作品タイトル不明
光るピンポン球
ルーが、魔法でパスタ生地を細長く切った。
前ほど疲れていない。
新しく組んだ魔法の成果らしい。
負けっぱなしじゃないその姿に、俺は素直に感心。
ティアもフローラも褒めている。
褒めているというか、どうやったかを聞き出そうとしているな。
その横で、ザブトンの子供たちが糸でパスタ生地を細長く切って俺に見せてくれているのだが……あ、うん、すごいぞ。
でも、今はタイミングが悪い。
ルーに見られる前に隠すんだ。
朝、俺が畑を見回っている時、珍しく酒スライムがやってきてサトウキビを欲しがった。
構わないが、どうするんだ?
俺はサトウキビを一本……このままじゃ大きいな。
三十センチぐらいの大きさにカットして渡した。
それで大丈夫か?
問題ないと酒スライムはサトウキビを持って屋敷に向かった。
……
まさか、自分で酒を作るわけじゃないよな?
気になったので、俺は酒スライムを尾行した。
酒スライムは屋敷に入り、そのまま中庭に。
大樹のそばにある 社(やしろ) の前に到着すると、そこで周辺警戒。
なにをやっているんだ?
酒スライムは、サトウキビを持ったまま社の後ろに回った。
?
どうしたのかと覗いたら、そこには数匹のザブトンの子供たちと……
ピンポン球ぐらいの発光する物体?
酒スライムは持って来たサトウキビをザブトンの子供たちにパス。
ザブトンの子供たちはサトウキビの皮を剥き、その物体に与えていた。
……
虫?
ちなみに、俺の横や後ろには雑誌サイズのザブトンの子供たちや、クロの子供たちがいて、一緒にその様子を見守っている。
隠れて生き物を飼育している……ということかな?
ほっこりしつつ、どうしようかと思ったら……
酒スライムが俺たちに気付いた。
酒スライムは一瞬、固まったあと……俺と光る物体の間に陣取った。
光る物体のそばにいたザブトンの子供たちもそれに続く。
待て待て。
庇(かば) っているのはわかるが、俺が敵認定なのはなぜなんだ?
別に畑に害を及ぼしたりしないんだろ?
……
及ぼすの?
違う?
大丈夫?
よーし。
では、話し合おう。
なぜ隠したんだ?
俺の質問に、ザブトンの子供の一匹が足を上げた。
上じゃなく前に?
その足の向けられた先に……ルーがいた。
「知ってる?
妖精の羽って、薬の材料になるのよ」
あ、うん、隠す理由がわかった。
酒スライムが俺の足にすがりつく。
わかったわかった。
俺が守るから。
「貴方。
妖精って、畑にイタズラするのよ」
……
酒スライム、どういうことかな?
こいつは違う?
絶対にイタズラさせないから?
むう。
俺が少し思案している間に、ルーは仲間を呼んだ。
ティアがルーの横に並ぶ。
「妖精の羽ですか……貴重ですね。
いい薬がたくさん作れます」
いつもは可愛いルーとティアの顔が、怖くみえる。
だが、酒スライム側も負けていない。
先ほどまで、妖精のそばにいたザブトンの子供たちが援軍を連れて来た。
「うわっ、なにこれ?
光ってる」
アルフレート、ティゼル、ウルザ……
「パパ、これ、新しい住人?」
……
勝負はあった。
妖精。
まだ小さいからピンポン球のような感じだが、成長するとサイズは小さいけど人型になったりするらしい。
「羽って言っていたが……みえないけど?」
「今の状態の妖精を、妖精の羽っていうの……」
ルーが未練がましく、薬品を入れたガラス 瓶(ビン) を揺すっている。
なんでも、その瓶の中に妖精の羽というか、ピンポン球を入れて漬け込むだけで凄い薬ができるらしい。
「やらないが、薬の効果は?」
「他の薬の触媒になるだけだから、これだけじゃ意味はないわよ。
その後、加える材料で打ち身、疫病予防、長寿、美肌維持、毛生えの薬になるわ」
なるほど。
……
打ち身と疫病予防と長寿と美肌維持と毛生えを並べないでくれるかな。
でも、疫病予防には 惹(ひ) かれるな。
「妖精の羽がないと作れないのか?」
「他の方法もあるわよ。
でも、妖精の羽を使うと工程をいくつも飛ばせるから楽なの」
拗ねるルーの頭を撫でつつ、他の方法があるならそれでとお願いする。
疫病の危機があるならともかく、そうじゃないからな。
今回は、アルフレートたちの情操教育用に譲ってくれ。
俺がルーの頭を撫でていたらティアが頭を差し出してきた。
「私も拗ねた方がいいですか?」
はいはいと俺はティアの頭を撫でた。
「ところで、妖精は何を食べるんだ?
サトウキビでいいのか?」
「甘い物ならなんでも。
花畑で放し飼いでいいんじゃないかな?」
では、そのように。
……
あれ?
それならなぜ酒スライムはサトウキビを欲したんだ?
花畑に連れて行けば……
あ、蜂たちが攻撃してくるのね。
なるほど。
後日。
花畑に小さな箱に丸い穴を開けた妖精の家を設置した。
低い?
わかったわかった。
土台の上で……これぐらいで構わないな。
高さは問題ないけど、数が足りないと。
うん、それは見たらわかる。
どこから来たのか、花畑には妖精が十匹……匹でいいのかな?
飛び回っていた。
蜂と喧嘩しないようにな。
喧嘩した場合、俺はハチミツを作ってくれる蜂側につく。
ん?
成長すれば、役に立つ?
わかった。
信じよう。
俺は屋敷に戻り、足りない分の妖精の家の製作を開始。
アルフレートやティゼル、ウルザも手伝ってくれるのか。
ありがとう。
だが、工具で遊んじゃ駄目だぞ。
危ないからな。
うん、いい返事だ。