軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

五村で忍ぶ者 ナナ=フォーグマ 前編

こんにちは。

私の名はナナ。

ナナ=フォーグマ。

太陽城の管理のために生み出されたマーキュリー種です。

現在は、大樹の村の村長の指示で 五村(ごのむら) に赴任し、五村の村長代行であるヨウコさまの指示で情報収集の任務についています。

任地や任務に文句はありませんが、命令系統は一本化してほしいものです。

ありえないと思いますが、村長と村長代行から命令が同時にきた場合、私はどちらに従えばいいのでしょうか?

「任地のトップであるヨウコに従うべきだ」

「一番偉い村長に従うべきだろう」

……

お二人での話し合いを求めます。

結論が出たら、教えてください。

さて、任務です。

私はこういってはなんですが、目立たない外見をしています。

美人過ぎず、 不細工(ぶさいく) 過ぎない。

平凡な女性の容姿です。

それを利用し、村中というか街中に溶け込んで情報収集をします。

最初は一人でやっていましたが、五村の大きさからさすがに無理と判断し、現地で信頼できる者に協力を得て頑張っています。

今日は五村の南側の商店を回ってみるつもりだったのですが、ヨウコさまからストップが掛かりました。

なんでも、大樹の村の天候が荒れるため、村長の奥様たちとお子様たちが五村に避難してくるそうです。

天候を避けるためなら五村ではなく、四村こと太陽城に避難したほうが確実とも思いますが、太陽城では十分な受け入れができませんからね。

残念です。

今度、ベルに受け入れ施設の充実を提案しておきましょう。

ともあれ、五村に避難されると……屋敷に滞在されるのですよね?

承知しました。

どうして、こうなったのでしょう?

五村の子供たちが、村長のお子様たちと揉めました。

事態の把握と収拾に奔走させられました。

胃が痛いです。

トラブルの原因は……なんでしょう。

間が悪かったというべきなのでしょうね。

まず、ヨウコさまが村長の奥様たちと五村の有力者たちの顔合わせを計画しました。

知っている者もいますが、知らない者も多くいます。

避難がどれだけ続くかわかりませんから、トラブル防止のために悪くないことだと思います。

顔合わせはヨウコさまの屋敷で、昼食会の形で行われると五村の有力者たちに連絡されました。

朝に連絡がきて、その昼にという急なスケジュールですが、五村の有力者たちは断れないでしょう。

しかし、五村の有力者たちもただ従っているだけの者たちではありません。

ヨウコさまに選ばれ、五村の有力者と呼ばれる地位を手に入れた者たちです。

優秀なのです。

なので、ヨウコさまに呼ばれた五村の有力者たちは、自身の子供を連れてヨウコさまの屋敷を訪ねられました。

あわよくば自身の子供たちを覚えてもらおうと思ったのでしょう。

この段階では、五村の有力者たちは、村長の子供たちが来ていることを知りません。

また、いきなり子供を連れて昼食会に参加させるわけにはいきません。

昼食会に参加する人数は決まっていますからね。

多少の人数の増加には対応できますが、五村の有力者たちの立場ではヨウコさま主催の昼食会に、いきなり子供を連れて行くのは無礼になります。

昼食会で顔を覚えてもらい、帰り際に運がよければ子供の顔も覚えてもらう。

それぐらいの心積もりだったのでしょう。

可能性が低くても、その僅かな望みのために全力を尽くす。

尽くしてきたからこその、今の地位なのでしょう。

有力者たちの大半が、子供を連れてきていました。

この子供たちは、全員が顔見知りです。

向こうは知らないでしょうが、私は彼らのことを知っています。

五村の頂上付近の子供たちを取り纏めている者たちなのですから。

五村に対しての忠誠心が強く、五村の将来を 担(にな) う者たちとして期待されています。

私も期待しています。

その子供たちは、親の昼食会の最中は、まとまって遊んでいるように言われました。

抜け駆けさせないためですね。

その辺りを 弁(わきま) えている子供たちは、素直に頷きます。

子供たちが勝手をすることはないでしょう。

ヨウコさまの屋敷の近くでトラブルを起こしても、何の利益もないからです。

なので、私も少しの間、目を離してしまいました。

本当にすみません。

昼食会に参加する有力者のほうが大事と判断したのです。

まさか、目を離したすきに、子供たちがヨウコさまの屋敷の近くで遊ぶ村長の子供……アルフレートさまたちを見つけ、口論をするとは思いませんでした。

口論の内容はシンプルなものと言うか……行き違いですね。

「お前たち、誰の許可を得てここで遊んでいる。

ここはヨウコさまのお屋敷だぞ。

名を名乗れ」

「こんにちは。

僕はアルフレート。

ここで遊ぶように親に言われたから遊んでいるんだ。

このことは、ヨウコさんも知っているから」

「ヨウコさんとはなんだ!

ヨウコさまだろうが!」

……

双方の立場を知らないからの行き違いですが、例えるなら王子に対して家臣の家臣の子供が 居丈高(いたけだか) に振舞ってしまった形ですね。

そして、アルフレートさまが名乗ってしまったからには、村長の息子です。

知らなかったは通じないのです。

知らないほうが悪いのです。

それが世の中です。

だからこそ、ヨウコさまも奥様たちと五村の有力者の顔合わせを計画したわけで……

アルフレートさまは、その場を穏便に収めようとしていますが……勉強不足ですね。

アルフレートさまが頭を下げて済む問題ではなくなっています。

はっきり言いましょう。

逆効果です。

アルフレートさまの後ろにいる子供たちの目が怖いのですが……特にティゼルさま。

私は立場的にはアルフレートさまの味方です。

ですが、大樹の村と五村の利益を考えて、ここは五村の子供たちの味方をします。

ええ、こっそりとですが。

とりあえず、メイドに変装して。

「坊ちゃまがた。

何をなさっているのですか?」

会話に割り込みます。

「坊ちゃまがた、議会場の食堂にお食事の用意をしております。

向かってください。

アルフレートさま、ティゼルさま、ウルザさま、リリウスさま、リグルさま、ラテさま、トラインさま、ナートさま、二階にお食事の用意をしております。

ご案内します」

二組を別方向に向かわせつつ、やんわりとアルフレートさまの情報を渡します。

五村の子供たちは優秀です。

扱いの差で、誰を相手にしたかわかるでしょう。

屋敷の二階はヨウコさまのプライベート 空間(エリア) 。

アルフレートさまは、そこに出入りできるかたなのです。

……

…………

駄目ですか。

気づきません。

五村の子供たちはそのまま、議会場に向かっています。

……

ええっ、本当に気づかないの?

これは裏目!

完全に裏目!

別れる前に、五村の子供たちが全面謝罪。

それを私がサポートすることで、この場だけのこととして収めるつもりでしたが……

あ、顔色が悪くなりました。

気づきましたね?

よかった。

そしてこちらに向かって全力疾走。

素晴らしい判断です。

ですが、少し遅かったです。

私を含め、アルフレートさまたちは屋敷の中に入ってしまいました。

時間切れです。

すみません。

ですが、あの場で口論を続けられると、五村の子供が全員処刑されるという最悪の結果もあったわけですから、それを回避できただけでもよしとしましょう。

五村の子供たちが、隠さずにちゃんと親に知らせたのは評価できます。

知らされた親は胃を抑えていますが……

知らされないよりはいいでしょう。

私の報告を聞いたヨウコさまは頭を抱えています。

でしょうね。

私もヨウコさまの立場なら、頭を抱えます。

上司の子供と部下の子供が口論したわけですからね。

簡単な解決方法としては、その子供たちの親を全員クビにすることです。

ただ、その親は五村の有力者。

代わりはいくらでもいますが、育てるのにそれなりに時間がかかったヨウコさまの手足です。

切り捨てるには惜しい存在なのでしょう。

ヨウコさま、なんだかんだで優しいし。

その優しいヨウコさまの取った手段は、村長に早急に謝罪すること。

大樹の村は悪天候を理由に封鎖されますが、ヨウコさまなら問題ないでしょう。

頑張ってください。

そう言いたいのですが、行く前に追加の報告がありまして……ええ、悪い報告です。

アルフレートさま、ティゼルさま以外が、五村の子供たちの溜まり場に突撃しました。

貴族社会の 面子(メンツ) を考えれば間違った行動ではないのですが、十歳ぐらいの子供の行動としてはおかしいですよね?

大樹の村の子供たちの教育、どうなっているのですか?

いえ、ただの興味です。

けっして、大樹の村の子供たちの教師になりたいわけではありませんから。