軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

計画の修正

おでん。

大きな鍋で、 出汁(だし) と一緒に様々な具材を煮込んだ料理。

悪く言えば煮込むだけだが、それゆえに出汁や煮込む具で味が変化する。

奥の深い料理である。

だが、細かいことは横に置いておいて、冬場はおでんが美味しい。

俺が用意した具材は“ダイコン”“ジャガイモ”“ゆで卵”、魚肉をミンチにしてまとめた“ツクネ”、すじ肉っぽい部位を串に刺した“すじ肉モドキ”、チクワを再現しようとしたけど、穴がむずかしくて板状になった“チクワモドキ”……ちがうな、これはただの“カマボコ”だ。

それぐらいなのだが、鬼人族メイドたちが色々と試して、追加されている具材がある。

“ニンジン”“トマト”“シイタケ”“キャベツ”、それに“鶏肉”“イカ”“タコ”。

どれも美味しいが、“タコ”は食べない人もいるので、少な目……あれ?

鍋から“タコ”が消えている?

「村長。

いつの話をしているのです?

村の住人なら、タコは普通に食べますよ」

鬼人族メイドの一人がそう言いながら、俺の前の鍋に“タコ”を追加してくれた。

ありがとう。

そして、“タコ”を大量に食べたティアは自重するように。

誤魔化しても駄目だぞ。

密告者がいる。

ティアの横に座るレギンレイヴが、七本食べたと指で示していた。

おっと、ヨウコ。

その鶏肉はまだ煮えていないぞ。

ルー、火力を上げてくれないか。

賑やかな夕食だった。

食後のお茶を飲んでいたら、魔王がしょんぼりしながらやってきた。

魔王国の王都とシャシャートの街を短距離転移門で繋ぐ計画が危ないそうだ。

一応、魔王も魔王国で根回しはしていた。

四天王のビーゼル、グラッツは積極的賛成。

ランダンとホウは消極的ではあるが賛成だった。

転移門を設置する村や街での場所の確認や確保も順調に進んでいた。

ストップがかかったのは、王都の文官たちからだ。

もちろん、魔王は彼らにも根回しはしていた。

魔王は、いまさらどうしたのだとストップをかける文官たちから話を聞いた。

今回の計画、根本的な部分で問題があった。

転移門は双方向に移動が可能だ。

ルーが作った短距離転移門も同じ。

双方向で同時利用も可能だし、幅も三メートルぐらいある。

右側通行なり左側通行なりのルールを定めれば、問題なく移動が可能と考えられていた。

たしかに人の移動は問題ないだろう。

だが、移動するのは人だけではない。

馬車や荷馬車の移動も予想される。

いや、どちらかと言えば、これらがメインとなるだろう。

馬車や荷馬車は、短距離転移門ですれ違うのは無理。

文官たちが軍に協力を依頼して、木組みの枠とカーテンで仮想転移門を作り、馬車や荷馬車で実験したから間違いないそうだ。

たしかに大樹の村と 五村(ごのむら) を繋いでいる転移門も、荷馬車が通行することはあるがすれ違うのは無理だろう。

荷馬車を移動させるときは、先に人を行かせて安全を確認してからにしている。

これを馬車、荷馬車が来るたびにやっていると、渋滞が発生すると言うのが文官たちの主張。

交通の便がよくなるのだから、多少の渋滞なら仕方がないと魔王は抵抗したが、スムーズな移動ができなければ意味があまりないと文官たちに説得されたそうだ。

一応、文官たちも駄目出しだけでなく、解決案を用意していた。

それが時間で移動する方向を制限すること。

単純に、朝から昼はシャシャートの街から王都方向に。

昼から夜は王都からシャシャートの街方向に移動を許可するというもの。

悪くない解決案だと思うが、反対勢力があった。

商人たちだ。

正確には、ダルフォン商会。

まだダルフォン商会にしか話をしていないから。

ダルフォン商会としては、短距離転移門の構想には大賛成。

しかし、移動時間を制限されるのには強い不満があると。

できれば時間を問わず、自由に行き来したいとの要望が出た。

その要望が書かれた書類に、どうしてティゼルのサインがあるのだろう?

魔王が俺のところに来る前に、ティゼルと何か相談していたのは知っているが。

ちなみにだが、一時間ごとに移動方向を変える案は駄目だった。

理由は、時計が一般的じゃないから。

また、数少ないが現存する時計も、毎朝、日の出に合わせて時間をセットするのがスタンダードらしく、正確性に問題があった。

転移門の両側に、同じ時間を刻む時計を用意できないと厳しいそうだ。

それで、魔王が考えた解決策というのがまたシンプルな物だった。

進行方向を固定し、二か所を二組の転移門で繋ぐ方法。

たしかにこれなら馬車や荷馬車のすれ違い問題や渋滞は起きにくいだろう。

問題は、必要となる短距離転移門の数が倍になるということ。

魔王はルーに、短距離転移門を増やすことが可能かどうかの確認はしていた。

「材料さえあればできる」

というのがルーの返事。

かなり貴重な材料らしいが、魔王国の総力で集めると魔王は言ったので短距離転移門の数を増やすのは大丈夫となった。

短距離転移門の追加製造費として、かなりの額をルーに払うことになるだろうけど。

しかし、それなら問題は解決したのではないかと思うのだが……

どうして魔王はしょんぼりして俺の前に?

設置する短距離転移門が増えるので、必要予算が増えたそうだ。

つまり、出資額を増やしてほしいということだな?

かまわないが……

ヨウコがニコニコとした顔で俺の後ろにいる。

「道中の村や街に、新しく宿や食堂を作りたいのだが」

俺と魔王の話は終わり、ヨウコと魔王の話が始まった。

ヨウコ、あまりやりすぎないように。

道中の村や街を支配下に置く必要はないからな。

以前言ってた紙の生産を、道中の村や街でもさせたい?

かまわないが、既存の紙業者が困らないか?

この辺りで植物から紙を作っているのは五村だけだから大丈夫?

残りは羊皮紙?

植物紙の生産量と価格によって、羊皮紙は使われなくなった歴史があるんだけどなぁ。

まあ、紙作りを機械化しなければ大丈夫か。