軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

収穫祭

収穫祭前日。

参加者が次々にやってきた。

まず、始祖さんとフーシュ。

三日前から体を清めていたそうだ。

そこまで気合を入れなくてもいいんだけど……

次に魔王とビーゼル、ランダン。

グラッツとホウは仕事で、獣人族の三人、リグネは学園行事で不参加。

混代竜族の三人は遠慮するというか、シャシャートの街で仕事をもらって頑張っているらしい。

ドース、ギラル。

ライメイレン、ドライム、グラッファルーンは少し前からずっといる。

一村、二村、三村、四村からの有志……というかほぼ全員。

ゴロウン商会から、マイケルさんとその息子のマーロン、マーロンの従兄弟のティトやランディ、護衛のミルフォード。

温泉地から死霊騎士が三人。

南のダンジョンのラミア族、北のダンジョンの巨人族からの参加者は、武闘会の時からずっといる。

本番は明日なのだが、軽い宴会が始まった。

明日、出番がある者は早く寝るように。

早朝。

大樹の社の前に用意された祭壇に、三人の鬼人族メイドたちが個々に大きな平皿を運ぶ。

平皿の上には、今年の収穫物がフルーツ盛りのように積まれていた。

平皿は祭壇の正面に並べて置かれた。

鬼人族メイドが下がると、次は三人のハイエルフが登場。

それぞれの手には狩ってきたばかりのウサギの肉があり、それを祭壇に並べた。

ハイエルフが下がると、次は三人のドワーフが登場。

個々に大きな樽を抱えており、大丈夫かなと不安になるが……大丈夫だった。

ドワーフたちは大きな樽を祭壇に並べ、満足そうに下がった。

そして登場するザブトンと、ザブトンの子供たち。

ザブトンは祭壇の前で自身の糸を紡ぎ出し、三枚の布を作った。

ザブトンの子供たちは、小さなコップを持っていた。

そのコップにはハチミツが入っている。

当然、コップの数は三つ。

祭壇に並べられる。

ザブトンたちが下がると、荘厳な音楽が流れ始めた。

祭壇の近くに待機していた楽隊による演奏だ。

楽隊はリザードマン、文官娘衆、獣人族の女の子たちで構成されているが、なぜか指揮者はランダン。

「どうしても指揮者がやりたいと言われまして」

俺の横に控えている文官娘衆の一人が教えてくれた。

指揮者に憧れてたのかな?

妙に慣れた感じだし。

ランダンも気になるが、儀式に集中。

音楽が一段落したところで、始祖さん、フーシュ、聖女のセレスが登場。

始祖さんを中央に、左右にフーシュ、セレスが並んだ。

「これより豊穣の神に感謝し、収穫の宴を 執(と) り行います」

始祖さんの宣言のあと、始祖さん、フーシュ、セレスは声を揃えて神に対して感謝を祈っていく。

祭壇前にいる俺と各種族の代表たちは、それを厳粛に聞いた。

儀式はこれだけ。

本格的にやると十日かかると言われたので、略式でお願いした結果だ。

あとは、会場に移動して宴会が始まる。

武闘会の時と同じように、舞台とそれを取り囲む客席。

その外に食事や酒を提供するテントがある。

舞台では、クジで決まったスケジュール通りに出し物が披露された。

『ザブトンの子供一階チームによる演劇』

ザブトンの子供たちだけだと、セリフがプラカードになってしまうので、獣人族の女の子たちが協力してセリフを言っている。

レッドアーマー、ホワイトアーマーの対決は見所だった。

最後、協力して真の悪役と戦うシナリオも悪くない。

真の悪役として登場したルーは、なかなか凛々しかった。

最後、負けるけど。

演技は悪くなかったぞ。

子供たちに罵声を浴びせられるのは覚悟の上だろ?

悪役なんだから。

罵声は覚悟していたけど、泣き叫ばれるとは思わなかったと。

ちょっとメイクが迫力あったからなぁ。

いやいや、可愛かったぞ。

ははは。

『リザードマンによる集団演武』

槍を持ったリザードマンが一人ずつ舞台に上がり、徐々に数を増やしながらの集団演武。

最後、ダガともう一人が一対一の演武を見せてくれたけど、あれって演武じゃないよな?

ガチなやつだよな?

怪我はないようだけど、危ないことは駄目だぞ。

『ザブトンの子供二階チームによるタップダンス』

舞台の上に板を並べ、その上で六十匹ぐらいのザブトンの子供が足をリズミカルに動かして見せてくれる。

数は多いけど、拳大サイズなので少しボリュームが小さい。

この時は会場中が静かにしていた。

一体感があった。

『ドワーフによる組み体操』

笛の音に合わせ、きっちり動く姿は凄いが……なぜ、ことあるごとに酒を飲む?

酔ってないと思うけど、最後のピラミッドは違う意味でドキドキした。

『巨人族とラミア族による創作ダンス』

巨人族は大きいので、迫力がある。

それが八人。

ドタンバタンと踊っている。

意味はわからないが、神に感謝する踊りらしい。

ラミア族の姿が見えないなと思っていたら、巨人族たちが輪になって最後のポーズをキメた時に輪の真ん中から飛び出してきた。

ビックリした。

今までどこにいたんだ?

手品要素があるとは、巨人族は侮れないな。

『魔王によるイリュージョン』

「イリュージョン!」

魔王がそう言って瞬間移動を見せてくれた。

それなりに練習したのだろう。

だが、横に瞬間移動の魔法を使えるビーゼルがいるからなぁ。

「イリュージョン!」

今度は魔王が帽子の中から、子猫たちを取り出した。

一匹、二匹、三匹、四匹……子猫たち、マルビットには厳しかったのに、魔王の前だと大人しいな。

「イリュージョン!」

魔王は頑張った。

『アイギスによる鷲使い』

フェニックスの雛のアイギスがクチバシで空中に肉片を投げ、それを鷲が空中でキャッチして食べる。

肉片を十回投げてフィニッシュ。

最後、アイギスの頭に鷲が止まり、アイギスは頑張って支えていたのだが……捕まっているようにしか見えなかったのは言わないでおこう。

『ハイエルフによる演奏』

最初はハイエルフたちだけだったが、次々と楽器を持った参加者が増えて大演奏になった。

指揮者は最初はリア、途中でランダンに交代した。

ランダン、指揮者に何か思い入れでもあるのだろうか。

ここで一度休憩。

舞台には白い布を張ってスクリーンが作られた。

そこに流される野球名場面集とビッグルーフ・シャシャートのCM。

残念ながら、村の住人の大半は野球のルールを知らない。

なので凄いプレーは反応がイマイチで、珍プレーと呼ばれる場面が受けた。

魔王としては、ちょっと不本意そうだった。

始祖さんに言われ、焚き火台に火を入れることになった。

焚き火台は万が一の事故を用心し、会場の片隅に作っている。

「最初に火を入れると思っていたのだけど?」

始祖さんが忘れているのかと思ったけど、違った。

「太陽が真上に来たぐらいで火を入れるのが正式なのです」

確かに今はお昼だ。

では、さっそく点火しよう。

そう思っていたら、いつの間にか猫がやってきて任せろと一鳴きした。

そして、魔法で着火。

……

あれ?

なにか、いつもの火と違う気が……

一瞬、まっすぐ伸びた火柱がそのまま太陽にまで届くかと思った。

「これはまた見事な」

始祖さんがそう言ったあと、教えてくれた。

「今のは“原初の火”ですね。

魔法の神が世界を救うために灯した火と言われています」

「へ、へー」

今は火柱も収まって、普通の焚き火になっている。

「えっと、何か効果があったりは?」

「大昔は、魔族を守る火でした。

魔族の王の一人があの火を取り込み、魔王が生まれたと……」

始祖さんの説明を火が聞いていたのか、急に火柱が伸びて会場にいる魔王に向かった。

「え?」

魔王、炎上。

「ま、魔王ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」

俺は慌てた。

慌てて近くにあった水をかけたが、魔王を包んだ火はなかなか消えない。

なにがどうしてこうなった?

いや、それよりも早く火を消さないと。

俺は周囲にいる者に水の魔法を頼んだ。

だが火が消えない。

魔王が倒れた。

お、おい、まさか……

火と魔王が徐々に小さくなっていく。

う、嘘だろ。

火が消えるとともに、魔王の姿も消えた。

……なんだ、これ?

呆然とする俺の肩を始祖さんが叩き、そして舞台を指差した。

白い布のスクリーンの前で、魔王がポージングを決めていた。

「イリュージョン!」

……………………

槍、投げても怒られないよな?