軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

神の仲裁

村に軽快な太鼓の音が鳴り響く。

太鼓の中に砂が仕込まれているのか、独特の音になっている。

その太鼓を持ったリザードマンが二十人。

彼らが先頭になって、パレードが開始される。

リザードマンの太鼓隊は村の西側からスタート。

居住エリア内を突っ切り、俺の屋敷の前に向かうコース。

リザードマンの太鼓隊の後ろに、ティアの作ったゴーレム隊が続く。

ゴーレムは二メートルぐらいの人間サイズ。

ゴツゴツした岩のボディなのだが、ザブトンたちが作った白い衣を腰に巻いているのでさらに人間っぽい。

さらに、そのゴーレムたちにはガットの作った武具を装備させている。

強そうだ。

そして、その数は二百。

……

ティア練習のときより増やしてるな。

一糸乱れぬ行進は綺麗だけど、どこかに攻め込む前のように見えて、ちょっと怖い。

ゴーレム隊の後ろに、三人の死霊騎士。

剣と盾を持って踊りながら続く。

ただ、踊りにいつもの陽気な感じはなく。

戦い前をイメージしているのか、血に飢えた雰囲気だ。

そして、死霊騎士の後ろに二十人のミノタウロス族、二十人のケンタウロス族。

ミノタウロス族とケンタウロス族は、全員がマスクをしていて顔を見せない。

その上で全員が両手に剣を持ち、二刀流。

強そうだ。

その後ろには誰も続いていない。

手違いではなく、予定通り。

リザードマンの太鼓隊、ティアの作ったゴーレム隊、三人の死霊騎士、二十人のミノタウロス族、二十人のケンタウロス族の一行は、俺の屋敷の前に到着。

そこに待ち受けているのは、獣人族、ハイエルフ、山エルフの一団。

全員が違う武器を持ち、統一感がない。

その一団を率いるのはナート。

そのナートが旗を振り、獣人族、ハイエルフ、山エルフの一団が雄叫びを上げて突撃を開始。

リザードマンの太鼓隊、ティアの作ったゴーレム隊は左右に分かれて獣人族、ハイエルフ、山エルフの一団を素通り。

迎えたのは三人の死霊騎士。

もちろん、本気での戦闘をするわけではない。

死霊騎士が振った剣で、倒された様子を演じながら一団の後ろに戻っていく。

うーん。

ハイエルフ、山エルフの演技がイマイチ。

いや、演技が下手だからイマイチなのではなく、演技が迫真過ぎるのでイマイチ。

私の腕がぁぁとか、内臓が落ちたぁとか言わないでほしい。

子供が聞いてるから。

獣人族は、無難な演技。

いいぞ。

三人の死霊騎士の活躍により、ナートが率いる一団はばらばらに散る。

死霊騎士の剣がナートに向けられ、ナートもやられるのかというところで、大太鼓の重たい音が奏でられた。

そして、誰もが動きを止めるなか、大太鼓の音に合わせて重々しく登場する魔王。

魔王の後ろにはランダン、グラッツ、ホウ、ビーゼルの四天王。

四天王の面々は身体のサイズにあった小さな樽を抱えている。

小さな樽の中は水。

魔王の指揮で四天王の四人は小さな樽から水を手ですくい、死霊騎士に振り撒いた。

死霊騎士は慌てて撤退。

ミノタウロス族、ケンタウロス族もそれに従う。

リザードマンの太鼓隊、ティアの作ったゴーレム隊はその場に残り、魔王の後ろに。

魔王はナートと共に胸を張って行進を開始。

進路は俺の屋敷の前を通り過ぎ、居住エリアに……入る前に、その進路を阻む新たな一団。

マルビット、ルィンシァ、ティア、グランマリア、キアービットの天使族。

その後ろに、さきほど撤退した三人の死霊騎士とケンタウロス族、ミノタウロス族。

マルビットの一団は魔王たちを挑発するようにゆっくりと前進。

すると、魔王の後ろについたリザードマンの太鼓隊、ティアの作ったゴーレム隊が不規則に動き出した。

裏切った様子だ。

つまり、魔王と四天王は囲まれたことになる。

これは大ピンチと魔王は大慌て。

魔王とナート、四天王は村の東側、俺の屋敷方向に向かって撤退。

その際、四天王が一人ずつ足止めの見せ場がある。

演技、迫真だなぁ。

俺の屋敷の前に来たときには、魔王とナートだけになっていた。

二人がもう駄目だというところで大きな鐘が鳴らされた。

そして全員が動きを止め、俺の屋敷をみる。

俺は屋敷の三階にいた。

そして、今回のパレードのために屋敷の正面に作られた階段を下りる。

みんなが動きを止め、音も立てないのですごく目立つ。

緊張する。

さらに、階段を下りるのにあまり下を見ないようにと無茶なことを指示されているので困る。

俺が階段を下りるまで、次には進まない。

俺はゆっくりと、足を踏み外さないことだけを考えて下りた。

俺が地面に足をつけた時、また大きな鐘が鳴らされた。

鐘を鳴らしているのは、ザブトン。

階段の下に隠れていたアルフレートとティゼルが登場し、まずアルフレートが俺に文字の書かれた木板を渡してくれる。

俺は文字の書かれた木板を受け取り、それを魔王に渡す。

魔王は文字の書かれた木板を両手で天に掲げる。

すると、さきほど散った獣人族、ハイエルフ、山エルフの一団が戻ってきて魔王の後ろに。

裏切ったリザードマンの太鼓隊が魔王の後ろに戻り、ティアの作ったゴーレム隊は動きを止めた。

次に、ティゼルが俺に苗木を渡してくれる。

俺は苗木を受け取り、それをマルビットに渡す。

マルビットは苗木を天にかざし、天使族は俺の後ろに。

残ったのは三人の死霊騎士、ミノタウロス族、ケンタウロス族の一団。

俺が魔王の一団と死霊騎士のあいだに立つと、双方は十歩ずつ下がる。

これで争いが収まったという演出。

また大きな鐘が鳴らされた。

これでこの演出の物語は終わり。

俺が片手を挙げると大きな歓声が沸きあがった。

村の西側からスタートした物語は、常に多くの観客が同行していた。

なので、多くの者が物語を目撃できただろう。

進路近くの畑は、踏み荒らされることを想定して耕していない。

パレードが終わったらすぐに耕す予定だ。

さて、演出の物語は終わったが、パレードは終わっていない。

むしろ、パレードはこれからが本番。

二つの陣営が仲直りをして、共に行進をするという演出だ。

居住エリアから車輪付きの櫓が移動してくる。

物語では出番のなかったクロたちも集まって、出発の合図を待っている。

慌てるな。

ちょっと休憩というか、着替えないといけないからな。

俺の姿は、シンプルな一枚布をまとい、腰紐で縛った姿。

階段を下りるときにも思ったのだが、風が吹くと下着が丸見えになる。

危険な格好だ。

あと、寒い。

なので着替えたい。

これは俺のわがままではなく、予定通りの着替えだ。

すでにザブトンが次の衣装を用意している。

わかっている。

今回のパレードで、俺は十一回の着替えが予定されている。

頑張る。

少し離れたところで待機する文官娘衆。

「これって魔神神話の第一部でしょ?

第二部はやらないの?」

「第二部は魔神さまが消える話だからお祭りには合わないかなって。

魔神さまが消えたあと、また争いが再開されちゃうしね」

「なるほど。

でも、第二部のほうが人気があるでしょ」

「戦いの見せ場だらけだからね。

派手だけど、大樹の村でそれをやると……配役で揉めそう」

「あー……確かに。

やらないのが正解かな」

「いや、やるならもっと時間をかけて準備してやりたい。

特に英雄女王の役をウルザさまにやっていただきたい」

「あはは。

でも、やるとなると……魔王さま、何回ぐらい倒されるかな?」

「魔王さまの役、全部魔王さまに任せるの?」

「魔王さまがいるのに、他の人にさせるほうが不敬でしょ」

「魔王さま、倒されるシーンばっかりだけど……そっちのほうが不敬にならないかな」

「今回、四天王のみなさまに、四天王役をお願いしておいて今さらでしょ」

「あははは。

まあ、演技だしね」

「そうそう、演技演技」

「ところで、階段の上に作った魔神さまの席。

ずっと猫が座っているようにみえるけど……」

「座っているわね」

「席のせいかな。

いつもより二割増し、凛々しくみえる」

「みえるね」

「どうする?」

「どうもしない。

ほら、私たちが乗る櫓が来たわよ」

「おっと、急がないと」