軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

攻略開始

朝。

小屋の隅で、ルーとティアが正座しながら両手で顔を隠していた。

恥ずかしいのだろう。

子供たちを忘れ、一晩中、冒険者たちを追いかけまわしたことが。

「うう、一人逃がした……」

「全員捕まえたと思ったのですが……」

違った。

一人、捕まえきれなかったことを恥じているようだ。

その一人は、 五村(ごのむら) の警備隊に警告を発し、仲間の救援要請をしたあと、酒場に駆けこんで未婚の女性を口説こうとしているところをヨウコが指揮する警備隊に捕獲され、ビーゼルによってさきほど運ばれてきた。

ルーとティアによって捕まえられた残り十三人の冒険者たちが、彼と抱き合って歓迎している。

仲のいい冒険者チームって、いいものだ。

この冒険者たちは魔王が用意した短距離転移門の発見予定の、“ミアガルドの斧”を名乗る冒険者チーム。

ゴールたちの王都での知り合いの冒険者だそうだ。

だからか、十三人……いや、十四人はゴールたちのそばから離れない。

知り合いのほうが安心するのはわかるが、大人が子供の服を握るのはどうなのだろう。

とりあえず、朝食にしよう。

朝食後。

待ち合わせのメンバーは揃ったので、海岸のダンジョン攻略に関して話し合う。

海の種族は、二人の人魚が入り口まで案内してくれることになった。

ダンジョンの中には入らないようだ。

残りの海の種族は、小屋の警備と……開店の準備ね。

頑張って。

冒険者たちもダンジョンには入らない。

ここで待機……ではなく、森に置いてきた荷物の回収がしたいらしい。

それはかまわないが、ゴールたちをそれに付き合わせるのは……

ゴールたちが自主的に冒険者たちに協力すると言ってるので、受け入れる。

仕方がない。

鬼人族メイド二人、ラミア族の五人、巨人族の三人もダンジョンに入らず、小屋で待機。

鬼人族メイドは小屋で全員分の食事を作り、ラミア族がその食事をダンジョン内に輸送する役目を引き受けてくれた。

巨人族は中がどうなっているかわからないので、必要に応じて呼ばれることに。

そういうことで、海岸のダンジョンに入るのは以下のとおり。

俺、ルー、ティア、ガルフ、ダガ、リザードマン十人、リアとハイエルフ五人、山エルフ五人、レギンレイヴ、始祖さん。

それと、ウルザ、アルフレート、ティゼル。

あと、クロの子供たち三十頭とザブトンの子供たち百匹ぐらい。

……

出発前は大丈夫だと思ったが、いざ挑戦となると戦力として少し不安だ。

村からもう少し連れてくるべきだろうか。

ルーとティアが大丈夫と言ってくれたので、そのままとなった。

でも、危なくなったら、即撤退。

忘れないようにしよう。

海岸のダンジョンは川の上流にある洞窟の中にあるとのことだったが、川がそのまま洞窟に吸い込まれているので、川に 沿(そ) って移動を続ける。

洞窟の入り口付近は 灯(あか) りが必要だったが、奥に進むと壁が発光しはじめ、灯りが不要になった。

「ここね」

不意に人工物が立ちふさがった。

神殿風の壁に巨大な鉄の扉。

その左右に 強面(こわもて) のガーゴイルの像が置かれている。

「うーん。

たしかにこのガーゴイルには、私の癖がある……でも、思い出せない」

始祖さんが悩んでいる横で、ルーがガーゴイルの像が乗っている土台に書かれたサインを俺にアピールする。

「ルマニ=ブラン=トランシルヴァー?」

始祖さんの名前じゃないようだが?

いっぱいある名前の一つ?

へー。

やはり、このダンジョンは始祖さんが作った……

いや、作った誰かに防犯用にガーゴイルの像の設置を頼まれただけかな?

どちらにせよ、始祖さんが関わっているのは確実のようだ。

始祖さんがダンジョンのことを思い出したら、あっさり攻略できそうなのは残念だが……

しかし、未踏破ってどこで判断したのだろう?

「ガーゴイルの像が壊されていないでしょ?

これ、たぶんだけど……誰かが扉に触れると動き出すはずなのよ」

ルーがそう言って、扉に触れた。

強面のガーゴイルの像が動き出す。

「警告!

何人たりとも侵入を許さず!

門から手を放せ!」

ルーが手を放すと、ガーゴイルの像は元に戻った。

「あのガーゴイルの像が壊されていないから、未踏破ってことか」

「そうなのだけど……変ね」

「変?」

「あれだと、誰も入れないわ。

普通は合言葉とか、秘密のスイッチとかあるのだけど……」

たしかにそうだな。

確認のため、始祖さんに扉に触ってもらう。

ガーゴイルの像は動いた。

始祖さんでも駄目か。

「この扉を開くには、あのガーゴイルの像を破壊してから、調べないと無理そうね」

そうか。

俺は始祖さんに、ガーゴイルの像を破壊してもいいかの確認をする。

「覚えていないからかまわないよ。

出来もそれほどじゃないしね」

過去の未熟な作品を見ていてこそばゆいので、早く破壊してほしいそうだ。

もったいないと思うが、安全第一。

俺は【万能農具】でガーゴイルの像を壊した。

……

あれ?

みんな、どうして俺を見ているのかな?

「えーっと、動く前の状態だと結界が邪魔で破壊は不可能なのだけど……気にしないで。

扉を調べるわ」

よろしく。

ルーが扉を調べているあいだ、俺はここまで案内してくれた海の種族に質問する。

「その……扉の横を川が通っているが、そのまま川に入って上流に向かえば扉の向こうに行けるんじゃないか?」

「あー、それなのですが、駄目なんですよ」

こちらにも結界があって、これ以上は川の中を進めないらしい。

海の種族がそれを証明するように、石を上流に向けて投げてくれた。

その石は、途中で壁にぶつかったように下に落ちる。

あれが結界か。

「川が流れていますから、向こうからこちらに来るぶんには問題ない結界だと思います」

なるほど、よくわかった。

ありがとう。

しかし、結界か……

【万能農具】で結界を壊しながら進むのも手かな?

そんなことを考えていると、ルーが扉を開けた。

【万能農具】で結界を壊すのは、最終手段だな。

案内してくれた海の種族に感謝を告げ、進むことにした。

扉をくぐった先も、さきほどと変わらない洞窟の風景。

川に並行したゆるやかな洞窟の道が続く。

しばらくして、滝の音が聞こえてきた。

そして視界に入ってくるのは、大きな池と滝。

……

あれ?

行き止まり?

そんなわけがない。

どこかに扉が……

滝の裏に扉があった。

安易な隠し場所だ。

その扉の周囲には……落書きが多いな。

“開けるな、危険!”

“近づくな!”

“絶望してもこの扉を開いてはいけない!”

なにやら鬼気迫るものを感じる。

この先は危ないのだろうか?

「脅し文句の定番よ」

ルーが気にせず、扉に手をかけた。

簡単に開く。

その先で俺たちを出迎えたのは、それなりに広い部屋に置かれた大きな悪魔の像。

「村長、警戒を。

さっきのガーゴイルとは格が違う」

始祖さんが俺に注意を 促(うなが) す。

俺にはどう格が違うのかはわからないが、その大きな悪魔の像は目を光らせて俺たちにこう告げた。

「これより先、試練の間。

三人一組で移動すべし」

そして光の階段が現れた。

おまけ

ルーとティアによって捕まえられた残り十三人の冒険者たちが、彼を歓迎している。

リーダーらしき男が、連れてこられた男を抱きしめた。

「なあ、“盾”役が一番逃げ足速いって、どう思う?」

「えーっと……」

さらに何人かが彼を囲む。

「女性を口説いていたって?

余裕だな」

「俺たちがここでどれだけ怖い思いをしたか、知っているか?」

「酒飲んでたってことは、救援チームに参加する気はなかったのかな?」

「うるせぇ!

お前らだって逃げ切ったら、同じことをしていただろうが!

それよりもわかるか?

あとちょっとで口説けそうなところで、警備隊に取り押さえられた俺の気持ちが?

偉そうな人が来たと思ったら、わけのわからないうちに森に逆戻りだ。

わかるか?

俺の気持ちが!」

「気持ちはわからんが……あとちょっとで口説けそうというのが嘘なのはわかる」

「うん、嘘だな」

……

仲のいい冒険者チームって、いいものだ。