軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

五村の産業発展計画 第一弾

俺は 五村(ごのむら) のヨウコ屋敷で行われる非公式の会議に出席した。

メンバーは、俺の他に五村村長代行のヨウコ、エルダードワーフのドノバン、ハイエルフのリア、獣人族のガット、文官娘衆が二人、五村の文官筆頭のロク。

そこに、先代四天王の二人、エルフの樹王と弓王、マイケルさん、マイケルさんの息子のマーロン、現四天王のビーゼルを加えた十五人で行われる。

議題は、五村の産業発展計画に関して。

初期はこれを俺とヨウコに文官娘衆だけで進めていたのだが、やはり色々と情報不足。

特に現場の声が曖昧なのは困る。

皮算用では指示もしにくいと、関係者を増やしていった結果だ。

会議の度にマイケルさん、マーロン、ビーゼルが集まってくれるのは感謝しかない。

大きな円卓を囲み会議はスタート。

文官娘衆の一人が司会を担当し、会議を進めていく。

「以前より懸念されていたお酒の問題は、解決方向に向かっております。

これにはマイケル様のゴロウン商会にはご協力いただきました。

ありがとうございます」

「いや、私たちにも利益のあること。

お気になさらずに」

マイケルさんが遠慮しながらお茶を飲む。

お酒の問題とは、大樹の村で作ったお酒を、五村でどう扱うかだった。

俺の管理下にある村であるなら、他の村と同じく自由に飲んで欲しいのだが。

いかんせん人数が多過ぎる。

また、大樹の村の住人をはじめ、一村、二村、三村、四村の者から五村は別扱いが妥当じゃないかという意見と空気。

個人的には無責任かもしれないけど、別扱いの方がありがたい。

うん、万人規模を背負えと言われても困る。

ヨウコがいてくれて良かった。

脱線。

五村でのお酒の扱いの前に、定められたのが大樹の村で作られるお酒の 等級(ランク) 。

ワイン、蒸留酒、果実酒、米酒、麦酒……

現在、多種多様な酒がドノバンの管理下で作られている。

同じ種類の酒でも、完成度が明らかに違ったり、原料の配分が違ったりと、まとめて同じ扱いにはできない。

なので俺は酒の種類ごとに等級をつけて欲しいとお願いした。

「美味さで、つければよいのか?」

ドノバンの質問に俺は首を横に振る。

「それは後だ。

まずは手に入りやすさ……生産性で大きく等級をつけて欲しい」

生産性が高い、普通、低いの三段階。

“一等”“二等”“三等”と名付けると一等の方が美味いと勘違いする者がでるかもしれないので“山”“森”“木”と呼称する。

“山”が生産性が高く、“森”が普通、“木”が低い。

「なるほど」

後々、細分化したいとは考えているが、今はこれでいい。

「ああ、全ての酒に等級をつける必要はないぞ。

販売用の酒だけで構わない」

「承知した」

こうして販売用の酒に等級がつけられた。

五村の酒の扱いに戻る。

五村では酒を販売しようという方向になった。

問題となるのは値段。

現在、売買契約があるのはマイケルさんとビーゼル。

二人に売っている同じ値段で五村に販売しても、なかなか買えるものではないだろうと。

では、値段を下げる?

その提案をマイケルさんとビーゼルにしたところ、困るとの返事。

大樹の村から購入している酒は、主に貴族への贈り物として活用。

価値が下がるのはあまり好ましくないと。

以後、二人は会議に出席することに。

二人の主張は、酒の価値を落とさないこと。

五村で安く販売しても構わないが、五村で仕入れた業者が余所で売るのは困る。

俺は二人の主張が、ライバルが増えることで価値が下がることかと思ったけど、違った。

「絶対に、混ぜ物をして酒の質を下げます」

「混ぜ物を飲んで、その程度の味かと思われるのは困りますね」

なるほど。

水増しか。

しかし、これはどうあっても避けられないだろう。

商売人は少しでも高く売りたい。

量を誤魔化すのは第一歩だ。

対策できるのか?

俺の疑問に、ヨウコが回答をくれた。

「先にこちらで混ぜ物をし、名を変えて売ればよい」

その提案に俺はなるほどと思ったが、ドノバンが良い顔をしなかった。

ヨウコが訂正。

「混ぜ物という言い方が悪かった。

酒に酒を混ぜるのだ」

「む」

「別に驚く方法ではなかろう。

酒の味を均一にする為、各村で造られたワインを混ぜるのは普通に行われている」

そうなのかと俺がマイケルさんを見ると、頷かれた。

ビーゼルも頷く。

その方法をとるので、造っている村にはワインの良し悪しではなく生産量で金が払われる。

これが一般的だと。

なるほど。

大樹の村以外で、酒がそれほど美味いと言われないのはそのせいか。

美味しく造っても評価されないなら、誰も努力はしない。

大樹の村以外で美味い酒というのは、自家生産分か、ワインを造っている領地の貴族が保護して、他の酒と混ぜていない酒だと。

「それと比べても、大樹の村の酒は美味すぎます。

なるほど、ヨウコ様の提案は、大樹の村の酒と魔王国で流通している酒を混ぜるのですね」

「量も増えて悪くなかろう」

「待て!」

ヨウコの提案に、ドノバンが明確に反対を示した。

「美味い酒と美味い酒を混ぜるのは構わぬ。

不味い酒と不味い酒を混ぜるのも構わぬ。

だが、美味い酒に不味い酒を混ぜるのは悪だ」

「では、どうする?」

「混ぜるのは大樹の村で作られた酒同士。

ワシが管理する」

そうなった。

これが春先ぐらいの話。

“山”ランクの酒を中心に混ぜられ、生み出されたのが“ 五村酒(ごのむらしゅ) ”と“五村酒改”

共に酒の種類はワイン。

大樹の村で作っている作物から考えれば、自然にそうなる。

二種類あるのは、ドノバンが生産性と味で判断に悩んだからだ。

“五村酒”は生産性が高く、味がイマイチ。

“五村酒改”は生産性が普通、味も普通。

味がイマイチ、普通と言っているが、マイケルさん、ビーゼルは特に問題ない味と評価している。

この酒を、五村祭で安く販売することとなった。

「酒の味を多くの者が知っていれば、さらなる混ぜ物はある程度、防げるであろう」

というドノバンの提案だ。

俺としてはタダで配るつもりだったのだが、酒をタダで配ると全部飲まれると有料を薦められた。

「他の酒を扱っている店の商売の邪魔にもなりますから」

納得。

小さなコップ一杯で、中銅貨一枚。

配る量もある程度、制限された。

売られたのは“五村酒改”。

これが五村の酒問題解決の一歩目。

二歩目は、祭りの後で“五村酒改”を求める者が出るだろうから、その者たちに販売を開始する。

“五村酒改”は少量販売。

同時に、“五村酒”を販売する。

五村での酒の流通量はこれで、なんとかなるだろう。

まあ、“五村酒”“五村酒改”以外にも、他から仕入れている酒もあることだし、酒不足で不満があがることはないと思いたい。

この時、マイケルさんの提案で小細工が一つ。

業者向けの販売は競り方式で。

そして、マイケルさんのゴロウン商会が一定値以上をつけて落札をする。

どういう事かと思ったが、つまり、酒の値段をゴロウン商会の落札価格を標準とする小細工だ。

それ以上の値で他が競ってきたら、ゴロウン商会は手を引く。

そういう決め事。

俺は不正じゃないかと思ったが、ごく普通に行われているらしい。

まあ、競りに参加する者全員が協調すれば、最低値で買えるからな。

その辺りの法整備が整っていないから、仕方がないか。

うーむ。

これで終わると、ただの大樹の村の酒の販売になってしまう。

三歩目がある。

それが五村での酒造り。

資金は、“五村酒”“五村酒改”を販売した金。

“五村酒”“五村酒改”で酒の味を周知させ、五村での酒造りを推奨していく。

この辺りがあるから、ドノバンが協力してくれた面もある。

将来的には、大樹の村の酒と五村の酒を混ぜた“真・五村酒”を生み出すという野望。

五村だけの生産量では、後々問題も出てくるだろうしな。

まあ、三歩目は未来の話。

とりあえず、二歩目までは順調に進行中。