軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

畑の拡張と背の低い天使族

俺は村の畑の東側に、畑を拡張していく。

五村(ごのむら) でオープンさせた店で使う原材料用だ。

少し大変だけど、今だけだ。

大樹の村以外から原材料を確保できるように、マイケルさんのゴロウン商会を通じて働きかけている。

他の場所からも原材料を仕入れられるようにしなければ、俺に何かあった時に困るからな。

一人が倒れたら崩壊する経営などもってのほかだ。

……

まあ、どうしても外せない人材というのはいるが、その人材が風邪で倒れたぐらいでは動揺しない経営にしたい。

俺が畑を耕していると、ウルザを先頭にした子供たちがダンジョンに向かっていくのが見えた。

ウルザ、アルフレート、ティゼル、ナート、リリウス、リグル、ラテ、トライン、それにヒイチロウとグラルだな。

子供たちの少し後ろにハクレンと、三人の鬼人族メイドが同行している。

あと、鬼人族メイドの後ろにリザードマンが二十人ほどいるが、あれは護衛だろうか?

いや、リザードマンの子供たちだな。

歩き方でわかる。

リザードマンの護衛なら、もっと綺麗に足並みを揃えている。

子供たちは、頑張ってはいるが足並みが揃っていない。

その練習を兼ねているから、後ろを歩いているのかな?

遊びに行くのだから、もっと気を抜けばいいのに。

ウルザたちの目的はダンジョンではなく、その奥にある転移門を使っての五村。

今朝、アルフレートから五村の 麓(ふもと) にあるイベント施設に希望する子供たちで行きたいと相談を受けた。

なんでも、子供向けのイベントがあるらしい。

アルフレートから言い出すのは珍しかったので俺は喜んで許可を出した。

一応、五村で少し問題を起こした子供たちだけど、だからといって村に押し込めておくのは駄目だと思うしな。

外に興味があるなら、もっと見てほしい。

俺が同行してもよかったのだけど、子供たちは同行者としてハクレンや鬼人族メイドを確保していたので断念。

一緒に行ってもよかったのだけど、俺は畑の拡張作業があるからな。

少し残念。

トラブルは……子供だからな。

トラブルはあって当然。

だが、無事に帰って来ると信じている。

先頭を進むウルザが俺に気付いたので、手を振って挨拶。

楽しんできてほしい。

子供たちが向かったイベント施設は、少し前に子供たちが五村の警備隊と揉めたお詫びとして俺が用意した施設だ。

サバイバルゲームの市街地フィールドというのだったかな?

街の中での戦闘を、住人に迷惑をかけずに行える場所という意図とともに、建設を指示した。

フィールド内の建物は、俺としては簡単な建物を考えていたのだけど、五村の大工見習いたちが競い合ったのでそれなりに立派な建物ができあがっていた。

万が一のときは、避難所として使えるぐらいに。

まあ、いざとなれば本当に避難所として使えばいいので問題はなし。

五村の警備隊員たちは、とても喜んでいた。

そういえばイベント施設が完成したとき、戦闘訓練だけでなく火災訓練もやってほしいと俺がお願いしたら、ピリカが真面目な顔でこう言ったな。

「火攻め対策ですか?」

あれは冗談だったのかな?

うまく笑えなくて申し訳ない。

火災訓練を開始し、住人たちの参加が増えていくとゲームなどをする場所としても利用が開始され、今ではなかなかの賑わいになっているらしい。

なので、そのイベント施設に近い麺屋ブリトアが、新しくオープンした店の中で一番人気が出ると俺は思っている。

イベント施設の隣、野球場だしな。

麺屋ブリトア。

このブリトアという名前は、グラッツの家名だ。

この店は、原材料の問題で甘味関係ではない店にしようと考え、近くにいたグラッツとロナーナに相談に乗ってもらったからだ。

ラーメン屋の意見はグラッツから出た。

なので、二人の結婚祝いも兼ねて、店名を二人からもらおうとおもった。

俺もグラッツも最初は麺屋ロナーナを提案したのだけど、ロナーナ本人が恥ずかしがったので麺屋ブリトアになった。

貴族の家名を使って大丈夫かなと思ったけど、グラッツ本人から使用許可が出たので問題なし。

ビーゼルが、その話を聞いてちょっと羨ましそうにしていた。

ビーゼルの家名はクロームだったな。

どこかで麺屋クロームをオープンするべきだろうか?

いや、ビーゼルなら孫娘の名前を付けるか。

となれば、麺屋フラシア。

悪くない。

まあ、新規に店をオープンするのはしばらくは無理だけど。

お昼過ぎ。

畑の拡張作業を中断し、休憩。

【万能農具】を使っているから疲れてはいないのだけど、夏の暑い時期に延々と畑を耕していたら周囲から心配されるから。

適度に休んでいるところもみせておく。

……

休憩していると、ケンタウロス族の一人が俺のもとにやってきた。

「村長。

すみません、ちょっとトラブルが発生しました」

トラブルは居住エリアで発生したそうだ。

俺はケンタウロス族の背に乗せてもらい、トラブルの現場にいく。

現場は居住エリアの世界樹。

周囲にはミノタウロス族やケンタウロス族が何人かいて、世界樹を取り囲んでいる。

なにがあったかは聞いている。

俺はミノタウロス族の一人が指差す先をみた。

そこには、すごく大きな芋虫…… 蚕(かいこ) がいた。

八十センチ。

世界樹の木の枝に体を乗せ、葉を食べている。

この蚕。

どこかからやってきた蚕ではなく、 二村(にのむら) で飼育している蚕の一匹だ。

以前、俺が世界樹の葉を与えたことで、その味を忘れられない個体が二村の蚕小屋から脱走。

この大樹の村の世界樹までやってきたそうだ。

森を通って、ここまで来たのか?

すごいな。

違う?

村を行き来するケンタウロス族にくっついて、大樹の村にやってきたと。

なるほど、賢いな。

「すみません。

発見が遅れて。

まさか、ここまで成長しているとは」

構わない。

世界樹に影響は……なさそうだな。

蚕に葉が食べられるそばから、世界樹は葉をつけている。

だから発見が遅れたのだろう。

ああ、怒ってはいない。

原因は俺が蚕に世界樹の葉を与えたからだからな。

俺は大丈夫だ。

大丈夫じゃないのは、向こう。

ルー、ティア。

以前、俺が蚕に世界樹の葉を与えたときに、すごい顔をしていた二人だ。

蚕を怒らないでやってほしい。

処分はちょっと。

ほら、これだけ大きい蚕だ。

いい糸を出すかもしれないぞ。

特別な糸になるかもしれない。

この二人は俺がなんとか 宥(なだ) められる。

だが、厳しそうなのは向こうの三人。

本当にたったいま戻ってきたグランマリアとキアービット、それと見知らぬ背の低い天使族。

三人は世界樹の葉を遠慮なく食べ続ける巨大な蚕をみて、変な顔をしていた。

色々な感情が整理できないようだ。

見知らぬ背の低い天使族は、ひょっとしてグランマリアのお母さんかな?

いや、グランマリアに顔が似てない。

誰かの妹かな?

あの顔はどこかで見た気が……

俺は答えが出せなかった。

答えを出すまえに、その見知らぬ背の低い天使族は一筋の涙を流し、泡を吹いて倒れたからだ。

近くにルーやティアがいてよかった。