軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

他国の話

キアービットからガーレット王国の分裂の話を聞いた。

なんでも、四つの勢力に分裂したそうだ。

天使族の助言通りにやっていこうとする“ 従順(じゅうじゅん) 派”。

天使族による助言からの卒業を願う“ 脱却(だっきゃく) 派”。

ガーレット王国を捨てる天使族を敵と定めた“敵対派”。

天使族がどうとか気にせず、ただ強力な国家を目指そうとする“独自派”。

というのがキアービットの説明。

えーっと……

つまり、現状維持で温厚なのが“従順派”かな?

「残念。

彼らは私たちを追って魔王国に移住し、その後の独立建国を考えているのよ」

違った。

過激だった。

「ちなみに、一番大きい勢力」

最悪じゃないか!

ガーレット王国の規模を知らないので、一番大きい勢力と言われてもぱっと人数が予想できないが、百人や二百人じゃないのはたしかだろう。

分裂したとはいえ国の規模なんだから、万単位だよな。

そんな大人数の移住が、問題を起こすのは誰だってわかる。

俺でもわかる。

五村(ごのむら) を作ったときも大変だった。

希望者が各地から集まり、種族や生活習慣の違いで問題が 頻発(ひんぱつ) した。

ヨウコの活躍で、五村では大事にはならなかったが……

魔王国はその規模の移住や移民を受け入れられるだろうか?

いや、魔王国のこれまでの歴史から、魔王国の行動方針に 恭順(きょうじゅん) しての移住なら苦労してでも受け入れるだろう。

だが、移住のあとで独立建国を考えているなら受け入れない。

それはただの反乱勢力だ。

魔王に連絡……いや、その前に確認。

現状はどうなっているんだ?

もう移動を開始しているのか?

「“従順派”に絡めとられた 天使族(どうぞく) が止めてるわ」

よかった。

あ、いや、絡めとられた天使族は大丈夫なのか?

「自分から好んで絡めとられた者だから、気にしなくて大丈夫よ」

キアービットの説明がちょっと理解できなかったので、ティアに視線を送ったら横にいたルィンシァに男女の関係で残った者だと教えてもらえた。

「結婚は例の厳しい試練でできませんでしたが、それでも別れずに八十年。

男性側は人間種なのでそろそろ 寿命(じゅみょう) を考えるころで……それゆえ、捨てられないとのことです」

な、なるほど。

「割り込んでしまい、失礼しました。

キアービットさま、続きをどうぞ」

ルィンシァから 促(うなが) され、キアービットが話を続ける。

「その男性は、現在のガーレット王国の国王の叔父にあたる人物よ。

先王の弟ね。

ガーレット王国での発言力もそれなりにあり、実質的に“従順派”を止めている人物なのよ」

実質的?

「天使族の基本 姿勢(スタンス) は 助言者(アドバイザー) だからね」

実際に動いているのが、その先王の弟ってことか。

ん?

待って。

その先王の弟が寿命を迎えたら“従順派”が移動を開始するってこと?

「そうなっちゃうかな」

……な、なんだったら世界樹の葉を持っていくか?

「ありがと。

でも、当人が寿命を迎えることを望んでいるからね。

パートナーの天使族も納得しているし、こっちの都合で先送りにしてってわけにはいかないでしょ?」

……

まったくもって、その通り。

反省。

「まあ、問題はそれより緊急のことがあって」

緊急の問題?

「“従順派”は移住を考えて海に面した場所に移動を開始していたのよ。

止められたから国外に出てないけど、国の東側は“従順派”が支配している状態」

まあ、そうなるか。

となると、問題は東側に元居た別の勢力との抗争かな?

「それもあるのだけど……えっとね」

キアービットが言いにくそうにして、周囲に助けを求めている。

だが、周囲の天使族はそっぽを向いた。

事前の話し合いで、キアービットから伝えることになっているようだ。

キアービットは諦めたようだ。

「“従順派”が支配している場所というか勢力なんだけど……」

ふむ。

「ガーレット王国を改めて、《 六村(ろくのむら) 王国》を名乗っちゃって」

……

か、変わった名前の王国だな。

「だよねー。

はははははははは……」

すぐに変更するように。

「やっぱり?」

当然だ。

知っている人には、大樹の村が関わっていると思われる。

「知らない人は……六つの村から始まった王国と考えることも」

かもしれないが、余計な問題を 招(まね) きたくない。

俺が国名をどうこう言うのもおこがましいが、キアービットやマルビットなら変更させることもできるのだろ?

《六村王国》という国名は困る。

変えさせてくれ。

「そこでお願いがあるんだけど……」

ん?

お願い?

「実のところ、私たちもその国名は問題があるだろうと思って変えるように命じようとしたんだけど……」

命じようとした?

してないのか?

「たとえば。

そう、たとえばの話だけど、《大樹の村王国》という国名はどう?」

は?

ガーレット王国の“従順派”の支配地域の国名だよな?

駄目に決まっている。

いや、俺が駄目というのも変だけど。

大樹の村は、この村の大事な名前だ。

勝手に使わないでほしい。

「うん。

そこでお願いに繋がるのだけど……国名を考えてほしいの」

俺が?

“従順派”の支配地域の国名を?

「変更しろと命じたとして、次の国名がどうなるかわからないでしょ?」

まあな。

「向こうの活動方針から、こちらに不満のある国名になる可能性が高いと思うの。

そこで、こっちから国名を押しつければいいと思うのだけど、私たちで考えても村長の判断次第になるなら、村長に任せたいなって」

……

な、なるほど。

キアービットのお願いは理解した。

だが、俺に国名を考えるという大役を与えないでほしい。

天使族から候補を出して、そこから選ぶ形にさせてくれ。

「わかったわ。

それじゃあ、これが候補の一覧ね」

え?

「ちゃんと用意してるわよ」

数枚の薄い板に小さい字で書かれた国名は、ぱっと見ても百を超えている。

……

そして、どれもこれもぱっと考えた国名ではなさそうだ。

国名の横に 由来(ゆらい) とか理由とか考えが書かれている。

ここから選ぶの?

俺がそう聞くと、ルィンシァがわかっておりますと頷き、天使族が動き出した。

そして用意された巨大な板。

板には各所に国名が書かれており、その国名を囲むように 溝(みぞ) が彫られている。

その板が壁に立てかけられ、ルィンシァから渡されるナイフ。

つまり……

「投げて、当たった場所の国名にしましょう!

ちなみに、板からはずれた場合は《ああああ王国》とします!」

……

天使族のみなさんは盛り上がっているけど、さすがにこの決め方は 酷(ひど) い。

あと、真ん中にある「全部」ってなんだ?

全部の国名を繋げるのか?

冗談だよな?

抵抗したけど、結局はナイフを投げて《正統ガーレット王国》になった。

ルィンシァが、思いっきり舌打ちしていた。

「村長を 煩(わずら) わせる勢力など、《ああああ王国》で十分でしたのに」

怖いなぁ。

確認だけど“脱却派”“敵対派”“独自派”は問題を起こしていないんだな。

よかった。

俺、“脱却派”“敵対派”“独自派”を支持したい。

他国の話だけど。