軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

獣人族の男の子の学園生活 十日目?

フラウ先生の問題を思い出す。

「生徒ゴール。

貴族とは誰を指す言葉ですか?」

魔王国での正しい解答はこうだ。

「爵位を持つ者とその正妻、子供、それに準ずる役職を持つ者です」

王は王族であって、貴族に含まれない。

ここ、引っ掛けだから注意。

爵位とは、公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵、騎士爵と、それに準ずる称号を持つ者。

準ずる役職は四天王や将軍が有名だけど、ほかにも色々あるらしい。

さて。

ガルガルド貴族学園は、当然ながら貴族関係者の通う学園。

生徒の大半が貴族の子供と、貴族に仕える文官や武官の子供。

なので、親の爵位や立場が、生徒の人間関係に大きく影響する。

この学園では、その影響に関して排除しようとはしていない。

むしろ、積極的にその辺りの人間関係や立ち振る舞いを教え、そして責任を自覚させられる。

学園に入学したからには生徒はみな平等と言ったところで、学園を卒業した後には明確な身分社会が待っているのだから甘やかさない方針らしい。

中途半端なことはせず、学園にいる間は失敗しても大丈夫な期間として頑張って欲しいと、礼儀作法の先生が言ってた。

ただ、学園に来たことで周囲からチヤホヤされ、調子に乗る生徒が出てくるのは毎年の風物詩だそうだ。

今、シールに殴られた彼もその一人。

「貴様ら。

誰に断って、ここにいる」

訳)おい、この俺様に挨拶がないぞ。

どうなっている。

いきなり、こんなことを言ってくるもんな。

殴られても仕方がないと思う。

というか、ここで殴っておかないと後で大変なことになる。

「貴様に挨拶が必要とは知らなかった。

今の拳を挨拶代わりにしてもらおうか」

訳)え? こっちの方が身分が上のはずだけど、本気?

今なら、そのパンチで聞かなかった事にするよ。

「な、なか、なかなか、いい拳ではないか……ふっ、気に入ったぞ」

訳)すみませんでした。

以後、よろしくお願いします。

彼の足がガクガクしているのは失敗した事に対する恐れか、それともシールのパンチが思いのほか効いたのか。

どちらでも構わないが、こういった感じで絡んでくる人が増えてきた。

困る。

僕たちの身分は、学園に入学する時に男爵家当主相当という身分をもらっている。

男爵じゃないけど男爵と同じ扱いで、ということらしい。

フラウ先生、ユーリ先生からの手紙を学園長に渡したら、そうなった。

学園長、手紙を読んだ後でちょっと頭を抱えていたから、フラウ先生とユーリ先生が無理を言ってなければいいのだけど。

でも、もらった身分はしっかりと活用する。

ちなみに、先ほどシールに殴られた彼は伯爵の息子。

伯爵の息子より、男爵家当主の方が上。

これが公爵の息子であっても同じ。

当主は爵位を持っている当人。

親が偉かろうが、爵位を持っていない息子よりも身分は上になる。

でも、伯爵の息子は後の伯爵になる可能性があるのだから、男爵家当主であっても偉そうにしたりはしないのが普通。

それが世渡りらしい。

ただ、今みたいに身分や立場が下の者から明確に喧嘩を売られたら、買っておかないといけない。

放置するのが、一番怒られる。

後で反撃するのも駄目。

喧嘩の勝敗は横に置いておいて、その場で終わらせておくのが一番良いとされる。

なぜかと言うと、権威に傷が付くからだ。

明確な貴族社会に対し、反旗を翻す行為には即時対応。

勝つのが理想だが、負けても大丈夫。

抵抗したという姿勢を見せることが大事。

「このマント、役に立ってないな」

シールが自分の背中の短いマントを引っ張って見せる。

見せなくても大丈夫。

僕の背中にも同じのがあるから。

この短いマントは、学園生の証。

裏側にはラインが引かれており、身分が明確に掲示されている。

「どうして裏側なんだ?

表にしないと見えないじゃないか」

「防犯対策だろ。

見せびらかしながら街を歩くのは、怖いぞ」

魔王都は治安は良いが、犯罪がないわけではない。

その辺り、フラウ先生にしっかりと注意するように教え込まれた。

「見せてない方がトラブルが多いが……」

「それは相手の注意不足」

裏側だがラインなので、マントの端を少し観察すればすぐにわかる。

「注意不足ね。

……男爵家当主相当のラインと、男爵家関係者のラインが似てるからじゃないか?」

あー……確かに。

今度、事務担当のお姉さんに相談しておこう。

午前に授業を受け、午後がクラブ活動というのが基本スケジュール。

僕たちはクラブ活動を後回しにして、家作りに邁進。

そう思っていたのだけど、クラブに入ることになった。

クラブの名は、領民生活向上クラブ。

狩り、野外宿泊、農業、建設、料理、裁縫。

狩り以外は、貴族には不要な知識だけど、知らないよりは知っていた方が便利。

また、領地を持つ者ならこういった知識は持っていた方がよりよい生活ができるはず。

という目的のクラブ。

先輩四人とご近所さん二人が、僕たちと共に行動するために結成した。

なのに、なぜか代表は僕がやることに。

まあ、家作りを手伝ってくれるし、狩りには人手があるほうが楽だから断らなかった。

農業に関しては、少し前にブロンが学園に直談判した。

王都で食料は買えるけど、必要な物が必要な量集まらない。

また、味がイマイチ。

自分で作るから畑用の土地を貸して欲しいと。

即座に生徒が畑を耕す必要はないと却下されたが、事務担当のお姉さんに相談したら解決した。

「昨今、食糧事情は回復しつつありますが、今後の為にも食料の研究は必須。

その為の土地を貸していただけませんか」

言い方だなと思った。

僕たちが家を建てているブロックの横に、そのまま百メートル四方の土地を貸してもらった。

さっそくと思ったけど、まずは土作りから。

家作りと平行でチマチマやっていると、畑作業に興味を持った一人の先輩がやってきた。

先輩は地方に領地を持つ貴族の子供。

といっても、想像するような貴族の暮らしではなく、小屋のような家で暮らし、クワを持って畑を相手に頑張っていたそうだ。

土が懐かしいとクラブ入りを希望。

僕たちよりも詳しそうなので、是非にとお願いした。

その先輩の話では、今年は土作りで終わりそうということでショック。

「まあ、それだと寂しいから小さい菜園を造ろうか。

苗や種は俺が手に入れてこよう」

誰も反対しなかった。

ああ、そうそう。

クラブ内では貴族言葉は禁止。

狩りはともかく、野外宿泊、農業、建設、料理、裁縫に関する単語が少ないからだ。

「よきにはからえ」

だけでは、会話にならない。

現在。

先輩四人とご近所さん二人、農業先輩一人が部員を集め、クラブは四十人を超える大所帯になっている。

家作りが進むのは嬉しい。

全員が全員、毎日いるわけじゃないのだけど、食事の時にはいる。

なぜだ。

そして、四十人分の食事を僕一人が作るのはどうなんだろう。

ガルフのおじさんが隠して持たせてくれた調味料がそろそろ無くなりそうだ。

マイケルおじさんのお店を探さないと駄目かな。