作品タイトル不明
ハウリン村の近くで休憩
ハウリン村の村長に、セナの生んだセッテを見せにいくことになった。
長々と計画していたが、文化的な問題で阻まれていた。
セナが言うには、生まれた子供を見せに行くのは立場が下の者がすること。
俺は別にハウリン村の村長より立場が上とは思わないのだが、全員が反対するから困った。
じゃあ、見に来て欲しいと言いたいのだけど、その場合、こちらから迎えを出すのは駄目らしい。
自分の力で見にくるのが大事なのだそうだ。
となると、安易に見に来て欲しいとも言えないので 頓挫(とんざ) していたのだが、解決策が見つかった。
まず、俺は五村に向かう。
名目は視察。
ただ、俺は転移門を使わずにハクレンに乗って移動する。
その道中、ハウリン村の近くを通るが、それは何の問題もない。
ハウリン村の近くで休憩するのも、何の問題もない。
休憩したくなったからしただけ。
そこに、俺が近くを通ることを知ったハウリン村の村長が挨拶に来ても、何もおかしいことはない。
俺にはハウリン村の村長の娘や孫の同行者がいるけど、これはまったくの偶然。
世の中、不思議なことがあるものだ。
ははは。
面倒だが、風習や 仕来(しきた) りとかは馬鹿に出来ないからな。
ちなみに、この解決策はユーリの発案。
王族や貴族にも似たような問題があるらしい。
干し芋を渡したお礼に教えてもらった。
実際は、ハウリン村の近くで休憩と言っても、ハウリン村は集落の集合呼称だし、その集落も柵などで囲われているわけじゃないから境界は曖昧。
なので、ハウリン村の村長の家がある集落の近くに着陸した。
でもって、ガットも同行していてハウリン村の村長を呼びに行ってもらった。
呼びにいかなくても来ると思うけど、来ない可能性だってあるしな。
まだ二歳にもなっていないセッテをハクレンに乗せて移動させることも心配だったけど、その辺りは魔法で対処。
魔法は便利だ。
結果、色々と苦労したけどハウリン村の村長に挨拶できたし、セッテを見せることもできた。
一安心というか、俺の心が少し軽くなった。
予想外だったのはハウリン村の村長の初手が土下座だったことだな。
別に俺は怒ってないよ。
いやいや、お隣さんなんだから仲良くしましょう。
貢物?
セナ、これは断っても大丈夫なやつだよな?
今回の出会いは偶然なんだから、そういったのはご遠慮します。
ちょっと大変だった。
あと、村長の奥さん。
ガットとセナの母親にも挨拶。
温厚そうな人でよかった。
え?
発注のお礼?
お気になさらず。
こちらも助かっていますから。
あ、ハウリン村に時々、お邪魔しているティアが妊娠しましたので、しばらくは別の者が来ます。
はい。
今後とも、よろしくお願いします。
新しい発注は小型ワイバーン便で。
……
奥さんが発注関係を取り仕切っていたのか。
知らなかった。
俺と一緒に移動したのは、セナ、セッテ、ガット以外にガルフの息子がいる。
彼はハウリン村にいる幼馴染が目的だ。
心に決めたというか、互いに結婚を約束……話を詳しく聞くと約束未満らしい。
最悪、彼女のリップサービスの可能性があるとガットの弟子が呟いたことで、ガルフの息子は使い物にならなくなった。
武闘会後でよかった。
舞台の修理は最悪、年明けでも構わないからな。
さて、そのガルフの息子なのだが……
すっごい美人さんと一緒に、ニコニコしている。
ビックリした。
色っぽいというのかな。
年齢的にはガルフの息子より上にみえる。
お姉さんといった感じだ。
え?
ガルフの息子と同い年?
それは……えっと、発育がいいな。
事情を知らなければ、姉と弟。
最悪、母と息子と思われそうだが……
当人が気にしていなければ、問題なし。
頑張れ、ガルフの息子。
そのガルフの息子が、モジモジしながら俺のところに。
彼女を連れて帰りたい?
本人とハウリン村の村長の許可があるなら、構わないぞ。
あ、待て待て。
ガルフはいないから仕方がないにしても、ガルフの奥さんの許可がないと問題じゃないのか?
結婚の許可は村長がする?
え?
そうなの?
ちょ、ちょっと待ってくれ。
セナとガットと相談。
村人の結婚って俺が決めるのか?
「ハウリン村ではそうですね。
ですが、実際は当人なり家族なりで話し合って、村長は許可を出すだけです」
なるほど。
「ただ、当人の判断よりも重く扱われますので、村長が許可しなければ結婚できません」
なかなか責任重大だな。
それで、ガルフの息子の結婚に俺の許可は必要だと思うか?
「大樹の村は大樹の村の 仕来(しきた) りで構わないかと」
仕来り?
そんなものはない。
当人同士が望んでいるなら、別にいいじゃないか。
俺は大歓迎だ。
「では、許可を出せばいいかと」
セナの言葉に俺は頷く。
が、何か引っ掛かった。
俺にデメリットがあったりしないよな?
「家族の賛同を得ていないのに村長が許可を出すと、村長が家族を説得することになります」
……
ガルフの息子よ。
確認だ。
両親の許可は得ているか?
彼女の方は問題なし?
自分の両親はまだと。
なるほど。
では、連れて帰るのは構わないが、ガルフとガルフの奥さんが許可してからだ。
そういうわけだから、ガルフが戻ってくるまでは待とう。
うん。
いや、そんな顔をしなくても……
連れて帰るのは問題ないんだぞ。
一緒に住んでも問題ない。
ただ、夫婦の営みが駄目なだけで……
大丈夫だ。
一冬なんてすぐだ。
盛大に村で結婚式をしてやるぞ。
一緒に住めないなら、宿に一室を用意しよう。
それでどうだ?
……
え?
他の男が手を出すんじゃないかと心配と。
そりゃわかるが……村でそんな事をするやつはいないだろう。
大丈夫だ。
大丈夫だって。
……俺?
ははははは。
何を言ってるんだ。
俺が自分から増やそうとするわけがないだろう。
いや、魅力がないとかそういうことじゃなくてだな。
手を出さないって言ってるんだから、それで問題ないんじゃないかな?
いや、そんな顔をされても困る。
ガルフの息子との話し合いが終わると、ハウリン村の住人が集まっていた。
全員で土下座は勘弁して欲しい。
はい、立って立って。
寒いから、火の傍にどうぞ。
それでこれだけ集まったのは……ああ、村に移住した息子や娘の様子が知りたいと。
手紙で知らせている通り、みんな元気でやっている。
心配する必要はない。
俺とセナ、ガット、ガルフの息子で獣人族の移住者の話をした。
こうなるんだったら、何人か連れてきたらよかったかな?
話をしている間、セッテはハウリン村の村長の腕の中だった。
なんだかんだと数時間滞在し、休憩は終了。
急いで書いたと思われる手紙というか板を何枚も預かった。
ワイバーン便だと、送れる量が限られているからな。
ハウリン村の村長たちに見送られ、ハクレンが飛び立つ。
一応、五村を目指す。
少ししたら急遽、視察を取り止めて大樹の村に進路をとる。
大樹の村に到着した時は夜だった。
クロの子供たちが出迎えてくれた。
ありがとう。
そして、いまさらだが数が凄いことになっているなぁ。
俺たちはハクレンの背中から荷物を降ろし終えると、ハクレンが人間の姿に戻る。
「助かった。
ありがとう」
「気にしなくていいわよー、夜に返してもらうから」
えーっと……
何のことかなと 惚(とぼ) けてみた。
「私にも二人目」
……お手柔らかにお願いします。
そして、ガット。
悪かったな。
次はナートを連れて行こう。
「いえ、お気遣い、ありがとうございます」
本来なら、ガットの奥さんであるナーシィやその子のナートも連れて行きたかった。
ただ、ナーシィが鉱山咳の心配があるので辞退。
一応、ルーが治療しているので大丈夫なのだが、安全の為だ。
ナートは同行しても良かったのだが、母親が行かないので残ることを選んだ。
まあ、ナートにすれば見知らぬ村に行くことになるわけだからな。
無理にとは言えなかった。
ハウリン村に行く話が急だったしな。
今度、時間をかけて調整しよう。
最後にセナとセッテ。
今日はご苦労様。
うん、いい笑顔だ。
やはりハウリン村に行ってよかった。
おっと、ここは寒い。
魔法で防御していても、万が一がある。
暖かい場所に移動しよう。
ちょっと忙しい一日だった。
ちなみに。
ガルフの息子の幼馴染は、クロの子供たちによる出迎えで気を失っていた。
久しぶりだから、忘れていた。
クロたちはそんなに怖くないのに、初見の人は怖がるんだよなぁ。
目を覚ましたら謝っておこう。
あと、ガルフの息子。
そんな顔をされても俺が悪いんじゃないぞ。