作品タイトル不明
天使族の飲み会
久しぶりにやってきた始祖さんが、レギンレイヴをみて腰を落とし両手を前にする構えをとった。
柔道家……いや、レスリングの選手みたいだ。
対するレギンレイヴは始祖さんに右肩を向ける半身の構え。
剣を持っていないけど、フェンシングの構えみたいな感じかな?
なんにせよ、喧嘩は困るなぁと見ていたのだけど、二人は自然に構えを解いて硬い握手をしていた。
なにを分かり合ったのかな?
あと、二人は知り合いだったの?
あ、やっぱり知り合い。
へー、何度も殺し合いを。
物騒な。
ここでは止めてくれよ。
大丈夫?
もう絶対に敵対しない?
それならいいけど。
ちなみに、レギンレイヴはグッチやヨウコとあったときも同じことをしていた。
長生きをしているから、知り合いが多いようだ。
始祖さんは一人だけだった。
フーシュはまだ忙しいらしい。
帰るとき、村で採れた果物を渡してお土産にしてもらおう。
始祖さんはルプミリナたちを 愛(め) でたあと、ドースたちの宴会に参加した。
うん、宴会はまだ続いている。
武闘会で一時中断になったけど、終わったら再開した。
さすがにドライムやグラッファルーンはグッチに呼ばれて何度か巣に戻っているけど、ほかの者たちは大丈夫なのだろうか?
留守番がちゃんといるのね。
それなら安心。
まあ、夏の収穫で余っている食材があるから、その消費を手伝ってもらえると思えば問題なし。
代金、もらえるだろうし。
冬の準備が本格化するまでは、宴会を続けてもらってもかまわない。
ただ、宴会の世話をしてくれている住人たちには、特別になにかしらの報酬を渡さないとな。
ああ、褒賞メダルもちゃんと渡すから安心してほしい。
それとは別になにかしらの報酬をだな……
気にするな?
いやいや、なにか考えるから受け取って。
レギンレイヴに遅れてやってきたマルビットの一団は、すぐに村の生活に入った。
全員、真面目に働いている。
正直、驚いた。
マルビットなら、冬の準備と言いながらさっさとコタツを引っ張り出してそこに 篭(こも) ると思ったのに。
レギンレイヴがいるから?
マルビットのやること全部に不満を言ったり、反対してくるから苦手?
なるほど。
気持ちはわかるが、この村ではギスギスしてほしくはない。
とりあえず、場を 設(もう) けるから一度、ちゃんと話し合ったほうがいい。
これまで何度も話し合った?
そうかもしれないけど、ここは俺の顔を立てて……
天使族だけの飲み会の場を用意したら、レギンレイヴとマルビットが肩を組んで飲んでた。
……
あれ?
仲が悪いんじゃなかったの?
まあ、仲がいいのはいいことだけど……ルィンシァの眉間にシワが寄っている。
大丈夫か?
問題を起こすトラブルメーカー二人がタッグを組んだのを 嘆(なげ) いていると。
……
俺も頑張るから、ルィンシァも頑張ろう。
飲み会の場だけど、途中でクーデルとコローネがララーデルとトルマーネを連れてきて歓声を上げられていた。
飲み会前に見ているだろうけど、やっぱり嬉しいらしい。
あと、レギンレイヴに子供を近づけてもよくなったみたいだな。
レギンレイヴがララーデルとトルマーネを抱いて、感極まっている。
この村ではそれなりに生まれているけど、天使族全体では子供が少なくなっていたので、余計に嬉しいらしい。
子供を増やしたいなら、例の厳しい試練を撤廃するのがいいと思うぞ。
え?
もう撤廃になってる?
それは知らなかった。
結婚する者が増えたら、子供も増えるさ。
俺の子供たちにも同世代が増えて嬉しい。
おっと、料理が減ったな。
持ってこよう。
いいんだ。
俺は運ぶから、お前たちは飲み会を楽しんでくれ。
クーデル、コローネ。
飲み会に参加するなら、ララーデルとトルマーネを鬼人族メイドたちに預けてからだぞ。
鬼人族メイドの何人かが、はらはらしながらララーデルとトルマーネを抱っこしているレギンレイヴを見ている。
うん、ぎこちない。
鬼人族メイドたちがララーデルとトルマーネを取り上げに行くのも、時間の問題だろう。
まあ、慣れていけばいいさ。
俺は料理作りを手伝いつつ、天使族の飲み会の場に料理を運ぶ。
いつの間にか、ドワーフたちが乱入して酒を説明していた。
ドラゴン一家のほうに参加していると思ったが……ああ、感想は広く聞きたいのね。
気持ちはわかる。
しかし、これだけ宴会が続いても酒があるのはたいしたものだ。
ドワーフたちの日頃の頑張りの成果だな。
まだまだ?
一年続けても酒が切れないほど溜め込みたい?
大きな 志(こころざし) だが、宴会が一年続くのはどうなんだろうなぁ。
古の時代では、神の末裔が毎日宴会をしていた?
本当か?
ドワーフではなく、レギンレイヴが本当だと答えた。
しかし、神の末裔が常に宴会をしていたわけではないらしい。
なんでも、記録に残すために宴会を何日続けられるかチャレンジしたのが、そう伝わるきっかけらしい。
記録に残すのはいいことかもしれないが、宴会を何日続けられるかで残してどうするんだ?
当時は、そういった記録を残すことが流行していたのね。
へー。
それで、何日続いたんだ?
百と三日。
……
すごいとは思うが、ドラゴンたちなら余裕でこなしそうだな。
ああ、料理や酒を提供し続けるのが大変なのね。
あと、宴会芸。
宴会の規定で、新しい芸を一時間ごとにやらないといけないと。
確かにそれは大変だ。
って、宴会の規定ってなんだ?
ああ、記録に残すためには宴会とはどんなものか定めなければいけなかったのか。
参加人数は二十人以上で、意識がある者が常に会場に五人以上いないといけない。
トイレ退席は認めるけど、睡眠は会場で。
料理、酒は一定量を消費しなければいけない。
それにさっきの、新しい芸を一時間ごとにか。
……
なんだろう、楽しそうな宴会に思えない。
当時のその神の末裔とやらは、どんな気持ちで百と三日も頑張ったのかな。
想像できないや。
まあ、この場の飲み会は百と三日も続けないだろう。
親睦(しんぼく) を深めてほしい。
翌日、天使族の飲み会は終わっていたが、マルビットがコタツに篭っていた。
冬の準備だそうだ。
……
俺は笑いながら、コタツを取り上げた。
ええい、抵抗するんじゃない。