軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

転移門

「お久しぶりでございます。

ヒラク村長」

ビシッとした執事服を着た、初老の男性が俺の前で頭を下げる。

白髪をオールバックにまとめ、ピンと左右に伸ばしたヒゲがダンディ。

彼はゴウ=フォーグマ。

元太陽城城主補佐で、現在は四村の村長代行補佐の一人だ。

これまでは燃料節約の為に水晶体に意識を移していたのだが、やっと人間の身体に戻れたので挨拶に来た。

「想像していたより、年配なんだな。

もっと若いかと思っていた」

「男性は、ある程度は老けた外見でなければ信用されませんから」

確かに同じ能力でも、若い男性よりは初老の男性を選ぶか。

しかし、それだとベルは若い……

「我らの創造主は、メイドは若ければ若いほど良いと考える方でした」

なるほど……その創造主に関して、深く考えるのは止める事にしよう。

「他の者達も、そろそろ目を覚ます予定です。

目覚め次第ご挨拶に参りますので、よろしくお願いします」

「わかった。

四村はどうだ?」

「問題なく。

クズデン村長代行も問題なくやっています」

「それはよかった。

食料も大丈夫だな?

無理はさせるなよ」

「はい。

ありがとうございます。

大樹の村では何かありましたか?」

「こちら?

こちらは……特に変わりはないな。

いつも通りだ」

「いつも通りですか」

「ああ」

「外で大きな雪山が出来ているのは……」

「子供達が遊びたいって言うから、ライメイレンとハクレンが積もった雪をこれでもかと掻き集めた結果だな」

村の南側に高さ三十メートルの小山が出来ていたりする。

「山の中心は固めているから、埋まる心配はないぞ。

解けた雪は排水路を通って川に流れるようにしているしな」

抜かりはない。

「そうですか。

いつも通りですね」

そう、いつも通り。

「実は今回。

挨拶だけでなく、太陽城……村の名ではなく、建物としての名です。

そこで重要な魔道具を発見し、そのご報告に参った次第です」

「重要な魔道具?」

「はい。

扱いに関して、厳重にせねばならない物ですので村長にお任せしようと」

「どんな魔道具なんだ?」

「転移門です」

「……その名前からすると、移動用の門か?」

「はい。

二つ一組で運用される門で、設置した場所同士を繋ぎます」

「凄く便利そうだな」

「はい。

昔はそれなりに普及していたのですが、戦乱で大半が消失、もしくは破棄されてしまい……

今は皆無かと」

「もったいない」

「そうですね。

ですが、戦時中には危険な存在になりますから」

ああ、部隊や食料を転移門で移動させるとかすれば便利か。

いや、敵国の奥深くにこっそりと転移門を設置しておくとか……

考えると怖いな。

「しかし、平和な時には便利なものだろ?

戦争が終わった後に復旧しなかったのか?」

「扱いが難しいですし、片方の門を壊すと、もう片方の門も役立たずになりますから」

「余った門同士を繋げたりは?」

「研究されていた時期はありますが、不可能との結論が出たかと」

「そう上手い話はないか」

「そうですね。

それでその便利ですが扱いの難しい転移門を運用するのか、運用するならどこに設置するかを村長に決めて頂こうかと」

「んー……即断は難しいな。

みんなと相談したい」

「承知しました。

転移門の基礎知識として、転移門を運用する場合、門番が必要となります。

これは不心得者の利用を防止する為です。

先にも申しましたが、戦時中などでは危険な存在になりますので、即座に破壊できる体制を用意するのが普通です」

ああ、それで無事な転移門が今はないんだな。

「それと、四村のように移動する場所に設置する事はできません」

「そうなのか?」

「はい。

四村の移動速度をもっと落とせば、可能かもしれませんが……」

「一番設置したい場所なんだがな」

「そうですね。

残念です」

本当に残念だ。

「後は……一度設置すると再設置はかなり難しいとお考えください。

それと、設置後は常に稼動状態になります……

ああ、肝心な事を言っていませんでした」

「ん?」

「発見した転移門は、三組です」

それは確かに肝心な事だ。

転移門に関して、みんなに相談してみた。

「転移門は昔、村にありました。

確かに常に門番がいました」

ハイエルフの村や天使族の村には昔、設置されていたらしい。

ただ、今ではただのオブジェになっているとの事だ。

同様に、各地でオブジェになった転移門を見る事はできる。

なので外見的にはそれほど珍しい物ではない。

珍しいのは稼動する事だそうだ。

「稼動している転移門ですら貴重なのに、設置前の転移門って……失われた技術の塊なんだけど」

ルーが頭を抱えていた。

「一組、解析の為に分解するか?」

「そうしたいけど、自信がない……壊すだけになっちゃう。

あ、でも……うう」

存分に葛藤して欲しい。

その後、色々と話し合った結果。

まずは、大樹の村と温泉地を繋ぐのはどうかとなった。

温泉にすぐにいけるし、死霊騎士やライオンが門番になるだろうと。

悪くはないと本命になりそう。

ただ、距離が近いからもったいないとの意見もある。

ハクレンに乗せてもらえば、それほど時間は掛からないしな。

設置するならせめて、死の森の外にしようと。

ハウリン村、ドライムの巣、魔王の城が提案されたが、次に決まったのがシャシャートの街。

しかし、問題がある。

ゴウからも注意されたが、転移門は軍事利用すれば便利というか厄介。

それゆえ、扱いは国によって変わる。

魔王国ではどういった扱いになるのだろうか?

フラウや文官娘衆も、魔王国内で稼動している転移門はないらしく知らなかった。

さすがにコッソリと設置するのは気が引ける。

ビーゼルが次に来た時に相談しよう。

その後の問題は……転移門の存在をどこまで公開するか。

マイケルさんに知らせれば、村の物流は大きく改善されるだろう。

ただ、今まで利用していたラミア便の使用頻度が下がってしまう。

ラミア達に何か補償しないと駄目だろうか。

公開する事で村に来客が増えるのは構わないが、来る客全員が村に好意的とは限らないだろう。

そこをどうするか。

それと、転移門を設置するとして、大樹の村のどこに設置するか。

屋敷の中か、外か。

村の中か、外か。

防犯を考えれば村から遠い方が良いが、利便性を考えると近い方が良い。

考える事は多い。

「大樹の村の設置場所に関しては、考えなくても大丈夫じゃないですか?」

「ん?」

リアがお忘れですかと、説明してくれた。

「村の南に作っているダンジョンの中に設置すればよろしいかと」

「……あ、なるほど」

確かに。

防犯に最適の場所かもしれない。

ダンジョンの奥に設置すれば、隠し扉のショートカットが使える村の住人の案内がないと結構、厳しい。

初見殺しの罠とかあるしな。

ただ、トレーニング用のダンジョンと思っていたから、防犯を考えるとちょっと作り直さないといけないな。

「まあ、慌てて決める必要もありません。

よく考えましょう」

アンがお茶を配りながら、話し合いをなだめてくれる。

そうだな。

安易に決めず、よく考えてから設置しよう。

とりあえず、今日の話し合いで決まったのは、一組を今後の為に保存するという事だけ。

ルーがしばらく葛藤する事になった。

「旦那様」

ホリーに声を掛けられた。

「どうした?」

「その、少しお聞きしたいのですが……あの素敵な御仁はどなたですか?」

「素敵な御仁?」

ホリーの視線の先には、ゴウがいた。

……

「亡くなった夫ほどではありませんが、隙の無い立ち振る舞い。

シブい声。

是非、友誼を結びたく」

「紹介しよう」

「よろしくお願いします。

あ、少々お待ちを……身嗜みを整えますので」

初老の姿だからかな、ホリーとはお似合いだが……

おっと。

なんでもかんでも恋愛に結びつけるのはよくないな。

技術的な交流がしたいだけかもしれないし。

うん。

見守ろう。

だからフラウ。

ちょっと興奮した感じで見守るのは止めような。

でもってベル。

いつの間に来たんだ?

面白そうな空気を感じた?

冗談だよな。

ああ、転移門の輸送計画を持って来てくれたのか。

ありがとう。

転移門って……それなりに大きいんだな。

これ、どこにあったんだ?

太陽城はそれなりに調べたつもりだったが……

「ゴウの身体を保管していた場所とか見ました?」

「そう言えば……」

覚えが無い。

「あの時は、まだ関係が曖昧でしたから。

すみません。

次に太陽城……ではなく、四村に来られた際に、ご案内したいと思います」

「よろしく頼む」