軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

インテリジェンス・ボックス

俺の質問に反応するように、箱の蓋が開いたり閉じたりする。

すごい。

ちょっと感動。

……

でも、冷静に周囲の者たちを確認。

誰かスイッチを押してたりしないよな?

俺をからかうにしては、手が込んでいるから大丈夫だとは思うが……

うん、大丈夫そうだ。

しかし、この箱に意思があるのはわかったが、どうしてそんな箱が必要だったんだ?

箱に意思を持たせても意味がないように思えるが?

箱に聞いてもイエスとノーぐらいしかわからないから、ルーに確認する。

「 こういった箱(インテリジェンス・ボックス) の利点は二つよ」

ルーが言う利点の一つは防犯。

箱に主人を覚えさせることで、主人以外に開かない箱にすることができる。

なるほど。

もう一つの利点が整理。

「適当に物を放り込んでも、箱が整理してくれるのよ」

へー。

「さらに、経験を積んだ箱なら、主人が必要とする物を取りやすい場所においてくれたりね」

そんなことまでできるのか。

便利だな。

「ええ、だからインテリジェンス・ボックスは貴重で高価よ。

しかもこのサイズだから、いろいろと使い道はあるしね。

中に入っていた魔導書が全然、 傷(いた) んでいないから、中の物を保存する機能もあるかもしれないわ」

ルーがふふふと笑っている。

薬草の整理でもさせるのだろうか。

……

少し考える。

「ルー、この箱の整理とはどんな感じなんだ?」

「えーっと、私が知っている箱だと、きちっと並べた感じだったわよ。

本とかを入れたら、本の背を上にして取りやすい感じに。

ああ、箱の蓋が開いているときは駄目よ。

蓋がきっちり閉まっていないと整理してくれないわ」

「適当に物を放り込んでも、蓋を閉めれば整理してくれるって感じか」

「そうよ」

「なんでも整理してくれるのか?

例えば食材とか?」

「そのはずよ」

ルーはそう答えながら、箱を見る。

箱は蓋を開けた。

イエスか。

なるほど。

……

俺は箱の中になにもないことを確認。

たき火用の 薪(まき) を【万能農具】で削り、その削りカスを箱の中に入れた。

ルーは俺がなにをやっているのかわからず、聞きたそうにしてきたが少し待ってもらう。

失敗したら恥ずかしいからな。

俺は箱の蓋を閉め、質問した。

「会話はできるかな?」

箱の蓋が開き、その中で薪の削りカスが文字を作っていた。

“もちろんです。マスター”

おおっ、成功だ。

これでコミュニケーションがとれる。

俺はルーにどうだと自慢しようとしたら、ルーは俺が引くぐらい落ち込んでいた。

お、思いつかなかったからかな?

……ルーは首を横に振っている。

違うようだ。

それじゃあ、どうしてかな?

ルーは俺の質問を無視して、先ほど箱から取り出した魔導書を俺に見せた。

表紙を開いて一ページ目。

“ 空飛ぶ絨毯(フライング・カーペット) の作り方”

へー。

そんな絨毯が作れるのか?

ルーが俺に見せるようにパラパラとページをめくっていく。

……

二百ページぐらいあったけど、空飛ぶ絨毯の作り方は最初の十ページぐらいまでで、残りは空飛ぶ絨毯の育成方法というか育成日記みたいだな。

まあ、じっくり読んだわけじゃないから間違っているかもしれないけど。

俺がそう感想を述べたら、ルーが涙目だった。

「家に帰ったら、一ページ目から翻訳に協力してください」

……

ああっ!

ルーは魔導書の文字が読めなかったのか!

そして、箱が表示した文字も!

俺は文字を意識すると、魔導書に書かれた文字も箱が表示した文字も同じだった。

“帝国悪魔文字は、それなりに有名だと思うのですけどねー。

あ、でも魔導書は暗号付きが基本だから読めなくても不思議じゃないですよ”

箱がそう書いていたが、ルーにはなんの慰めにもならなかったようだ。

しかし、箱は気にしなかった。

“空飛ぶ絨毯はインテリジェンス・カーペットとも呼ばれており、私の同僚みたいなものです”

へー。

“私の輸送にも使われていまして……ああっ!

思い出しました!”

なにをだ?

“私を運んでいた空飛ぶ絨毯が、この森の上空で暴れ始めて私を落としたのです!”

それは大変だったな。

傷は大丈夫か?

“心配無用です。

頑丈さには自信がありますし、小さなへこみぐらいでしたら少しすれば 修復し(なおり) ますので”

そうか。

それは頼もしい。

“ありがとうございます。

それで、思い出したことなのですが運ばれていた箱は私だけではありません”

“私を含め、十五個の箱が落とされたのです”

……十五?

“はい”

全部、インテリジェンス・ボックス?

“そうです。

マスター、お手数ですが私の親類を探してもらえないでしょうか?

私たちが落とされてから、どれだけ時間が経ったかはわかりませんが、手遅れになる前に”

手遅れ?

“私たちインテリジェンス系の道具は意識を持っていますが、長期間思考を止めると意識を失い、普通の道具になってしまうのです。

私もさきほど衝撃を受けるまで長く寝ており、マスターと出会わなければそのまま箱になっていたと思われます”

なるほど。

それなら急いで探さないとな。

俺は周囲にいる者たちに声をかけ、箱探しを始めた。

十五個の箱。

一つは目の前にあるから、残り十四個。

この森から全てを探すのは難しいだろうが、箱のためにもできるだけ多くみつけてやりたい。

そう思っていたら、思ったより簡単に残り十四個の箱を発見できた。

クロの子供たちが怪しい場所を見つけ、俺が【万能農具】で掘りまくっただけだけどね。

箱たちは蓋をパカパカしながら再会を喜んでいるようだ。

うん、意識を失い、ただの箱になった箱はない。

よかった。

あとは……どうやってこの人が入りそうな大きな箱たちを持ち帰るかだな。

さすがにここまで関わって、放置して帰ったりはしない。

森の中は危ないしな。

よし、素直にドラゴンたちに頼もう。