軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

CMと一般の部

武闘会の舞台を取り囲むように、大きな白いシーツが張られた。

そのシーツに、映像が映し出される。

「シャシャートの街の名物店、ビッグルーフ・シャシャート!

その中核をなすマルーラには四人の王がいる!」

効果音と共に、映像はシャシャートの街からビッグルーフ・シャシャートに、そしてマルーラのカウンターに進む。

「まずは一人目!

このマルーラで不動の地位を誇るカレー王、マルコス!」

映像の中でマルコスが恥ずかしそうにカレーを提供する。

「黙々と串を返す姿に女性人気急上昇!

焼き鳥串の王、オーガス!」

映像の中のオーガスはキリッとした顔で串を返し、女性にキャーっと言われている。

近くにいるオーガスは奥さんに睨まれ、情けない顔でキャーって言ってる。

「具材を一つずつ提供する新スタイルが人気!

少し変わったポトフ王、ブルーノ!」

少し変わったポトフはオデンだな。

夏場でもそれなりに人気があるようだ。

「そして、最後の一人!

ミンチにした肉は食べやすさ抜群、ハンバーグ王のシャイフル!」

シャイフル。

……たしか、元貴族の息子かなにかで、マルーラに弟子入りした男だったな。

「元貴族ではありません。

今も貴族で、嫡男です。

本人は 廃嫡(はいちゃく) を希望していますが、現当主が抵抗しています」

近くにいた文官娘衆の一人がそう教えてくれた。

「抵抗って大丈夫なのか?」

「大丈夫でしょう。

現当主がマルーラに直接乗り込んできたそうですが、その時にお店に魔王さまがいたそうですので」

「魔王が?」

「魔王さまは野球をするたびにマルーラを訪れますから」

「なるほど。

あと、冗談とはいえ、魔王がいるのに王を名乗って大丈夫なのか?」

カレー王とかハンバーグ王とか。

「他の国では知りませんが、魔王国では大丈夫です。

結構いますよ、王を自称する人」

そうなんだ。

いや、前にもそんな風に聞いた気がするな。

映像は、四人の王が勢ぞろいして声を揃えて「マルーラでお待ちしています」と言って終わり。

カメラはブレブレだし構図も甘いが、ちゃんとしたCMになっている。

このCMを作ったのがイレたち、撮影隊。

ライメイレンから譲られた録画装置だが、数回使ったあとにルーがいるイフルス学園に持ち込まれた。

複製品が作れないか検討するためだ。

その提案をしたのはイフルス学園の者たちなので、費用的には心配なかったのだが技術的にかなり難しいらしい。

しかし、イフルス学園の者たちは諦めなかった。

「録画機能は凄い」

「野球で際どい判定の時に、正しくチェックできる」

「あの名場面がもう一度」

夢に向かって暴走した。

その暴走に巻き込まれたのがルー。

転移門の研究時間が圧縮され、録画装置の研究をすることになったそうだ。

「力関係はルーのほうが上なんだろ?」

「研究を前にしたらそんな理屈は通じないのよ」

イレたち撮影隊と共に帰って来たルーは、疲労困憊だった。

今も椅子に座って、へたれている。

まあ、ルーの頑張りもあってのあの成果なのだろう。

録画機能だけでなく、編集機能もある。

CMなのにあの大きな歓声も納得。

早く元気になってほしい。

とりあえず、武闘会本戦。

今年から一般の部、戦士の部もトーナメント制になったが、ハチマキルールは変わらない。

相手のハチマキを奪えばそれで勝利なのだが……

ウルザよ、相手を殴って悶絶させてからハチマキを奪うのはどうなのだろう?

相手が予選落ちした混代竜族の一人だからって、遠慮がなさ過ぎだろう。

ちなみに、予選落ちした混代竜族の三人は特別枠として一般の部、本戦に出場している。

当人たちは首を振って嫌がっていたが、ギラルが無理矢理に参加させた。

あー……残りの二人も一回戦負けだな。

もう少し、頑張るかと思ったのだが……

一般の部、特別枠にもう一人。

聖騎士シュナイダーこと、チェルシー。

予選敗退で色々と吹っ切れたのか鎧を女性用に変え、誰がみても女騎士という格好で参加。

名乗りもチェルシーにしている。

そして強い。

予選での敗北はなんだったのだというぐらい強い。

男に見えるガチガチの鎧が重すぎたのだろうか?

順調にトーナメントを勝ちあがり、準決勝で予選で戦ったリザードマンの子供。

リザードマンの子供に……油断はない。

あ、シュナイダーと別人として認識しているのかな?

チェルシーは……鎧を脱いで、軽装で舞台に上がった。

やっぱり鎧が重かったのかな?

最初は互いに持っている剣で斬り合っていたが、リザードマンの子供が剣を投げ捨ててタックル。

そのまま寝技に。

チェルシーはそれを察していたのか、同じく剣を捨てて寝技勝負に。

ぐるぐると舞台の上を二人で転がったあと、チェルシーの腕を締め上げたのはリザードマンの子供。

ガッチリ決まった。

だが、チェルシーの反対の手にはリザードマンの子供のハチマキがあった。

「勝者、チェルシー!」

審判役のハクレンの声が上がり、歓声が上がった。

見事な勝負だった。

決勝。

ウルザとチェルシー。

ウルザよ。

だから相手を殴って悶絶させてからハチマキを奪うのはどうなのだ?

歓声じゃなく、うわぁって声が多いだろ。

まあ、拍手して喜んでいるアルフレートを始めとした子供たちもいるけど。

……違った。

間違い。

言い直す。

「一般の部、優勝おめでとう。

よくやった」

ウルザが両手を挙げて、周囲に勝利をアピールした。

大きな歓声が沸きあがった。

フーシュ、チェルシーの様子は?

生きてる?

よかった。