軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

財布袋と待ち時間

大樹の村にあるダンジョンの奥に設置された転移門を使って、 五村(ごのむら) のヨウコ屋敷に到着する。

五村の転移門の近くにフタが 控(ひか) えている部屋があるので、そこに行って……あ、出迎えてくれた。

「すまない、何か作業をしていたか?」

「いえ、転移門の管理が本業ですから。

本日は……オークションの日でしたね。

参加されるのですか?」

「招待されたからな」

「断っても問題はなかったと思いますよ」

「そういうわけにもいかないさ」

「承知しました」

フタが記録用紙に記録していく。

「同行者は、いつも通りガルフとダガの二人だ」

俺の後ろに控えていたガルフとダガがフタに一礼する。

「そちらも承知しました。

護衛、頑張ってください」

個人的には、護衛は必要ないと思うのだが……そうもいかないらしい。

この辺りは諦めている。

転移門のある部屋の出入り口付近に置かれた箱から財布袋を取り、中銅貨、大銅貨、銀貨、金貨を適当に詰める。

五村での買い物用だ。

基本、俺が五村で買い物をした場合、支払いは後日にまとめて請求される。

ツケ払いというやつだ。

その場で取引するほうが楽だと思ったが、その場その場で支払いをすると現金が手元からなくなるので困るそうだ。

なので、信用できる相手とのお金のやり取りは、まとめてのツケ払いが一般的だそうだ。

五村にある俺の店、クロトユキ、青銅茶屋、甘味堂コーリン、酒肉ニーズも一部のお客はツケ払いをしている。

例外は、食券制度を導入した麺屋ブリトアぐらい。

ともかく、ツケ払いは一般的だと学んだ。

冷静に考えれば、ゴロウン商会ともそういった感じになっているしな。

だからツケ払いで買い物を色々としていたのだが……

問題が発生。

誰も請求に来ない。

どうして請求に来ないのか確認したら、五村で安心して商売ができるのは俺のお陰なので金を取れないだそうだ。

気持ちは嬉しいが、それでは商売として困るだろう。

どうしようかと思っていたら……俺以外の者、ルーやティア、ヨウコ、エルフ、山エルフ、ドワーフたちのツケ払いも請求に来ていないことが判明。

さすがにこれは駄目だろうと、ツケ払いを禁止。

代金をその場で支払うことを、大樹の村の住人に指示した。

幸いにして、現金には困っていない。

結果が、この財布袋と現金だ。

ガルフとダガも同じように財布袋を取って、硬貨を詰めていく。

大樹の村の住人たちからは、多少手間ではあるが受け入れられつつある。

また、五村側というかヨウコからは、市場に現金が流れるのでいいことだと強く 推奨(すいしょう) されている。

しかし、これにも問題が一つ。

ツケ払いを無理に現金払いにするため、相手に迷惑をかけないように「お釣りはいらないよ」をしなければいけない。

お釣りを惜しむ必要がないぐらいに現金があるが、小市民な俺はなかなか慣れない。

平然とやれるガルフやダガが羨ましい。

ちなみにだが、子供たちの場合には自由に詰めさせず、上限を決めている。

金銭感覚はちゃんと鍛えねば。

俺は門番に挨拶をして、ヨウコ屋敷から出る。

ヨウコは村議会場に行っているので、顔を見せに行く。

五村に来たのに顔を見せないと、 拗(す) ねるからな。

ヨウコから五村の情報をもらいつつ、オークションが始まる時間までどうしようかと相談する。

劇場で演劇を鑑賞するのはどうだろう?

最近の流行は、恋愛話?

うーん、いまいち。

イベント施設は……今日は三十人対三十人の集団戦か。

よく人が集まったな。

怪我は仕方がないにしても、死人はでないように注意してほしい。

見に行くのかって?

行かない。

俺が行くと、逆に気合が入ってしまうのだろ?

だから、コメントも出さないからな。

薬草院で、まったりするか。

薬草院は、患者でいっぱい?

ああ、噂を聞いて各地から集まっているのか。

邪魔はできないな。

手は足りているのか?

なんだったら手伝うが……あ、いや、混乱を助長する気はないんだ。

薬草院には近付かないようにしよう。

ルーに謝罪?

ルーが大事にしている薬草を治療のために使ったんだな。

人命優先だ。

仕方がない。

ルーに会ったら言っておくよ。

……

増毛剤?

えーっと……悩んでいる人は、悩んでいるからな。

病(やまい) を治療したということにしておこう。

うん、この話はこれまで。

時間は、クロトユキで潰すとしよう。

なぜ、ヨウコも同行するのかな?

いや、別にかまわないが。

クロトユキは、繁盛している。

だが、座る場所は空いていた。

個々に飲み物を注文して、くつろぐ。

「そう言えば村長。

オークションに何点か出品したと聞いたが?」

「ああ、目玉商品がほしいと言われたからな。

大丈夫だ。

品は俺じゃなく、ルーが選んだ」

「それなら一安心」

「失礼な。

と、言いたいが、色々とやらかしているからな」

反省はする。

「それが村長のよさでもある。

萎縮(いしゅく) する必要はないぞ。

今回のオークションも、そのよさの結果であろう」

「むう」

オークションは、本来ならシャシャートの街で行われる予定だった。

参加したいなとは思わなかったが、見学ぐらいはしたいなと思った俺は、それを口にしてしまった。

オークションを取り仕切る、ゴロウン商会の会頭であるマイケルさんの前で。

結果、シャシャートの街で行われる予定のオークションが、 急遽(きゅうきょ) 、五村での開催となった。

俺がオークションに協力的なのは、そういった理由があるからだ。

見学するだけでよかったのだが……

まあ、楽しみと言えば楽しみなので、深く考えないようにしよう。

マイケルさんへの礼は、気に入った出品物を高値で買うこと。

そう割り切る。

俺は時間まで、クロトユキでまったりと過ごした。

余談。

店を出るとき、俺は忘れずに銀貨をテーブルに置いて言った。

「お釣りはいらないよ」

「えっと……

ここの売り上げは、村長のものでは?」

店長代理であるキネスタのつっこみ。

「わかってる。

練習だ」

早く慣れないとな。