軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

訓練

高高度の大空。

ドラゴン姿のグラルの背中に乗ったザブトンの子供たちは、真剣な顔をしていた。

そして、一匹が合図を送ると二匹一組で次々とグラルの背中から飛び出した。

その数、三十組。

飛び出したザブトンの子供たちは姿勢と足を上手く使い、落下方向をコントロールしている。

三十組が一つの生き物のようだ。

その生き物には目的があった。

大空を飛んでいる 鷲(わし) だ。

鷲の姿を確認したザブトンの子供たちは弾丸のように速度を上げ、鷲に向かって急降下した。

だが、ぶつかるわけじゃない。

鷲に近づいた組から互いを蹴って分かれて鷲の左右を通過していく。

なにをしているのかと思った瞬間、鷲の動きが変化した。

不自然な動きだ。

よくみれば、鷲にザブトンの子供たちの糸が 絡(から) みついている。

分かれたザブトンの子供たちのあいだに糸が張られていたようだ。

その糸に、鷲がひっかかった。

三十組全部が鷲に糸をひっかけられたわけではないが、それなりの数の糸がひっかけられ、鷲はふらふらと地上に着陸。

地上で待機していたほかのザブトンの子供たちと合流し、鷲を捕縛した。

鷲に糸をよけられた組は、地面に落ちる前に小さなパラシュートを編んで地上に降りている。

そのまま地面に落下とかじゃなくてよかった。

ザブトンの子供たちがなにをやっているかというと、空の敵を捕縛する訓練。

十メートルぐらいの高さの場所にはザブトンが糸を張っているのだけど、天使族やハーピー族、フェニックスの雛のアイギスや鷲が村で生活するようになってその糸の数は減らされている。

毎年、ひっかかって困る者が一定数いるからだ。

なので糸を減らしたのだが、これまではそれで困らなかった。

しかし、先日、俺が誘拐されかけた。

張ってある糸の高さ以上だったので糸の数の増減はあまり関係ないが、これではいかんとザブトンの子供たちが自主的に訓練を始め、俺へのお 披露目(ひろめ) となった。

ちなみに、俺はドラゴン姿のグラルの横を飛行するドラゴン姿のギラルの背中に乗って見学している。

俺を乗せたギラルと、ザブトンの子供たちを降ろしたグラルが地上に降りると、ザブトンの子供たちが綺麗な隊列を作って迎えてくれた。

よかったぞ、これで空も安全だな。

「いや、これだとグラルが攻撃したほうが早くないか?」

ギラル、そういうことは言わないように。

いや、俺もそう思ったけど。

ザブトンの子供たちのがんばりをだな……

ん?

ザブトンの子供たちが慌てるなとサインを送ってくる。

グラルが攻撃したほうが早いのはわかっていた?

だからこれは捕縛の訓練で、正式なやり方は違う?

そうなのか?

それじゃあ、その正式なやり方というのは……

山エルフたちが砲を作っていた。

使用禁止にしたガトリング砲ではなく……迫撃砲みたいな感じだな。

これも水圧で……違うな。

空気圧でなにかを飛ばす感じだ。

ペットボトルロケットみたいなものだろうか?

その迫撃砲に、弾頭と弾底を持ったザブトンの子供たちが乗り込む。

え?

まさか……

止めようと思った瞬間、上空に発射された。

一塊(ひとかたまり) となったザブトンの子供たち。

高高度に達したところで分裂。

さきほど見た落下が始められる。

なるほど。

危ないから禁止。

ええっ、じゃない!

弾になって飛んでいくなんて、危険だろう。

それに、これも砲で直接攻撃したほうが早いだろう。

弾になる必要なんてない。

弾になったら誘導できるから、命中率が違う?

そうかもしれないが……

いやいや、駄目駄目。

ザブトンの子供たちの努力は認めるが、上空対策は別の方法を考えよう。

そこ、飛べるように進化しようとか考えない。

無茶は駄目だぞー。

温泉地。

大きなガトリング砲を整備しているヨルがいた。

ドラゴンが装備するサイズだ。

どうがんばってもヨルが持つことはできない大きさだ。

魔法で操作するのだろうか?

違った。

人型のゴーレムに持たせるらしい。

両脇に抱えるように二門。

ゴーレムの背中には巨大な樽。

水タンクと魔石を仕込んだ動力だな。

ヨルはゴーレムの胸元に備えられた椅子に座り、射撃目標を定める。

……

撃たない。

構えるだけで満足なようだ。

いいことだ。

そのまま温泉地で管理していいから、子供たちには 触(さわ) らせないように。

あと、整備はいいが改造は駄目だぞ。

ああっと、今日の本題だ。

この迫撃砲を渡そう。

うん、永遠の忠誠とかいらないから。

好きに使っていいから、管理するように。

使い潰してもかまわない。

頼んだぞ。

温泉地の一部が武器庫のようになりつつあるが……ヨルが滅多にほかの者に触らせないから安心ではある。

せっかく温泉地に来たのだから、死霊騎士たちやライオンの親子とコミュニケーション。

まあ、一緒に温泉に入るだけだが。

ん?

死霊騎士、 桶(おけ) に酒の入ったコップなんか乗せて……まだ昼間だぞ。

もらうけどな。

うん、美味い。

温泉地から戻って、牧場エリアの見回り。

数頭のクロの子供たちが、山羊の群れを誘導していた。

そんな状態だから、山羊たちが俺にちょっかいをかけたりは……山羊たちは根性があるなぁ。

俺に向かってきた。

仕留めていいなら、クロの子供たちで制圧できるだろうけど、怪我させないように止めるには数が足りない。

群れの半数が俺に……くるりと方向転換をした。

どうしたんだろうと思うと、俺の横にクロイチのパートナーであるアリスがいた。

アリスは目立たないが、この村の古参の一頭だ。

そして、クロの群れの引き締め役でもある。

つまり、色々なところから怖がられている。

山羊たちからも。

……

こんなにお 淑(しと) やかで、かわいいのにな。

よしよし。

アリスの最近の主な仕事は、俺の子供たちの護衛。

なのでアリスの近くには俺の子供たちがいる。

ルプミリナ、オーロラを中心とした年少組だな。

ははは。

ルプミリナとオーロラが俺のところにやってきた。

よし、だっこだな。

うっ……重くなっている。

一度に二人は厳しい。

ところで、二人以外はなぜアリスの後ろに隠れるのかな?

お父さん、ちょっとショックだぞ。

少し離れた場所にいる子守り役のハイエルフ、鬼人族メイド、獣人族の女の子が子供たちにサインを送って、俺に甘えさせようとしているが……子供たちはアリスの後ろから出てこない。

子供たちとのコミュニケーションを頑張らないといけないと思うできごとだった。