軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

春のいろいろ

春のパレード。

恒例なので、いまさら止めようとは言わない。

ザブトンや文官娘衆のみんなは、去年の秋からちょっとずつ準備しているしね。

村全体で楽しめる祭りとして、俺も前向きに協力する。

……

協力するけど…………えっと、ため池の中から登場するシーンって必要かな?

春とはいえ、まだ水は冷たいよ?

これ、パレード前の演出だよね?

過剰(かじょう) じゃない?

ん?

あちらを見てください?

……ため池で、ポンドタートルたちが綺麗な列を作って泳いでいるな。

パレードで一緒に行進することはできないので、せめて演出部分で参加しようと一生懸命練習していると。

俺がため池の中から登場するシーンをカットすると、ポンドタートルたちの出番もカットになると。

……

やるしかないようだ。

ただ、できれば魔法かなにかで水温に関して手加減をしてもらえると嬉しいのだが?

全体を温めろとか言わないから、俺が潜る場所あたりだけでも。

ポンドタートルに迷惑をかけない感じで……

よろしくお願いします。

萎(しぼ) んでいるヴェルサが元気になった。

俺は色々と悩んだが、簡単な方法があった。

大樹の村では趣味禁止だが、別の場所ならOK。

そういうことで、ヴェルサは 五村(ごのむら) に通って、趣味の活動をしている。

一応、俺としてはヴェルサの趣味が住人に悪影響を与えるのではないかと心配したのだが、それに対して大丈夫だと言ってくれたのは文官娘衆たち。

文官娘衆たち 曰(いわ) く、魔王国を舐めるなと。

ヴェルサの趣味である同性同士が絡む物語は、“ヴェルサ”という名前で一部に深く浸透しているらしい。

ヴェルサと同じ名前なのは、偶然ではないだろう。

その“ヴェルサ”は長い年月で多数の派閥を産み、そして研磨されている。

いまさら古典的な本が出たところで、 小動(こゆる) ぎもしないと。

その説明を聞いても俺は安心できなかったが、深く関わるのは危険だと思ったので任せた。

ただ、俺からは一つだけ厳命。

「読み物のほうの“ヴェルサ”は、人目を 憚(はばか) るように」

これに対し、ヴェルサと文官娘衆たちは声を揃えて返した。

「人目にさらすものではありません!」

……

じゃあ、どうしてヴェルサの屋敷で俺たちは……家に来た人に見せるのはセーフなんだ。

そうか。

ルールがよくわからないや。

なんにせよ、ヴェルサのことは理解できる者に任せよう。

牧場エリアで、牛の群れと山羊の群れが対峙していた。

数は圧倒的に山羊のほうが多い。

そして、イースリーを泥池に追い込んだ自信もあったのだろう。

山羊の群れの両端が前進し、鶴翼の陣で牛の群れを包み込もうとした。

それに対し、数の少ない牛の群れは……

個々に山羊の群れに突っ込んだ。

陣形など 小賢(こざか) しいと言わんばかりに、山羊の群れを蹴散らしている。

勝負ありだな。

うんうん、山羊たちよ。

こんなときだけ俺に助けを求めるのはどうなのかな?

俺を盾にしないように。

あと、勝手に世界樹の葉を食べに行こうとしない。

世界樹の 蚕(かいこ) に縛られるぞ。

大体、牛たちは手加減しているから骨折とかじゃないだろう。

我慢するように。

どうしても我慢できないときは、ホーリースライムにお願いして治してもらえ。

ルー?

ルーはちょっと外出中だ。

ルーはビーゼルとともに、短距離転移門の設置に行っている。

短距離転移門で繋いだ道を作るためだ。

場所の確保はできているので、半日もかからずに戻ってくる予定になっている。

ただこの短距離転移門で繋ぐ道、ちょっと問題が発生している。

短距離転移門で繋いでいる村や街は、これまでの商隊の休憩地としての役割があった。

短距離転移門を設置することで、その役割から解放されると同時に、その役割で得ていた利益を失うことになる。

それを心配して各地で強制的に一泊することを予定しているのだが、この一泊が問題となった。

強制的に一泊させるのだから、最上級とは言わないまでもそれなりの宿泊施設が必要になる。

宿を一軒、二軒、増やす程度ならなんとかなっても、十軒、二十軒はどうがんばっても無理。

資材、人手不足。

資材は金でなんとかなっても、宿泊施設を管理できる人材なんて簡単に育たない。

いまある宿泊施設で働いている人を新しい宿に割り振っても、限界がある。

特に村は、これまでまともな宿泊施設なんてなかった。

村の中で野宿の許可を出す程度。

そんな村にまともな宿を作るのは厳しい。

つまり、宿泊施設がどうがんばっても足りないという問題。

魔王も馬鹿ではない。

そういった問題が出ることは予想していたので、ダルフォン商会やゴロウン商会に宿の手配をするように根回ししていた。

根回ししていたのだが……

短距離転移門で繋ぐ村や街から、「新しい宿泊施設を作るぐらいなら、強制の一泊を止めて」の声が強く出た。

大勢の宿泊客によって生活が大きく変化することを嫌ったようだ。

さらには、強制の一泊は無いほうが便利ということから、各地の商工会も賛同を表明。

魔王としては、通過点になるだけの村や街の行く末を心配しての一泊だったのだが、当事者たちから不要と言われれば引き下がるしかない。

強制の一泊は中止となった。

なので魔王は村で猫と 戯(たわむ) れながら、計画の修正の疲れを 癒(いや) している。

通過するだけなら、転移門の設置位置も変更したほうが便利だし、そのあとで出てくる問題も想定しなければいけない。

魔王は魔王で大変なんだなぁと感心しつつ、俺は文官娘衆たちに連行された。

会議だそうだ。

会議の休憩中、餅が入った 善哉(ぜんざい) を食べる。

この餅、冬のあいだで消費しきれなかったんだよな。

保存食として優秀だから無理に消費する必要はないのだけど、今年の冬も餅をつくだろうから食べられるときに食べておく。

五村のクロトユキ・ゼンザイはどうしよう。

当初計画では冬のあいだだけの出店予定だったのだけど、冬以外にもやってほしいという希望がある。

しかし、季節的に善哉を出すのも違う気がする。

俺が一時期やっていたラーメン屋台にシフトするべきか?

いや、あれはあれで人気があったというか、人気がありすぎて困った。

それに、手間がかかりすぎる。

善哉は作っておいた物を渡すだけという手軽さもよかったのだ。

となると……

うーん、善哉やラーメン以外の屋台で思いつくのは“そば”“焼き芋”“たい焼き”“タコ焼き”“クレープ”“メロンパン”“アイスクリーム”“サンドイッチ”“わらびもち”“かき氷”ぐらいかな?

季節を考えると……なんだろ?

こういったものこそ、会議の場で相談だな。

そう結論が出たところで俺は善哉を食べ終え……まだ食べている人がいるな。

ああ、急がなくていいから。

ゆっくり食べて。