軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

王都での生活 リドリー編 問題提起

私の名はリドリー。

リドリー=ベイカーマカ。

ダルフォン商会の十七人の候補者の一人。

ダルフォン商会の代表が不在のあいだ、王都でなにかあった際には指揮を取る立場にあります。

と言っても、要はただの留守番。

候補者同士の喧嘩や対立には口を出さないし、王都でなにかあることのほうが珍しいです。

その珍しいことが起きました。

候補者の数人が、王都でリッチを隠していたようです。

さらには、王城からあった通達を無視し、要人に手を出してしまいました。

その要人と和解すべく招待状を送ったら、夜襲をかけられました。

候補者の一人、ルルサが防戦しましたが、あっという間にやられました。

遅れてやってきた援軍は戦いもせずに寝返りました。

ルルサを捕縛しています。

……

ダルフォン商会、終わった。

そう思っていたのですが、なんとかなりました。

日頃の行いでしょうか。

今度、教会にお布施を弾みましょう。

翌日。

私はガルガルド貴族学園の敷地内にいます。

揉めた要人、ティゼルさまの兄が主催する食事会らしく、そこに招待されたからです。

私としては遠慮したかったのですが、これまでダルフォン商会が 担(にな) ってきた魔王国における食糧生産とその価格に関しての話をランダンさまにするというのでは、参加しないわけにはいきません。

どうやら、私が一番乗りだったようです。

まあ、招待された時間よりも二時間も前なのですから当然です。

あまり早く到着するのはマナー違反なのですが、ティゼルさまに連絡し早く到着することを容認してもらいました。

食事会の前に、ダルフォン商会の不手際の謝罪をティゼルさまの兄にしなければいけませんので。

ティゼルさまの兄、アルフレートさま。

ティゼルさまの姉、ウルザさま。

二人はティゼルさまと違って、落ち着きがありそうでよかった。

私の謝罪を受け取ってくれたうえに、すごく私の心配をしてくれました。

ティゼルさまが私に迷惑をかけた?

いえいえ、そんなことはありませんよ。

ええ、大丈夫です。

本当ですよ。

どうしてそこまで疑うのですか?

お金を渡そうとしないでください。

迷惑料?

いえ、迷惑をかけられていませんから。

ふ、不要です。

少し揉めましたが、これで一安心。

あとは、ランダンさまとの話が控えるだけです。

正直、私はランダンさまにお目通りしたことがありません。

緊張します。

ランダンさまは凄腕の内政家で、混迷していた魔王国の政治と経済を立て直した人です。

冷徹な方だと聞いています。

四天王の位ですら、不要とわかれば切り捨てるぐらいに。

ダルフォン商会が不要と思われないように、 努(つと) めなければ。

食事会への参加者が次々やってきました。

まず魔王さま。

なぜに?

いや、野球を通じて庶民と交流する気さくな方なのは知っていますが、こういった場に呼ばれたからと来るような……いや、来てはいけない人なのでは?

でもって、魔王さまの奥さま。

他国との大事な席にも出ない謎の魔王さまの奥さまが、なぜここに?

さらに、クローム伯。

魔王国の外交を一人で担っていると言われる魔王国の 重鎮(じゅうちん) 中の重鎮。

そして、魔王国の最前線をその智謀で支えているグラッツ将軍。

魔王国の経済を一手に担う財務官、レグ大臣。

最後にランダンさま。

……

……………………

魔王さまとその奥様、四天王勢揃い?

あれ?

食事会と聞いていたのだけど、魔王国の運命を左右するような重要な席だったかしら?

困惑していたら、グラッツ将軍が発言。

「さすがに狭いな。

俺は外に出るよ」

え?

待って、すみません。

それ、私が言わなきゃ駄目だったやつですよね。

「わ、私が外に出ますから……」

「いや、見ての通り俺はミノタウロス族だからな。

体がでかすぎるのだ」

グラッツ将軍はそう言って外に行ってしまった。

すみません。

ほんとうにすみません。

今からでも私も外に……

ティゼルさまにそうお願いしようとしたら、魔王さまの前に連れて行かれました。

「彼女はリドリー。

ダルフォン商会の候補者の一人なんだって。

私の友達よ」

「そうか。

ティゼルの友人か。

ならば私の友人でもあるということだ。

よろしく頼むぞ」

ま、ま、ま、ま、ま、魔王さまからお言葉を……

しかも、友人?

魔王さまの友人?

「魔王のおじさん、リドリーは私の友人なんだから取っちゃ駄目だよ」

「ははは。

友人は何人いてもかまわないものだぞ。

なあ、リドリー」

ひ、ひ、ひぃぃっ。

気が付けば食事会が始まっていました。

私、挨拶とかちゃんとできたでしょうか?

えーっと……

目の前にあるのは、トンカツ定食。

シャシャートの街にある、ビッグルーフ・シャシャートで提供されている食事ですね。

食べたことはありませんが、噂には聞いています。

かなり美味しいそうです。

その味の決め手は、このドロリとしたトンカツソース。

味を盗もうと何十もの商人たちが挑戦したようですが、いまだに再現できないと言われています。

まさか、ここで食べられるとは思いませんでした。

しかし、ヒレやロースなどの部位が指定できるのですか。

ビッグルーフ・シャシャートでは、そういった指定ができるとは聞いたことがありません。

チーズ巻き?

アスパラ巻き?

一つずつお願いします。

メンチカツというのは……では、それも一つ。

ご飯が進みます。

食事は 箸(はし) が使われています。

箸は少し前から各所で流行りだした、ナイフとフォークに代わる道具です。

私も流行に遅れまいと練習していてよかった。

魔王さまたちも、自然と使っています。

少し驚きました。

箸に慣れると、その利便性に驚きます。

もちろん、箸に適した料理のときだけです。

箸では食べにくい料理もあります。

ただ、ナイフとフォークでは食べにくい料理もありますから、どちらが優れているとか言うのは無粋でしょう。

食事の途中で、外に出られたグラッツさまから串に刺さった肉と野菜の差し入れがありました。

野性味溢れる肉と野菜ですが、これらには 醤油(しょうゆ) が 塗(ぬ) られています。

ここで、ゴロウン商会が取り扱う醤油ですか。

ダルフォン商会も負けてられません。

なにか新しい調味料を探さなければ。

食後のお茶を飲みながら、私はさきほどまでの食事を思い出します。

美味しかった。

これまで、それなりに美食を求めていたと思っていましたが、思い上がりでした。

ビッグルーフ・シャシャートに一度、足を運ばねばなりません。

いえ、 五村(ごのむら) に行くついでですよ。

ついで。

さて、食事も終えたことですし、解散の流れ………………

待った!

危なかった!

ティゼルさまが、ランダンさまに話しかけようとしていた。

私はそれを止める。

「私になにか?」

ランダンさまがティゼルさまを止めた私をみている。

こ、怖い。

だから、ティゼルさまを止めていた手が緩んでしまった。

「ランダンのおじさん。

ダルフォン商会が担当している魔王国の食糧生産と価格調整なんだけど、問題があるんだって」

きゃぁぁぁぁぁぁぁっ!

も、問題とか言っちゃ駄目ぇぇぇ!

「聞き捨てならんな。

詳しく話してくれ」

ランダンさまが、興味を持ってしまった。

「私も聞くわ」

レグ大臣もです。

終わりました。

完全に終わりました。

さよなら、私の青春時代を捧げたダルフォン商会!