作品タイトル不明
オークションの展示会
五村(ごのむら) で行われるオークションは、 麓(ふもと) に会場が設営された。
普段は野球グラウンドになっている場所だな。
いまは整地され、多くのテントが立っている。
このテントの中では、オークションに出品される品が展示されている。
オークションには大きく分けて二種類のスタイルがあり、一つが 競(せ) り。
価格を言い合って、最終的に高い価格をつけた者が落札者となるスタイル。
もう一つが入札。
自分が出せる値段と名前を札に書いて品の前に置き、時間がきたら出品者が札から販売者を選んで売るスタイル。
今回の五村で行われるオークションは、両方行われている。
なので、展示品の前に箱があるのは入札スタイル。
箱がなく、番号の書かれた札がある品は競りスタイル。
番号はオークションに出てくる順番だ。
俺は基本、見物だけの予定なので、どちらでもかまわないが……
箱がある品が多いな?
入札スタイルが主流なのかな?
違った。
オークションは本来なら数日間かけて開催されるが、五村でのオークションは今日だけなので時間がないのだそうだ。
なるほど。
ちなみに、五村のオークションが今日だけなのは、明日にはこのグラウンドで野球の試合が行われるからだそうだが……
ずらせなかったのだろうか?
あ、片方のチームが魔王のチームなのね。
しかも、半年以上前から決まっていたと。
確かにずらせないな。
納得。
俺はヨウコ、ガルフ、ダガの四人で展示物を見て回る。
なかなか盛況のようだが、出品者、警備の人などを考えると、それほどでもないらしい。
実際にオークションに参加するのは、多いのか少ないのかよくわからないが三十人ぐらいだそうだ。
あ、少ないのね。
やっぱり、場所を変えたからかな?
少ない人数でオークションは盛り上がるだろうか?
オークションで取引された額の数パーセントが、ゴロウン商会の取り分のはずだが……
その辺りを心配するのは失礼だな。
五村の村長としては、オークションが盛り上がると信じよう。
品を見ていると、ユーリのいる一団と遭遇した。
ユーリのほかは……貴族のお嬢さまたちのようだ。
オークションに参加する親に同行して来たらしい。
ユーリの知り合いの五人だそうだが、知らない顔ばかりだ。
ユーリが紹介してくれた。
ちょっと警戒してしまったが、全員、婚約者がいるとのことで俺は心の中で謝罪する。
こちらの紹介は、ヨウコが担当。
俺、ヨウコ、ダガには反応がイマイチだったが、ガルフのときに貴族のお嬢さまたちの反応がよかった。
武神ガルフの名は強いようだ。
おいおい、婚約者がいるのだろう?
抱きつくとか、ふしだらな真似はやめようね。
親御さんが泣くぞ。
ガルフは困った顔で照れている。
……
村に戻ったら、奥さんに伝えておこう。
貴族のお嬢さまたちは、前日から五村に滞在しているらしい。
五村のホテルは快適だと、褒めてくれた。
貴族のお嬢さまたちが泊まるのだから、たぶん一番いいホテルなのだろうけど、褒められるのは嬉しい。
食事もよかったと。
とくに麺屋ブリトアがよかったが、並ぶのが大変だったそうだ。
並んだのか……
ユーリを見る。
一応、貴族と揉めないように、貴族には配達サービスをするようにしているはずだが……
「ブリトアの名を 掲(かか) げる店で、我が侭はできません」
貴族のお嬢さまたちの意見。
ユーリは配達サービスのことは伝えたけど、使わなかったらしい。
ちゃんと、ほかの人と同じようにすると。
つまり、貴族のお嬢さまたちはカウンターに並んでラーメンを食べたのか。
……
お店、大丈夫だったかな?
あとで麺屋ブリトアに顔を出して、スタッフを 労(いた) わっておこう。
軽く雑談をして、ユーリのいる一団と別れた。
俺は貴族のお嬢さまたちの親がいるはずなので、その挨拶をと考えたのだが……
見つからない。
まだ会場には来てないのかな?
出品物の情報は、そのほとんどが事前に通達されているので展示には来ない人もいるらしい。
出品物を熱心に見て、ライバルを増やしたくないという事情もあるそうだ。
人の欲しがる物は、いい物に見える心理かな。
俺のところにも出品物の情報は届いているが、忙しくて見ている暇がなかった。
代わりに、ルーやティア、文官娘衆たちが熱心に見てたな。
参加しに来るかもしれない。
ともかく、貴族のお嬢さんたちの親に挨拶できないのは残念だが、見つからないのだから仕方がない。
まあ、前日にヨウコが挨拶をしているから問題はないだろう。
ならばと、俺は改めて展示品を見て回り……
魔王の一団と遭遇した。
魔王とビーゼル。
それとなぜか魔王の肩に乗っているティゼル。
「お父さま!」
久しぶりに会えて嬉しいが、どうして魔王と 紐(ひも) で繋がれているのだ?
「えへへ。
外出時は、絶対に 解(ほど) くなってお兄さまが」
迷子紐をするような年齢ではないと思うが?
アルフレートも、心配症だな。
それと魔王、うちの娘がすまない。
「いやいや、ティゼル嬢にはとても助けられている。
できれば今すぐにでも王宮で働いてもらいたいぐらいだ」
ははははは。
娘を褒められて嬉しくない親はいないが、そんなあからさまな 煽(おだ) てには乗らないぞ。
頬(ほほ) が 緩(ゆる) むが。
魔王たちは、明日の試合のための下調べだそうだが……一応、オークションにも参加するらしい。
いくつか狙いの品があるらしい。
お手柔らかにと言っておく。
まあ、俺は見物するだけのつもりだが。
「いやいや、村長ならあの品は絶対に欲しがるに違いない」
魔王がそう言うが……どの品のことだろう?
農業関係の品かな?
「まあ、お楽しみということで。
出品番号は七十番だ」
オークションは高い価格が予想される品を、後ろのほうで取り扱う。
今回は百番までなので、七十番は後半。
それなりに高いのかもしれない。
欲しくなったら、どうしよう。
ちょっと覚悟しておこう。
オークション開始まで、魔王の一団と一緒に見て回る。
俺が見てたのは、展示されている出品物ではなく、ティゼルだったけど。
「ティゼルはかわいいなー」
「えへへー」