軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

顔合わせ

魔王の奥さんが村に来た翌日、俺は 五村(ごのむら) に来ていた。

獣人族の男の子たちの結婚相手と会うためだ。

当初は魔王の奥さんが来た日に会う予定だったのだけど、俺の我が侭で一日ずれた。

事前に伝えているので問題はなし。

獣人族の男の子たちの結婚相手の大半が魔王国の王都に住んでいるので、五村への移動はビーゼルが頑張った。

ありがとう。

あ、お茶でも飲んでて。

今日は貸切だから。

俺と獣人族の男の子たちの結婚相手の会う場所は、五村の甘味のお店、クロトユキ。

ヨウコ屋敷でもよかったのだけど、あそこは広い。

相手を不必要に 萎縮(いしゅく) させないためにも、クロトユキにした。

一応、自分の経営している店への招待も兼ねていたりする。

俺に同行したのは、俺の妻としてルーとティア。

大樹の村の獣人族代表として、セナ。

文官娘衆から二人と、護衛としてガルフとダガ、それとリザードマンが五人。

本来はこれだけで十分なのだが他に五村の村長代行であるヨウコ、五村に発酵食品の品質管理にきたフローラがいる。

見物……見学だそうだ。

あと、魔王とビーゼル。

ビーゼルは問題ない。

魔王はどうしているのかな?

獣人族の男の子たちは、貴重な戦力?

その妻となれば、挨拶に参加したいと。

なるほど。

貴重な戦力って、野球のことだよな?

挨拶の必要、あるか?

……うん、わかった。

そんなにいい顔で言い切られたら、俺は何も言えない。

あ、一つ言える。

目の前にあるパンケーキ、何枚目だ?

トッピングはイチゴジャムに限る?

感想を聞いているわけじゃないぞ。

まあ、魔王はいいや。

魔王国の王都で、三人が色々と世話になっているみたいだしな。

俺が気にすべきは魔王ではなく、クロトユキを貸切にしたのに、いつも通りにいる常連客四人。

いや、勝手にやらせてもらうから気にしないで、じゃなくて……

はい、いつもありがとうございます。

ですが本日は貸切で……

あ、駄目だ。

通じない。

いっそ出禁にしようかとも思ったけど、こちらの都合での貸切だ。

わかった。

向こうで大事な話をするので、大きな声では騒がないでくれ。

常連客は、クロトユキの店長代理であるキネスタに任せる。

極秘の話をするわけでもないし、それでいいだろう。

さて。

クロトユキの奥に、三つのテーブルが用意された。

ゴールのテーブル、シールのテーブル、ブロンのテーブルだ。

妻の数の都合で、シールのテーブルだけかなり大きい。

ゴールたち、妻たちがそれぞれの席に座り、俺を待っている。

まず、俺は全員を見渡せる場所で立って挨拶。

自己紹介をして、それぞれの結婚を祝う。

こういったことは苦手だが、頑張る。

俺のあと、セナが挨拶。

俺の挨拶よりもまとまっている。

あんな風に俺も言いたかった。

続いて、テーブルごとに挨拶。

本来なら、俺のいる場所にゴールたちや妻たちが挨拶に来るのだが、人数を考えて俺が移動する。

問題は最初にどこに行くかだが……

俺はブロンのテーブルに向かう。

ゴール、シール、すまない。

ややこしいのは後回しにしたい。

俺の代わりに、ゴールのテーブルにはルーが、シールのテーブルにはティアが向ってくれた。

ブロンの横にいるのは、ガルガルド貴族学園の事務のお姉さんこと、アレイシャさん。

種族は魔族。

年齢は……ブロンより十五年、早く生まれている。

第一印象は、事務系の仕事をするんだろうなぁという女性。

普段は髪を後ろで縛り、メガネを着用しているそうだが、今日は結婚の挨拶ということで髪はストレート、メガネも外している。

メガネはなくても大丈夫なのかなと思ったけど、書類仕事じゃなければ大丈夫だそうだ。

互いに挨拶し、ブロンのことをよろしくとお願いする。

色々と話を聞きたくはあるが、今回は顔見せがメインなので簡単に。

よし、次。

ゴールのテーブルに向かい、ルーと交代する。

ゴールの左にいるのはプギャル伯爵家の七女、エンデリ嬢。

ゴールの右にいるのはグリッチ伯爵家の五女、キリサーナ嬢。

二人とも魔族で、ゴールの二つ年上。

二人とも上品なドレスを着こなし、髪の毛がクルクルと上品に巻かれ、どこからどうみてもお嬢様。

キリサーナ嬢のほうが髪の毛のクルクル量が多いが、個性が被り過ぎじゃないかなと思ってしまう。

正直、姉妹と言われても納得してしまう。

聞けばエンデリ嬢とキリサーナ嬢は親戚だそうだ。

なるほど。

ともかく、ゴールと三人で仲良くやってほしいと挨拶。

ゴールも二人と仲良くするんだぞ。

俺の挨拶を終えると、俺は文官娘衆の二人を呼ぶ。

この二人は、エンデリ嬢とキリサーナ嬢の姉。

奇妙な偶然……ではないか。

同じ学園に通っていて、姉たちはフラウと共に村に。

妹たちは学園に行ったゴールと出会った。

それだけだ。

とりあえず、姉として祝福を……あれ?

エンデリ嬢とキリサーナ嬢が固まっている?

どうしたんだ?

久しぶりに会うので緊張しているのでしょうと、文官娘衆の二人が言うので納得。

エンデリ嬢とキリサーナ嬢も、ガクガクと 頷(うなず) いているしな。

この場は文官娘衆の二人に任せ、俺はシールのテーブルに向かった。

ティアと交代し、俺は挨拶する。

目の前にはシールと、九人の女性。

うん、ややこしい。

そして、えーっと……。

こういう使い方が正しいのかわからないが、九人全員が姉属性だ。

妹っぽい女性がいない。

これだけいれば一人ぐらいはと思うが、全員が姉っぽい。

まあ、だからなんだと思うが……

考えてみれば、ゴール、シール、ブロンの妻は全員が姉っぽい。

……

気にしないでおきたいが、一応は心の中で謝罪しておく。

すまなかった。

俺はシールの周囲にいる女性たちと挨拶を交わしていく。

三人目、コネギット嬢。

彼女は魔王国四天王の一人、ホウ=レグだ。

事前に教えてもらっている。

そして、昨日、ホウ本人と魔王、ビーゼル、グラッツ、ランダンで集まって話をした。

まず、なにをやっているんだと。

そしたら酒も入っていないのに二時間ぐらい、のろけられた。

まあ、ホウ本人は結婚に本気なようだ。

それはかまわない。

魔王、ビーゼル、グラッツ、ランダンも一応、認めている。

一応なのは結婚に条件がつけられたからだ。

結婚後も仕事を続けるという。

ホウも自身の立場を考え、条件を受け入れた。

基本、現魔王が就任中は続行。

妊娠、出産、育児による休暇は認めると。

俺が問題にしたいのは、とある疑念があることだ。

俺が勝手に 邪推(じゃすい) しているだけだが、確認しておきたい。

「シールを 嵌(は) めた?」

「いいえ。

ですが、恋愛の駆け引きはしたかもしれません」

そうか、駆け引きか。

うーん。

判断が難しい。

とりあえず、ホウとシールの双方から、個別に結婚する意志を確認したので俺も認めることになった。

まあ、俺の承認などなくても、勝手に結婚するだろうけど。

俺は九人全員と挨拶を交わし、シールをお願いする。

今日は、これで終わり。

顔見せと挨拶がメインだからな。

個別に細かい話は、また別の機会で。

このまま解散の手筈なのだが、俺は少し待ってもらう。

ああ、来た。

始祖さんと、それに連れられた獣人族の男女が六人。

少し年配だ。

そして、ガルフ以外の者は誰だという顔をする。

彼らは大樹の村の住人ではないからだ。

「ゴール、シール、ブロン。

彼らから、結婚を祝う言葉を受け取ってもらえるだろうか」

俺の質問で、獣人族の男の子三人は彼らが誰か察したようだ。

彼らはハウリン村の住人。

ゴール、シール、ブロンの両親。

今日の挨拶が一日遅れたのは、俺が彼らを呼ぶのに時間がかかったからだ。

始祖さんの全面協力があるので、移動は問題ない。

問題なのは心の面。

事情があったとはいえ、まだ小さな子供であった三人を移住させてしまった後悔。

結婚を祝う立場にないと主張する六人を、俺とガルフ、ガットの三人で説得して回った。

ハウリン村とワイバーン通信を始めたころから、三人の両親からは細かく手紙をもらっている。

三人のことを忘れたいわけでも、結婚を祝いたくないわけでもないので、説得はできた。

ゴール、シール、ブロンの三人にはサプライズだが、間接的に打診はしている。

その結果を俺だけで判断せず、村の住人大半と相談して六人をこの場に呼ぶことになった。

……

うん、祝いの言葉は短いけど、呼んでよかった。