作品タイトル不明
村長の休日(クロたちと遊ぶ)
村では秋の収穫を終え、武闘会に向けての準備が開始された。
武闘会が終われば冬に備える仕事があるが、この時期の俺は手が 空(あ) いている。
なので、クロの子供たちと遊ぶことにした。
文官娘衆たちからも、ちゃんと休むように言われているしな。
……
あ、クロとユキも参加ね。
承知。
えーと、それじゃあ、なにをして遊ぶかな。
俺たちは村の南側にあるレース場にやってきた。
クロたちが存分に走れるのはここぐらいだからな。
畑?
たしかに畑は収穫を終えて春まで空いているが、畑で遊ぶのはよろしくない。
理由は悪い細菌や求めていない種子の侵入を防ぐためだ。
【万能農具】があるので村では無用の心配だが、「畑で遊んでもかまわない」という認識を広めたくはない。
子供たちが、村の外に行く機会は多くなっているしな。
話を戻して。
俺はレース場で、定番のボール投げをすることにした。
ボールを投げながら、なにをするか考えればいいやと思ったのだ。
俺の第一投。
俺の投げたボールに、えっと……五十頭ぐらいが競いながら……あ、バトルロイヤルになってる。
あー……
ああー……
う、うん、ユキがボールを持ってきたのか。
よしよし。
強かったな。
クロも頑張ったぞ。
一番最初にボールに到達したのに、次々と挑戦者が現れて……
よしよし。
クロの子供たちが、早く次を投げてとこっちを見ている。
それはわかったが、その前にさっきの一投の問題点を解決しよう。
いきなり投げた俺も悪かったが……
うん、負傷者が出ているのはよろしくない。
治癒魔法が使えるホーリースライムを連れてきているから大丈夫?
いや、そういう問題ではなくてだな。
わかったわかった。
それじゃあ、参加する数を制限するぞ。
五頭ずつだ。
それから、攻撃は禁止。
誰かがボールを 咥(くわ) えたら、それで終わりだ。
俺のところに持ってくる前に、なんとかすればいいわけじゃないからな。
途中で落としても一緒。
最初に咥えた者を 褒(ほ) める。
咥えたというのはどういう状況とか、確認しない。
そこまで 厳密(げんみつ) にやらないから。
ルールの 際(きわ) を攻めようとするんじゃない。
わかったら五列で整列。
先頭、準備いいか?
投げるぞー。
ここにいるクロたちは全部で……八十頭ぐらいいるから、最低でも一周に十六回は投げる必要があった。
でもっていまは七周目だから……百回……は投げているな。
俺はどこかの野球チームのピッチャーだろうか?
投げているあいだに、ボールを咥えたものを褒めているのでさらにハードだ。
そういや、山エルフたちにボールを投げる装置を作ってもらったが、あれはどこにやったかな?
クロたちの評判が悪くてお蔵入りしたんだっけ?
いまの俺には必要だから……ああ、魔王が野球の練習に使えると持って行ったんだった。
ふう。
よし、七周目終わり!
次の周で最後にするぞ!
キリが悪い?
十周にすべき?
ははは。
俺は頑張った。
ボール投げ十周のあとは、一緒にランニング。
そして、森に行って狩りになったけどな。
ボール投げで活躍できなかったクロの子供が、なんとかいいところを見せたいと頑張っていたから仕方がない。
あ、ホーリースライム。
つきあってくれてありがとう。
疲れてないか?
そうか、それはよかった。
屋敷に戻るけど、どうする?
わかった、送るよ。
頭に乗ってくれ。
よし、クロたちも帰るぞ。
結局、前半はボール投げに終始してしまったのは反省だな。
途中、俺が埋めた 道具(アイテム) をクロたちが探す「宝探し」を思いついたが、埋める労力や俺が埋めた場所を覚えておかないといけないことなど、問題が多そうだったので見送った。
宝探しはまたべつの機会にやろう。
ん?
クロとユキ、どうした?
楽しかったから、またやろう?
ああ、もちろんだ。
屋敷に戻ったら、酒スライムがホーリースライムを迎えにきた。
仲良くやっているようで。
そして、鬼人族メイドが 荒(あら) ぶっているな。
酒スライム、また盗み飲みをしたのか?
違う?
鬼人族メイドが 零(こぼ) したのを飲んだだけ?
それなら仕方がないかな?
「残念ながら、お酒を 鍋(なべ) に入れるのを、お酒を零したとは言いません」
鬼人族メイドが怖い顔をして、そう言った。
……
うん、俺もそれは零したとは言わないと思うな。
酒スライムを叱ろうとしたら、ホーリースライムとともに消えていた。
すばやい。
鬼人族メイドも見失ったようだ。
すぐさま、酒スライムを追った。
あー……
とりあえず、クロの子供たちとはここで解散。
よしよし。
また遊ぼう。
俺はクロとユキを従え、自分の部屋に向かう。
……
俺の部屋に逃げていたのか、酒スライム。
違う?
俺の背中に隠れていた?
え?
そうなの?
でもって、俺が部屋に入る前に離れて、先回りしたのか。
凄いな。
ちなみに、現在も俺の背中にホーリースライムがいる?
……
ほんとうだ。
気づかなかった。
クロとユキは知っていたのか?
そうか。
次からは教えてほしいな。
あと、酒スライム。
鬼人族メイドが鍋に酒を入れているのだから、料理に使っていたのだろう。
つまり、鍋は火にかけられる可能性が高い。
注意しないと 煮(に) られるぞ。
まあ、そんなドジはしないだろうけど。
で、酒スライムが俺の部屋までついてきたのは……コタツが目的ね。
まだコタツを出すには少し早いが、俺の部屋は特別扱いで用意してもらった。
冬に備える仕事をするようになれば、忙しくなるからな。
いまのうちにということだ。
保温石(ホットストーン) はセットしていないので、温かくはないけど。
それでもかまわない?
まあ、いいけどね。
クロとユキも……自然とコタツの中に潜り込んだな。
ホーリースライムもコタツに入るか?
そうか、それじゃあ酒スライムの横に。
俺は自分の飲み物を用意し……酒じゃないぞ、酒スライム。
コタツの上に飲み物をセット。
クロ、もうちょっと右に移動してくれ。
ああ、すまない。
俺はコタツに足を入れ、クッションを背中に置いてそのまま仰向けになった。
ふう。
夕食まで、まだ少し時間があるが……
今日はこのまま、のんびりするとしよう。
うん、こんな日も悪くない。