軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

熱いお茶を飲む

今は冬だ。

外は寒い。

だが、屋敷の中は暖かい。

各所に保温石を使った暖房器具が設置されている。

屋敷のホールが広く、なかなか暖かくならないのが難点だったけど、仕切りを立てたりカーテンを張って暖かい空気が逃げないようにしている。

お陰で屋敷の中ではそれほど厚着じゃなくても生活ができる。

快適だ。

だからだろう。

薄着でカキ氷を楽しんでいる者がいる。

マルビットと妖精女王だ。

二人ともイチゴのシロップを選択したようだ。

別にカキ氷を楽しむのは構わないが、もう少し季節感を大事にしてほしい。

あと、子供たちの人気を集めるのはどうなんだろう?

台所から、それぞれの好みのカキ氷を手にしたアルフレート、ティゼル、ウルザ、ナート、グラルがやってきた。

台所にいる鬼人族メイドが子供たちの体を気遣ったのか、小さいカキ氷だ。

そのサイズなら食べてもいいぞ。

だけど、体を冷やしすぎないようにな。

あと、寒い場所に行く時はちゃんと厚着するように。

俺はカキ氷は食べないのかって?

ああ、今はいいかな。

俺はコタツに入り、 善哉(ぜんざい) を楽しむ。

モチは二つ。

お供は緑茶だ。

部屋が暖かいからコタツの中の保温石は取り外し、機能させていない。

雰囲気重視。

客間の窓から外を見ると、雪が降っている。

ふふ。

客間の窓には窓ガラスが使われている。

五村(ごのむら) で作られた窓ガラスだ。

この透明度は、ガラス技師の努力の成果だな。

窓を開けなくても、外の景色が楽しめるのはありがたい。

その窓からみた雪は、これまでの経験から積もる降り方だ。

しばらくは外に出れないな。

外はさらに寒いだろう。

馬や牛、山羊、羊の小屋は大丈夫だろうか?

防寒対策はしたつもりだが、あとで見にいかないとな。

……

アルフレート、その手に持っているのはなんだ?

板なのはわかっているんだ。

それを組み立てて何をって……山エルフの作だな。

そのミニプール。

水圧に耐えられるように工夫がみえる。

それなのに子供でも組み立てられる簡易さは見事だ。

いやいや、まてまて。

まさか、それを使うのか?

……

すでに水着を用意している。

なんて用意のいい。

ミニプールの水はマルビットの魔法で出すのね。

わかった。

止めない。

ただしマルビット、水じゃなくてお湯にするように。

あと、遊んだあとは片付けを忘れるな。

ミニプールのまわり、絶対に濡れるから。

俺はコタツに入りながら、外をみる。

明日は寒くなるな。

背後で季節にそぐわない賑やかな声を聞きながら、熱い緑茶を楽しんだ。

雪が降っても、連絡員のケンタウロス族は 三村(さんのむら) から定時連絡にやってくる。

「大丈夫だったか?」

「はい。

ご心配、ありがとうございます。

問題はありません」

道中の 一村(いちのむら) 、 二村(にのむら) でも問題はないとのこと。

まあ、そうそう問題が起きても困る。

「一点。

ラッシャーシさまより、ご報告があります」

連絡員のケンタウロス族と一緒に移動していたのは文官娘衆の一人、ラッシャーシ。

三村の世話係だ。

ここ数日、大樹の村と三村を行き来していた。

「報告します。

ケンタウロス族の代表、グルーワルドさんが三村住人の一人との結婚を望んでいます」

そうなの?

それはめでたい。

「相手はポロ男爵とともにやってきた移住者で、身元の調査は完了しています。

思想的にも問題はなく、グルーワルドさんの相手として無難ではあると思うのですが、問題が一点」

「なんだ?」

「身分差です」

「え?」

「グルーワルドさんは、魔王国子爵。

対して相手の男性は爵位を持たない平民です」

「あー……なんとなくそれが問題なのはわかるが、当人たちが気にしなければ問題ないのではないか?」

魔王国の住人は、身分差とか爵位にそれほど 拘(こだわ) らないイメージなのだが?

ビーゼルに相談したら、あっという間に子爵位をグルーワルドに与えてくれたぐらいだし。

グラッツが求婚しているロナーナは平民だぞ?

「当人は気にしなくても周囲……他の男性陣ですね。

特にポロ男爵に仕えていた者が気にします」

そんなものか。

あ、いやそうなるか。

ポロ男爵の移住時に、身分差を考慮して三村の代表であるグルーワルドが子爵になったのだった。

「そこでご提案なのですが……

子爵位を返上させるのはどうでしょう?」

「返上?」

「はい。

実はポロ男爵より相談を受けておりまして、現状は魔王国の貴族として活動できておらず、男爵位を返上したいと」

そうなの?

「はい。

それにあわせ……同タイミングでも構わないでしょうが、ポロ男爵が返上した後、期間をあけてからグルーワルドさんが子爵位を返上するという形でいかがでしょう」

「いかがでしょうと言われても困るな。

グルーワルドは爵位の返上に関してはどう言っているんだ?」

「すごく前向きです」

「すごく?」

「はい。

重荷だったようで……」

「そうか。

それなら、ビーゼルに相談しないとな」

こちらから相談して子爵にしてもらったのに、都合が悪くなったから返すというのはなんだか申し訳ない。

「爵位の返上って簡単にできるのか?」

「村長なら簡単です」

まあ、簡単なら構わないか。

「よろしくお願いします。

グルーワルドさんの結婚は、爵位の件が片付いてから改めてということで」

「わかった」

俺はラッシャーシの提案に乗った。

乗ったが、結婚を希望する者をあまり待たせてもよくない。

次にビーゼルの顔をみたら、相談するとしよう。

「おじいちゃんと一緒に遊ぶか?」

俺が後ろをみると、ビーゼルが孫のフラシアを抱きかかえていた。

……

俺の心の準備ができていないが、相談するとしよう。

ラッシャーシ、すまないが熱いお茶を二つ頼む。