軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

野外学習その2とトウ 46日目

俺は【万能農具】で大きなため池を新たに掘っている。

場所は村の西側。

川と村を繋ぐ水路に沿って、二キロぐらいの場所だ。

水路の南側にはエビの養殖池があるので、北側に作っている。

現状でも水は足りているのだが、万が一の渇水対策だ。

川の水量が変化したことはないから、大丈夫だとは思うけど用心しておくことは悪いことではないと思う。

この新しいため池のサイズは、二百メートル×二百メートル。

深さは、一番深いところで二十メートルぐらい。

今は独立したため池だが、将来的には最初に作ったため池に直接繋ぐ予定だ。

本当なら最初のため池を拡張したかったのだが、周囲に建物が増えすぎたので拡張が無理なのだ。

それにポンドタートルが住み着いている。

拡張工事で騒がしくするのも申し訳ない。

ため池と水路は十日ほどで完成したが、水はまだない。

ルーが実験に使いたいらしい。

連鎖式爆炎弾かと思ったら、連鎖式氷結弾のほうだった。

少し前の宴会で披露したときは、連鎖式氷結弾はピシッと着弾地点が凍るだけで爆音などが出ず、観客からは不評だったのを気にしているのだろうか?

「そういや、この連鎖式氷結弾も鉱山の採掘に使うのか?」

「ええ。

採掘中に水脈に当たって、現場を水没させることはよくあるそうなのよ」

確かに、そんな話を聞いたことがある。

あまりの水量で、採掘不能になった場所がいくつもあると。

「そこで、この連鎖式氷結弾!

流れ込んだ水を凍らせるの」

「凍らせてどうするんだ?」

「氷を砕いて、水脈以外の場所の採掘をまた始めるのよ。

これで採掘不能になった場所が復活するわ」

「おおっ、それはすごい」

「でしょ」

しかし……

「砕いていない場所の氷も、いずれは 融(と) けるんじゃないのか?」

そしたら、また水没してしまう気がするが……

「ふふふ。

私がそのことを考えていないとでも?」

「考えていたんだな」

「もちろんよ。

この連鎖式氷結弾で凍らせた氷は、常温では 融(と) けない!」

……

すっごく危険じゃないかな。

「もちろん、取り扱いは注意よ」

宴会で披露したときは、凍った場所が次の 的(まと) にされていたから気付かなかった。

「ただ、砕くことを考えると、もう少し柔らかくないといけないのよね。

その実験をここでやりたいの」

ルーはそう言って、連鎖式氷結弾をセット。

魔法で直径十メートルぐらいの巨大な水球を作って、その連鎖式氷結弾にぶつけた。

水球が炸裂しながら一気に凍っていく。

なにかの芸術作品みたいだ。

「これが本来の連鎖式氷結弾」

ルーが、その凍った水球に、新しく魔法で作った小さな水球をぶつける。

小さな水球はそのまま水として地面に落ちた。

「凍らないんだな」

「氷結の魔法だけでなく、固着化の魔法も連鎖に入れているからね。

でも、そのせいで外部からの影響に強すぎて、砕くのが大変なのよ」

「宴会のときはバンバン砕かれていなかったか?」

「あれは連鎖式爆炎弾の威力が強いからよ。

氷結の魔法や固着化の魔法も、霧散してしまうわよ」

なるほど。

「なんにせよ、連鎖式氷結弾を改良しないと採用されないのよ。

いまのままじゃ、採掘現場を沈めているのが水から氷に変わるだけだしね」

柔らかくし過ぎると、自然に氷が融けてしまう。

固着化の魔法を弱くすれば、周囲を凍らせ続けてしまう。

難題だそうだ。

確かにそうだな。

しかし……

「連鎖式氷結弾を改良するより、連鎖式氷結弾で凍らせた氷を融かす魔法を考えたほうが楽なんじゃないか?」

「……」

ルーは少し考えてから、なにやら呪文を唱えた。

ルーの手から、細い炎が一メートルぐらい伸びる。

その細い炎で、連鎖式氷結弾で凍った水球を切り刻んだ。

綺麗な賽の目切りの氷ができた。

どうやら、この場での実験は終わったようだ。

さて、水門を開通させようかと思ったら、今度はハクレンとグーロンデから野外学習の場所として、貸してほしいと言われた。

「かまわないが、危ないことはやめてくれよ」

「大丈夫だって」

ハクレンを信じないわけではないが、同行する。

新しいため池までは距離があるので、馬車で移動。

子供たちが喜んでいる。

馬車の周囲は、クロの子供たち。

そのクロの子供たちの背中に、拳大サイズのザブトンの子供たち。

護衛兼生徒だ。

野外学習のテーマは風。

ハクレンは魔法を使って、つむじ風を起こした。

直径十メートル、高さ百メートル以上のつむじ風は、つむじ風と呼んでいいのかな?

近くに行くと、吸い込まれそうになる。

そのつむじ風は生き物みたいに暴れ始めたけど、ハクレンが殴って消した。

つむじ風って殴って消えるんだ。

ちょっと感心。

そして、村でやられなくてよかった。

今のつむじ風の威力だと、建物とか吹き飛んだんじゃないかな。

村から離れたこの場所でよかった。

これで終わりかと思ったけど違った。

今のは風の魔法で無理矢理に作ったつむじ風。

次にするのが、地面を温めて作るつむじ風だそうだ。

上昇気流に関して、グーロンデが子供たちに説明している。

もちろん、地面を温めただけでつむじ風ができるわけではない。

温かい地面の上を、風が双方向に通過しなければいけない……だったかな?

俺もグーロンデの説明を聞くことにしよう。

子供たちは、魔法で小さなつむじ風を発生させていた。

「自然で発生する原理を知っていれば、属性外の魔法もなんとか使えるようになるのよ」

ハクレンが得意気に言う。

なるほど。

魔法が使えない俺には関係ない話だったようだ。

しょんぼり。

この野外学習がよかったのか、一部の拳大サイズのザブトンの子供たちに新たな行動が見られるようになった。

まず大きな葉を用意。

その葉を持ってつむじ風の魔法を使い、つむじ風に突入。

ザブトンの子供たちがつむじ風に舞い上げられながら……葉に乗る。

空中をサーフィンしているような感じだ。

なかなか楽しそうだが、つむじ風の魔法は広い場所で使うように。

室内とかじゃ駄目だぞ。

周囲に迷惑をかけないように。

ん?

もっと大きな葉がほしい?

世界樹の葉がベスト?

うーん、世界樹の葉は治療に使えるからな。

遊びに使うのはちょっと……

いや、確かにドワーフたちは世界樹の葉を絞った液で酒を造ろうとしているけど、あれは遊びじゃないぞ。

鬼人族メイドたちも、世界樹の葉を使った桜餅を作ったけど、あれも遊びじゃない。

まあ、その、なんだ、遊び心だ。

遊び心大事。

ザブトンの子供たちには、バナナの葉で勘弁してもらった。

バナナの実もどうぞ。

大樹の村と太陽城こと 四村(よんのむら) を移動している万能船が、ちょうど来ていたからな。

「大将……じゃなくて、村長」

万能船の船長をしているトウが、大きな荷物を持ってやってくる。

「四村で試作していた果物。

熟れたみたいだから持ってきたぜ」

「すまないな」

見たことないフルーツがたくさん。

【万能農具】に任せて作ったから、名前も知らない。

だから、どこを食べられるかも知らない。

「ベルとゴウが、食べ方を研究する前に村長にってさ。

まあ、研究するまでもなく大抵の物は割って中を食べるだけだろ」

「そうだろうけどな。

そのまま食べるのか、火を通すのか、凍らせるのかで味の変化を確かめるんだ」

「へー。

あ、ドワーフの旦那たちが、こいつとこいつを酒にするから量産しろと言ってたぜ」

「いきなり全部は無理だな。

育てやすいのから量産すると、ベルとゴウに伝えてくれ。

手が空いたら、俺が行って耕すから」

「了解しやした。

それと、村の西側に新しくできたため池、水が張れたら万能船を浮かべてもいいですか?」

「かまわないが……なにかあるのか?」

「空を飛んでも船は船ですから。

水にも浮かべてやらないと」

「なるほど。

古いため池よりも、新しいため池のほうが広いしな」

「そういうことです。

水深も大丈夫そうですし」

「当面は予備の水源としてしか使わないから、かまわないぞ。

ただ、森が近いから周辺警戒をしないと厳しいんじゃないかな」

俺が一緒にいれば、クロの子供たちも移動するから大丈夫だが……

「大丈夫ですよ。

その辺りの訓練も兼ねますから」

「訓練か。

そういや、トウからみて船員たちはどうだ?」

万能船の船員は、四村の悪魔族、夢魔族が中心だ。

やる気はあるが基本的な技術は我流なので、ちゃんとした船員、船長であるトウの目からはどうなのだろうか。

「問題ありません。

四村で閉じこもった生活をしていたからか、船内での共同生活にも適応してます。

連中となら、半年は船で生活できますよ」

「頼もしいことだ」

「船もいいっすからね」

トウはそう言って、ダンジョンに向かった。

たぶん、転移門を使って温泉地に行くのだろう。

ヨルに温泉地の転移門の管理を押し付けたことを、悪いとは思っているようで、なんだかんだと手土産を持って訪ねているらしい。

五村(ごのむら) の転移門を管理しているフタが、面白そうに俺に教えてくれた。

そういう仲なのだろうか。

そう言えば、シャシャートの街にいるミヨ。

仕事環境は劇的に改善されたはずなのだが、仕事に埋もれているらしい。

なにがあったのかと思ったら、なんでもイフルス代官の仕事を手伝っているそうだ。

まあ、シャシャートの街には色々と迷惑を掛けているだろうから、手伝うことを 止(や) めろとは言わない。

ほどほどにな。

ちなみにミヨは、シャシャートの街の会計を握る謎の幼女メイドとして、噂になっているそうだ。

ゴロウン商会のマイケルさんからそう聞かされたときは、どんな顔をしていいかわからなかった。