定の広場でグーロンデがオルトロスのオルをあやしている。
オルは留守番だったからな。
最初は一緒に行く予定だったのだが、グーロンデのいるドラゴンたちの行進にはどう頑張っても同行できず、クロたちの行進にも体格差で無理。
グーロンデの背中や、俺の馬車に一緒に乗る案もあったのだが、それはオルが拒否した。
なので仕方なくオルは留守番となり、本人もそれで納得したと思ったのだが……
やはり不満だったらしい。
数日振りのグーロンデに甘えまくっている。
うーん、オルは完全にグーロンデの家族だな。
だからと言うわけではないのだが、オルはもう少しギラルにも優しくするべきだと思う。
グーロンデたちが帰ってきたとき、先頭にいたギラルを 避(よ) けてグーロンデのところに駆け寄ったのは問題だと思うんだ。
ギラル、お前を迎え入れる態勢だったろ?
今後を考えると、ギラルにも愛想を振りまいてもいいと思うんだ。
なぜ俺がこんなことを考えるかと言うと、俺の目の前でギラルがグーロンデとオルの様子を見ているからだ。
……
どうしよう。
留守番をしていたクロの子供たちに取り囲まれている俺としては、声をかけにくい。
あ、見かねたドースがギラルを誘いに来た。
助かる。
ドースに連れられて行くギラルを見送り、俺はクロの子供たちとボール遊びを再開する。
留守番をさせていたからな。
これぐらいはする。
まあ、夜に宴会が始まるまでだけど。
ボールを投げることは問題ない。
慣れたからな。
ただ、ボールを持ってきたクロの子供たちを 撫(な) でて褒めるのが大変だ。
留守番をしていたクロの子供たちは、クロたちの群れの中では中堅から下に位置する。
普段、俺と接触する機会が少ない者たちだ。
なので元気いっぱいだ。
興奮しすぎて、ちょっと怖い。
しかし、これは普段が寂しいということだろう。
俺としては全員を等しく扱いたいのだが、クロたちの群れの序列を 崩(くず) すのはよくないからな。
難しい問題だ。
今回みたいに役割で機会を作るのがいいのかな。
おっと、考えごとで撫でる手の動きが悪くなっていた。
すまない。
考えるのはあとにしよう。
いまはクロの子供たちに集中だ。
ほら、次のボール、いくぞー!
ボールを投げ続けたので、肩の疲労がすごい。
慣れたと思ったのだけどなぁ。
【万能農具】のボールなら疲れなかったかもしれないが、それだとクロの子供たちが咥える前に手元に戻って来てしまうしなぁ。
いや、【万能農具】はボールにはなれないか。
なれないよな?
うん、無理っぽい。
ボールは農具じゃないもんな。
槍?
畑を守る道具なら農具だ。
たぶん。
夜、宴会が始まった。
大騒ぎにはならない。
小騒ぎぐらいだ。
お疲れさまという主旨だからな。
外のパレードに関しての反省は、村に戻る前に終わらせている。
ここでは、参加していない者に外のパレードの様子を語るのがメインになるだろう。
ああ、ザブトンの子供たちが着ぐるみから出た件は、俺からザブトンに報告して許してもらっている。
緊急事態だったからな。
だが、それに甘えることなく、今後は注意していきたい。
それと、パレードの最中にアイギスが拾った鯨の骨は、五村の神社に奉納してきた。
後回しにすると忘れそうだったからな。
変な感じは受け取った以降はしていないから大丈夫だとは思うのだけど、万が一を用心した。
今度、様子を見に行こう。
普段の宴会と同じ……ではなく、趣向が凝らされていた。
宴会場の中心に配置された長テーブルの上に並べられた料理は、村の外でのパレードを模した形になっていた。
カットしたキュウリが目立つサラダは、獣人族の一団を表現しているのだろう。
ナス料理はハイエルフの一団か。
クロの一団は、ダイコン料理だ。
まあ、少し想像力を働かせる必要はあるが、十分にわかる。
ドラゴンたちは 飴(あめ) 細工で作られているので、想像力の必要はない。
ただ、飴の量を用意できなかったか、ドースとギラル、ヒイチロウの三体だけになっているな。
あ、向こうでライメイレンを作っている鬼人族メイドたちがいるから、時間がなかっただけかな?
蒸(ふ) かしたジャガイモで模されたのは、ザブトンの子供たちの一団。
俺や子供たちが乗っていた馬車は、カボチャ料理で表現されている。
サイズ(スケール)は元の食材のせいで多少のばらつきはあるが、気にならない。
パレードの雰囲気が出ている。
しかし、この長テーブル以外にも料理はあるからか、誰も手を出さないのはどうなのだろう?
最初は見て楽しむだけか?
料理だから食べるべきだと思うのだけど?
一応、料理を用意してくれた鬼人族メイドたちに確認をしてから、俺は自分が表現されているのであろうカボチャ料理に手を伸ばした。
俺が食べるのを待っていたようだ。
長テーブルの料理が減っていく。
天使族、山エルフ、ドワーフ、一村、二村、三村、四村、五村の一団も料理で表現されているが、フルーツで作られた三村、四村が人気だな。
あっという間に消えた。
ブロッコリーが中心の一村は……駄目なのかな?
ブロッコリー、美味しいんだけどな。
妖精女王、飴細工を食べるのはかまわないが本人たちの目の前で砕かないように。
変な空気になるだろ。
いや、子供たちに配ったら許されるというものではないと思う。
飴細工のギラルの頭部をグラルに渡すんじゃない。
グラルが困っているだろう。
もう少し考えるように。
ライメイレン、飴細工のヒイチロウを守るんじゃない。
なにもしてない?
魔法で防壁を張ってるだろ?
わかるぞ。
妖精女王や子供たちが飴細工のヒイチロウに近づけてないからな。
手のひらサイズの酒樽で表現されているのはドワーフの一団……この酒樽、中に酒が入っていたりするのか?
入っていない?
どの酒を入れるかで揉めて、入れる前にドワーフたちが飲んだと。
なるほど。
飾りだな。
飾りと言えば、長テーブルから少し離れた場所に、鳥を模した氷細工が三つある。
白鳥、黒鳥、フェニックスの雛のアイギスだ。
最初、これらもドースたちと同じ飴細工かと思ったけど、氷細工だった。
氷なので白鳥と黒鳥はそっくりだが、氷を削る 粗(あら) さで表現を変えているのか、見ただけでこっちは白鳥、こっちが黒鳥と断定できる。
なかなかの腕だ。
誰が作ったのかと聞いたら、トラインと一緒に学園に行った山エルフだそうだ。
村の外のパレードに向かう前に製作してくれていて、今日まで魔法で保存していたらしい。
ふむ、あとで手紙で感想を送るとしよう。
え?
まだ見所がある?
アイギス?
氷なのでアイギスは、ちょっと表現が甘いかなぁと思うけど……
そう思っていたら、氷細工のアイギスが燃えた。
氷細工のアイギスの表面に、燃える薬品を塗ってあったそうだ。
へー。
自動で着火する仕掛けとかは、さすが山エルフだ。
ところで、この炎で氷は 溶(と) けないのか?
やっぱり、溶けるよな。
でもって、溶けた氷に負けない炎。
薬品の炎だからな。
……
消火作業!
感想の手紙には、クレームも 添(そ) えておこう。
そう考えながら、俺は村に戻って来たなぁと改めて思ってしまった。