作品タイトル不明
帰る人たちと残ってる人たち
ヴェルサとの別れを惜しみつつ、始祖さんが帰った。
そして、ヴェルサは少しションボリしたあと、 五村(ごのむら) に戻った。
執筆活動に 勤(いそ) しむのだろう。
……
うん、頑張れ。
甘味を差し入れで送ったりはするが、基本はノータッチ。
困ったことがあれば、ヨウコに伝えるように。
マーク、スイレンがお土産を背負って帰っていった。
ヘルゼはこのまま村に残るが、前々から何度も言っているように結婚に関しては当人の気持ち次第。
ヒカルが嫌がった場合は、協力できないと伝えている。
また、村に残るなら村の仕事をしてもらわなければ困るのだが……これに関しては問題なし。
ハクレンとラスティが妊娠中、その代理として頑張ってくれていたし、出産後もそれは変わっていない。
俺や村の住人に気に入られて結婚への協力をという下心はあるだろうが、わざわざそれを指摘したりしない。
それに、ヒカルのことを狙っていると公言しているわりには、ヒカルにはほとんど近づかないんだよな。
ハクレンに言わせれば、 相手(ヒカル) がある程度大人になるまでは普通に護衛をやっているだけだから、気にしなくていいとのこと。
……ドマイムのときのクォンもあんな感じだったのだろうか?
あ、ハクレンはそのときは家出中だったから知らないのね。
そのドマイム、クォン、それとセキレン、クォルンもお土産を背負って帰る。
また来てくれ。
ドライム、グラッファルーンは孫のラナノーンやククルカンをかわいがっている。
帰らないのかな?
あまり遅くなるとグッチが呼びに来るぞ。
ん?
ドライムが 抱(かか) えていたククルカンをグラッファルーンに預け、俺を外に誘導。
……大樹のダンジョン?
地下に見慣れない転移門があった。
いや、転移門自体には見慣れてはいる。
ルーの作った短距離転移門だ。
それがここに設置されているということは……
短距離転移門を通った先は、ドライムの巣だった。
ここまで準備して、開通の許可を俺に求められても断れない。
まあ、ドライムの巣なら断る気はない。
転移門の管理者は、そっちから出してもらえると助かる。
しかし、飛んで一時間の距離を、走って五分にしたかったのか?
グラッファルーンが引っ越しを言い出す手前だったと。
かまわないが、あまり孫にかまい過ぎると 娘(ラスティ) に嫌われるぞ。
ほどほどにな。
天使族も帰った。
残るのは予想通り、ラズマリアとレギンレイヴらしい。
らしいというのは、ラズマリアとレギンレイヴは帰る天使族たちの 引率(いんそつ) をやっているからだ。
帰る組の気持ちを 汲(く) んでの引率なので、途中までと聞いているが……なんだかんだで天使族の里まで引率するんじゃないかな。
とりあえず、天使族の偉い人がいなくなって、キアービットやスアルリウ、スアルコウの双子天使が嬉しそうだ。
お前たちには相手はないのか? 子供はまだか? と言葉にはしなかっただろうけど、プレッシャーだったんだろうな。
気配を消していたからか、最近は影も薄かった。
ちなみにだが、キアービットにオーロラが妙に 懐(なつ) いている。
この前、オーロラがキアービットみたいなお姫さまになるとティアに言って、変な顔をさせていた。
お姫さまと言えば、お姫さまなんだろうが……
いや、なんでもないぞキアービット。
だから翼で怒りをアピールしないでほしい。
うん、ティアとルィンシァのやりとりでだいたい覚えた。
おもったより翼での表現が多くてびっくりだ。
あと、マルビットが帰って少し落ち込んでいるクロヨンを 慰(なぐさ) めないとな。
ん?
クロヨンのパートナーのエリスが、それは私の役目だと 訴(うった) えてきた。
たしかにそうだな。
では、任せよう。
しかし、手はなにかを 撫(な) でるモードになっている。
……
近くにいたフェンリルの子供たちを撫でた。
よしよし。
そろそろ暑くなってくるけど、体調には気をつけるんだぞー。
獣人族の男の子三人組、ゴール、シール、ブロンは結構な頻度でこっちに戻ってきているように思える。
短距離転移門による道ができたからかな?
奥さんたちをどのタイミングで村に連れてくるか考えているようだ。
こっちに引っ越してくるんじゃなく、見せるだけなんだったらタイミングなんて計らなくてもいいと思うけどな。
ゴールたちは村に戻りたい気持ちがあるのか。
そういったことは、しっかりと奥さんと話し合うんだぞ。
勝手に決めても 揉(も) めるだけだからな。
それと、さっきダガになにか言われていたが……ああ、三人だけで森に入ろうとしたのか。
駄目だぞ。
森に入るときは、クロの子供たちかザブトンの子供たちを同行させないと。
俺だって叱られるぐらいだからな。
まあ、叱るのはダガがやったようだから、俺はうるさくは言わないでおく。
それで、三人で森に入ろうとした目的はなんなんだ?
うっかりじゃないんだろ?
……修行がしたい?
魔王国で危ない目にでもあったのか?
違う?
逆?
魔王国で平和だったから、鈍っているんじゃないかと思ったのか。
あー、正直、気持ちはよくわからないが、修行したいなら安全面を大事に。
結婚したわけだしな。
ダガやガルフが相手じゃ修行にならないのか?
容赦の無さがほしいと。
……
ハクレンにでも頼んでみるか?
産後、あまり動いていないから暴れたいとか言ってたし。
え?
修行はしたいけど、伝説になりたいわけじゃない。
ハクレンと修行すると伝説になるのか?
いや、別の人がいいならかまわないが……
それじゃあ、ギラルはどうだ?
実は前々から村のためにできることはないかと言われててな。
収穫の時期はまだ少し先だし、ゴールたちの修行の相手なら……逃げなくても。
ギラルだって、手加減ぐらいするぞ。
たぶん。
妖精女王が世界樹の枝に 跨(またが) りながら昼寝をしていた。
器用なものだ。
……
そういえば、妖精女王には安産を願えるのだった。
ハクレン、ラスティだけにかぎらず、村での無事の出産は妖精女王のおかげかもしれない。
直接、礼を言われたり祈られるのは嫌いらしいので、心の中で感謝を伝えておく。
……
妖精女王が起きてこっちを見ていた。
残念だが、おやつの時間にはまだ少し早い。
もう少し昼寝を続けて……巨大な黄金の蚕たちが、引き取ってくれと俺にアピールしている。
妖精女王が邪魔なのね。
仕方がない。
少し早いが、おやつの時間にするか。
俺は妖精女王を誘って、屋敷に向かった。
屋敷では、魔王とビーゼルが昼間なのに酒を片手に愚痴ってた。
短距離転移門関係での揉めごとがまだ続いているのね。
大変だな。