作品タイトル不明
王都での生活 ティゼル編 食事会
今日は学園にある私たちの家で、食事会。
ゲストは魔王のおじさん、魔王の奥さんである学園長、ビーゼルのおじさん、ランダンのおじさん、ホウ 姉(ねぇ) さん、グラッツのおじさん。
あと、ダルフォン商会のリドリーが飛び入りで参加。
ダルフォン商会が 担(にな) っている魔王国の食糧の生産、価格調整の話を私に任せるのは不安だそうだ。
私を信用しなさいと怒りたいけど、昨日あったばかりだから仕方がないと言えば仕方がない。
でもまあ、リドリーを私の友人として紹介できるのは嬉しい。
アル 兄(にぃ) もウル 姉(ねぇ) も、食事会に招待できる友人はまだいないだろうから。
ちょっと優越感。
家はあまり大きくないので、食事会はリビングと、野外の二箇所で行われることに。
ミノタウロス族で体の大きいグラッツのおじさんは、自主的に野外に移動。
野外ではバーベキューをするらしい。
グラッツのおじさんの部下たちが集まって、色々と準備をしている。
結構、大掛かりな感じのバーベキュー会場になりそうだ。
それはいいけど、魔王のおじさんとかがいる家を警備しなくていいのかしら?
「露骨に警備したら、ここに重要人物がいるとアピールすることになるだろ。
安心しろ。
要所は押さえてある」
グラッツのおじさんが串に肉や野菜を刺しながら、視線で要所の一部を教えてくれた。
なるほど。
隠れて警備しているんだ。
グラッツのおじさんの部下たちに混じって、バーベキューの準備をしている混代竜族のオージェス、ハイフリーグータ、キハトロイがいた。
「彼女たちから協力を申し出てくれた。
なんでも君たちと揉めたんだって?
その失点を回復したいらしい」
「揉めたというほどじゃないけど……ただ、バーベキューに参加したいだけなんじゃないの?」
「かもしれんが、戦力としては申し分ない。
あと、生徒の一部も参加……というか、ここでなにかやってると自然に集まる」
「みたいね」
バーベキュー会場の外周部には見たことがある顔の生徒がちらほら……あ、ゴー兄たちがまとめている。
「人手には困らん。
野外は任せておけ。
そろそろ中に入らないと、叱られるんじゃないか?」
そうだった。
リビングに戻ると、リドリーが助けてといった顔で私をみている。
まさか、 苛(いじ) められたの?
私がアサをみると、首を横に振って教えてくれる。
「ティゼルさま。
招待したゲストを放置するのは、あまりよろしくないかと」
あ、そっか。
「ごめんなさい」
私はリドリーに謝る。
リドリーのことはアル兄やウル姉には紹介したけど、まだ到着していなかった魔王のおじさんたちには紹介していなかった。
すでに顔見知りなら問題ないけど、そうでないなら招待した者が紹介しないと、この場にいないのと同じ扱いになる。
面倒臭いけど、それが貴族のルールだった。
食事会はまだ始まっていないけど、ゲストは揃っているので先に紹介。
「魔王のおじさん、彼女を紹介してもいいかしら?」
こういった場では、まず一番偉いゲストに紹介する。
ルールは間違えていないはずだけど、リドリーが小さく悲鳴をあげた。
なぜ?
リドリーを全員に紹介し終わったタイミングで、食事会が始まった。
テーブルには、アル兄、ウル姉、私、魔王のおじさん、学園長、ビーゼルのおじさん、ランダンのおじさん、ホウ姉さん、リドリー。
アサやアース、メットーラは給仕役。
あとで感謝を伝えなきゃ。
ほかに六人ほど、魔王のおじさんたちが連れてきた給仕がいるので、あまり広くない家が人でいっぱいだ。
まずは全員に飲み物が渡される。
最初は全員、 果実水(ジュース) 。
ホウ姉さんがあからさまにがっかりしているが、仕方がない。
同じ物を飲み食いするのがルールなのだから。
まあ、形式なので次からは希望者にお酒がでる。
メットーラがそのことをホウ姉さんに伝えたら、元気になった。
ホウ姉さん、だからって果実水を一気に飲まなくても……
ホストは私たちなのだけど、食事会の名目が私たちの入学祝いだからゲストから挨拶。
最初の挨拶は学園長が担当。
「入学式でも伝えましたが、改めて。
貴方たちの入学を歓迎します。
よく学び、励んでください」
続いて魔王のおじさん。
「暴れ過ぎないようにな」
さらに、ビーゼルのおじさん。
「困ったことがあれば、頼ってかまわないぞ。
君たちは私の孫も同然だ」
ランダンのおじさん。
「ビーゼル、それはずるいぞ。
ごほん。
ビーゼルを頼るぐらいなら、俺を頼ってくれ。
なにせ内政担当だからな。
多少の犯罪なら誤魔化せる」
ホウ姉さん。
「さすがに犯罪 隠蔽(いんぺい) は聞き逃せませんね。
駄目な大人に頼るぐらいなら、私にしなさい。
とくにお金の相談ならお姉さんに任せて大丈夫だからね」
「俺より年上なくせに……」
ランダンのおじさんが黙ったのは、テーブルの下でなにかあったからだろう。
女性の年齢に言及してはいけないと、お父さんも言ってた。
これはランダンのおじさんが悪いと判断する。
犯罪になるようなミスをするつもりはないしね。
最後はリドリー。
「えーっと……
まずはこの場へのご招待、ありがとうございます。
ダルフォン商会の一員として、このリドリー=ベイカーマカ。
アルフレートさま、ウルザさま、ティゼルさまのガルガルド貴族学園への入学をお 慶(よろこ) び申し上げます」
リドリーの挨拶を受け、アル兄が私たちを代表して返事。
「丁寧な挨拶、ありがとうございます。
まだまだ未熟な身なれば、みなさまにご迷惑をおかけすることもあるでしょうが、なにとぞご指導をよろしくお願いします。
ささやかですが、本日は僕たちの出身の村の料理をご用意しました。
楽しんでいただければ幸いです」
用意した文面がそのまま使えた。
丁寧になり過ぎないように、なんだかんだと悩んで作った文面だったから、無駄になったら悲しいところだった。
リドリーを呼んでおいてよかったと言える。
アサたちによって食事が運ばれてくる。
私たちは料理をどうするかで悩んだ。
コース料理にするか、それを外すか。
コンセプトとしては、コース料理にしたほうが正解だろう。
魔王国の流儀に従いますというアピールになるのだから。
だが、村での食事を知っている魔王のおじさんたちに遠慮は無用。
なので、コース料理はやめた。
「トンカツ定食でございます」
トンカツ、キャベツ、ご飯、お味噌汁、お漬物。
お父さんが喜ぶメニューだ。
「トンカツ、キャベツ、ご飯、お味噌汁、お漬物、全ておかわりをご用意しております。
遠慮なく、お申し付けください」
アサがそう言って、食事スタート。
本来なら、私たちが会話を振らないと駄目なのだけど……
ゲストは全員、黙々と食べてる。
リドリーも。
聞こえるのはおかわりの声だけ。
あと、お酒の注文。
ホウ姉さん、どうして私たちが持って来ているお酒の種類を知ってるのかな?
確かに私たちは飲まないし、こういった場で出すためだけど……
メットーラ、かまわないから出してあげて。
ただホウ姉さん、飲みすぎは駄目だからね。
とりあえず、食べよう。
話はそのあとでも大丈夫だと思うから。