軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

犬たち

二匹の犬は、俺の後を付いて歩いてきた。

なかなか素直だ。

そのまま、寝床を囲う内側の堀と柵を越え、焚き火の近くに招いたが、近付いてこなかった。

やっぱり、獣は火を怖がるのか?

とか思っていたら違った。

二匹は俺の倒した猪の身体の方に近寄っていた。

猪が大きいから、必要な分だけ切って放置していたのだ。

……腹が減っているのか?

減っているんだろうな。

待て待て。

猪の肉は兎の肉より美味かったんだ。

全部をやるワケにはいかない。

俺は手早く【万能農具】を包丁にし、猪の肉をカットする。

とりあえずモモの部分は確保。

あとはロースとかヒレだが……あばら骨が……【万能農具】の包丁の前には何の障害にもならなかった。

確保した肉を大きめの葉に包んで、木の幹の寝床に運ぶ。

この大きめの葉は、畑の外周部を開拓している時に発見したものだ。

そして、残った肉を骨ごと犬たちにやった。

二匹とも凄い勢いで猪を食べ始めた。

食べやすいように小さく切ってやろうかと思ったが、必要はなかったようだ。

とりあえず……今の作業で理解した。

テーブルがいる。

考えてみれば、いままで地面での生活だった。

もっと早く気付けば良かった。

程よいサイズの丸太を縦に真っ二つにし、半円状にした後、動かないように半円の頂点を少し平らに削り、完成。

野性味溢れる長テーブルの完成。

ついでに丸太の椅子も用意。

一気に文化度が上がった気がする。

この作業中も、犬たちは猪肉を貪っていた。

かなり食べている。

身体のサイズよりも食べてるんじゃないかと疑うぐらいだ。

まあ、無駄にされるよりはいいか。

俺は食事中の犬たちを放置し、小屋を作ろうと考える。

畑で何かが収穫できるようになったら、保管する場所が必要だしな。

小屋というよりは倉だな。

俺はトイレを作った感じで作ろうとする。

【万能農具】があれば、拙い知識でもなんとかなるものだ。

しかし、素人に高床は厳しかった。

結局、本当にトイレと同じような感じの場所ができただけだ。

違いは広さと床。

広さは八畳ぐらい。

保管場所にする予定なので、それなりの広さが欲しかったからだ。

四方の柱をそれなりに太い木を使うことで、強度的にも問題は無い。

床は木板を並べておらず、そのまま地面となっている。

収穫物を保管することを考えれば、地面丸出しの方が冷えるだろうと考えたからだ。

この後、棚を作ってそこに収穫物を保管することにする。

さて、棚作りかと木材を取りに行こうとした時、犬たちは食事を終えていた。

猪は見事に骨だけになっていた。

君たちの胃袋はどうなっているのかな?

などと考えていると、メスの犬が苦しそうな悲鳴を上げた。

食べ過ぎか?

俺は慌てて近付こうとしたが、オスの犬が唸って俺の接近を妨害する。

そんな場合じゃないだろうと思ったが、メスの犬はウロウロとした後、また悲鳴を上げる。

なんだこれ?

……ひょっとして、出産するのか?

え?

野外で?

こんな場所で産んでいいのか?

……駄目だよな。

産める場所。

木の幹の寝床?

あそこには肉を保管している。

となれば……

俺は二匹の犬を、作ったばかりの倉に誘導する。

野ざらしよりはマシだろう。

メスの犬もそう思ったのか、素直に倉に入り、隅の方でウロウロするようになった。

オスの犬はそれを不安そうに見ている。

お産……お産……

駄目だ。

欠片も知識が無い。

とりあえず、日が暮れる。

日が落ちれば気温も下がる。

俺は倉の中で火を焚くことにした。

部屋の中央付近の地面を軽く掘り、簡易な囲炉裏のような形を作り、まずは灰を敷く。

その上に木を組み、火を付ける。

煙は灯り窓から抜けていく。

扉も無いし、燻されることは無いだろう。

後は……飲み水か。

俺は即席で大きなバケツのような物を木を削って作り、そこに水を運んでいく。

メスの犬がガブガブと飲んでいるから、間違いではなかったようだ。

その後……ここで産んだ場合、子供は地面に落ちる……地面にダイレクトでいいのか?

しかし、毛布だなんだと上等な物は無い。

こうなると判っていれば、兎か猪の毛皮を確保すべきだった。

前に見たTVでは、馬が藁の上で出産とかしていたな。

しかし、この辺りに藁なんて上等な物は無い。

森に入って草を集めることならできるかもしれないが、もう日が暮れる。

耕し続けるならともかく、草を刈り集める作業を暗い森の中でやるのは厳しい。

なんとかできないか。

とか考えていると、メスの犬は地面を掘るようなアクションをする。

……

俺は【万能農具】をスコップにしてみる。

シャベルとスコップの違いは、足を掛ける部分があるか無いからしいが、俺の中の感覚ではスコップは片手で持てる物。

シャベルが両手で扱う物といったイメージだ。

どうでもいい。

俺は倉の片隅をスコップで掘った。

元々、この辺りはクワで耕しているから柔らかい。

そこをスコップで弄ることで、さらに柔らかくなった。

俺は部屋の隅の方で一畳分ぐらいをスコップで柔らかくしてやった。

メスの犬も俺が何をしたか理解していたのか、柔らかくした場所で穴を掘り、そして手や身体で固めて出産場所を作った。

後は見守るだけだが……

出会ったばかりの俺が見ている方が変なプレッシャーだろう。

俺は後をオスの犬に任せ、倉から離れた。

日は完全に落ちており、寝床近くの焚き火と倉から漏れる明かりのせいで、やけに真っ暗に感じた。

無事に出産してくれればいいが……

このまま寝る気にはなれず、俺は寝床の傍の焚き火を明かりに小物作りをすることにした。

ちなみに、夜に見る猪の骨は怖かったので、クワで耕し、肥料になってもらった。