軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

文官娘衆の武闘会

秋の収穫の後の武闘会は、例年通りに無事に終了。

うん、ちょっと舞台を三回ぐらい作り直す必要があったぐらいで、怪我人らしい怪我人はいないし。

開催期間がこれまで一日か二日だったのが、四日になってしまったぐらい。

許容範囲。

全然、許容範囲。

何も問題ない。

だから、そう頭を下げなくてもいいんだぞ。

今回の武闘会は、全て文官娘衆に任せてみた。

とても楽……ではなかった。

呼び出されては舞台を作り直し、喧嘩を始めたクロの子供たちの仲裁をし、酔っ払ったドラゴン族の相手をしつつと……

普段とあまり変わらない気がする。

というかクロの子供たち、俺に構ってほしいからって喧嘩の真似事は良くない。

君たちの仲の良さは知っているんだぞ。

あと、ギラル。

何があったか知らないけど、樽に顔を突っ込むのは止めてほしい。

酒スライムがおこぼれ狙いで喜んでいるじゃないか。

いや、本当に何があったんだ?

大抵はグラル関連だろうけど……

んー……グラルがヒイチロウの手を握っていたのがショックだったと?

おいおい、ヒイチロウはやっと一歳になったぐらいで……

一歳。

一年か。

時間が経つのは早いなぁ。

少し前まで、ハイハイしてなかったか?

気付けば、いつの間にか立っていたしな。

まあ、そんな相手に嫉妬するのは早いような気がするが?

娘を嫁に出す時になればわかる?

ははは。

ティゼルは嫁には出さないから大丈夫だ。

脱線。

文官娘衆はよくやったと思う。

今回の武闘会はちょっと想定外のことが多かった。

まず、来客。

いつも通りのドラゴン一家に魔王たち、それに始祖さん。

今回はマイケルさんは不参加。

シャシャートの街での仕事が忙しいらしい。

多分、ビッグルーフ・シャシャート関連だろう。

申し訳ない。

ドラゴン一家は、ドース、ライメイレン、ドライム、ドライムの妻のグラッファルーン、

それにハクレンの妹のスイレンと、スイレンの旦那のマークスベルガーク、二人の間の娘であるヘルゼルナークがやってきた。

魔王たちは、魔王と娘のユーリ、四天王はビーゼル、ランダン、グラッツ、ホウと勢揃い。

始祖さんは、フーシュを伴なってやってきた。

ここまではいつも通り。

いつもと違ったのは、それぞれが新顔を連れてきていたことだ。

ドラゴン一家が連れてきたのは悪魔族の男性。

これまで来たことのあるグッチや、助産婦をしてくれた者たちではなく、なんというか……

こう、歴戦の将軍といった感じの無骨な男性だ。

すごく気合が入った感じだったけど、挨拶した後は穏やかだった。

武闘会では大暴れだったけど。

魔王が連れてきたのは、いかにも大貴族ですといった感じの老齢の男性が二人。

立場的には四天王の下らしいのだが、会話や態度からは四天王の上っぽい感じがする。

ビーゼルからこっそりと、先代の四天王の二人だと教えてもらった。

なるほど。

でもって、彼らの孫が三人、文官娘衆にいるらしい。

どう挨拶したものかと悩みながら近付いたら、土下座に近い挨拶をされた。

腰の低い人たちのようだ。

武闘会よりもスライムや馬と戯れている時間のほうが長かったので、性格も温和なのだろう。

今後とも、よろしくお願いしたい。

始祖さんが連れてきたのは、気の強そうな女の子。

見た目は十五歳ぐらいのお嬢様なんだけど、どこか他者を寄せ付けない雰囲気をまとっている。

始祖さんの紹介では、当然ながら普通のお嬢様ではなく、神の加護を得た聖女らしい。

場所によっては使徒とか、神の代行者とか呼ばれる存在らしい。

なぜそんな人を武闘会に連れてきたんだ?

創造神像を拝みに来たのか?

あの黒い岩を削って作った像。

それもあるけど、本命は違う?

彼女の高くなった鼻っ柱を折りに?

意味がわからないんだが……

まあ、気にしなくて良いというなら気にしない。

ただ、彼女、猫にめっちゃ怯えているぞ。

助けなくていいのか?

ウルザが猫を持って追いかけだしたぞ。

あ、クロの子供たちも参加しだした。

追いかけっこじゃないからなー。

これら新顔の存在が文官娘衆の来客管理を混乱させた。

グループにわけてテントに放り込み、酒と食事を出していた俺とは違い、席順だなんだと色々と考え込んでしまったらしい。

俺が適当過ぎるのだろうか。

色々と考えた席に、来客はほとんどいなかったから……俺のやり方で良い気もするのだが。

きっちり考えないと駄目?

特に偉い人がいる場合は重要。

人によっては席次を理由に戦争する?

そうかもしれないけど、それはそういったことを気にする人が来た時だけやれば良いんじゃ……ああ、新しく来た人がその辺りを気にするかどうかわからないか。

なるほど。

でもって、今回は南のダンジョンのラミア族と北のダンジョンの巨人族が、共に二十人ずつでやってきた。

しかも、かなり気合が入っている。

武闘会に向け、一年ほど鍛え上げた精鋭だそうだ。

君たち、そんなに好戦的だっけ?

ん?

ラミア族と巨人族がダンスを見せ合ってるな。

なんだかんだと友好関係を築いているらしい。

良いことだ。

え?

違う?

あれはウォークライ?

戦いの前の戦意高揚のダンス?

戦意高揚って……武闘会は明日なんだが?

まあ、楽しそうだからいいか。

二村のミノタウロスたちや三村のケンタウロスたちも参加しはじめたな。

ああ、前哨戦が始まってしまった……

本番前に怪我をしないように。

文官娘衆も、無理に止めようとしないほうが良いと思うが……あー、予選をやる予定の場所で暴れているのか。

仕方が無い。

移動してもらおう。

はい、全体に右に移動。

そっちで腕相撲をやってるドワーフたちも移動だぞー。

とまあ、一事が万事、こんな感じで予定を少しずつ狂わせていった。

しかも、いつもの一般の部、戦士の部、騎士の部の三部門とは別に、新たにインフェルノウルフの部、デーモンスパイダーの部、王の部を設立したものだから……

うん、キャパオーバー。

もちろん、文官娘衆も馬鹿ではない。

突然の来客も予想していたし、勝手に戦い始めたりする人たちが出るだろうことも想定していた。

それらを対処を考え、用意していたのだ。

足りなくなるであろう人手に関しては獣人族の女性たちに協力を要請し、トラブルの鎮圧担当にドライムに事前に相談していた。

しかし、それらを覆すというか……すべてを潰した出来事があった。

文官娘衆をまとめているフラウの妊娠の発覚。

というかお腹が目立つぐらいに大きくなっている。

冬の真ん中ぐらいには出産しそうだ。

本人に自覚がなく、ちょっと太ったかなぁと思う程度だったので発覚が遅れたのだ。

これには父親であるビーゼルは大歓喜。

しばらくまともな会話ができそうにない。

すでに名前を考え始めている。

フラウと揉めなければいいんだが……

さらに、獣人族の代表であるセナも妊娠が発覚。

最近、積極的だったからなぁ。

心当たりはある。

これには獣人族が大喜び。

ハウリン村にも連絡し、向こうではお祭り騒ぎらしい。

でもって、ラスティも妊娠が発覚。

ラスティは……普段の外見は中学生ぐらいなのだが、夜になると身体を成長させてくるんだよな。

絶妙に俺の好みに……

ルーに習ったのだろうか。

出産するまで妊娠した時の姿で固定されるので、ラスティは早々に発覚。

俺の精神を安定させるため、妊娠中はできるだけ大きい姿でいてもらうことになった。

ドライムとグラッファルーンはラスティの妊娠を喜んでくれたが、どう喜んで良いのかわからない感じだったな。

ドライムに同行していたグッチが手早く色々と手配してくれた。

お判りだろうか。

文官娘衆の要であるフラウが妊娠により離脱。

獣人族をまとめていたセナが妊娠により離脱。

そしてラスティが妊娠したことで混乱気味のドライム……

うん、それでも最後までやりきったのだから文官娘衆は頑張ったと言ってもいいだろう。

失敗じゃないぞ。

成功、成功だから。

泣かなくていいぞ。

フラウやセナを妊娠させたのは俺だしな。

総括でよくやった。

頑張ったぞ。

一般の部 勝者多数

戦士の部 優勝者 ドワーフのドノバン

騎士の部 優勝者 天使族のキアービット

インフェルノウルフ(オス)の部 優勝者 悪魔族のグッチ

インフェルノウルフ(メス)の部 優勝者 ザブトン

デーモンスパイダーの部 優勝者 コキュートスウルフのフブキ

王の部 優勝者 ライメイレン

ほら、この誤植っぽい優勝者リストからも武闘会の混乱具合がわかるだろう。

一般の部、戦士の部は順当だったけど、騎士の部は強者が潰しあった隙間を上手くついたキアービットの優勝。

強者のウノやマクラが別部門にエントリーしたというのもあるが、大したものだ。

インフェルノウルフの部とデーモンスパイダーの部は、これまで勝手にやっていたクロの子供たちの予選と、ザブトンの子供たちの予選がそのまま大会になった感じだ。

インフェルノウルフの部に関しては、クロの子供たちの強い要望に従い、男女別……オスメス別になった。

トラブルはそれぐらいかなと思ったのだが、残念ながら乱入者が出た。

インフェルノウルフに挑戦したいらしい。

なかなかの勇気。

一人出ると、俺も俺もと次々と参加し始め、混乱が加速した。

ザブトンが出たのは、混乱を収めるために協力してくれたのだろう。

王の部は竜族や魔王に各部門の優勝者を加えた部門のつもりだったのだが……

ライメイレンが強かった。

元は参加しない予定だったのだが、ヒイチロウが応援してしまったらしい。

一回戦のキアービット対ライメイレンは……まあ、語らないでおこう。

ともかくだ。

文官娘衆はよくやった。

頑張ったぞ。

ほら、約束していた褒賞メダルを渡そう。

頑なに拒絶され、罰を求められた。

そこまで気にしなくて良いのに……

まあ、罰が欲しいなら……

頼み事がある。

ビッグルーフ・シャシャートに関連してなんだが、人手が足りなくてな。

ああ、労働者ではなくてな。

ほら、前に相談した塾の先生役とか、宿の支配人役が欲しいんだ。

従業員の教育もマルコスとポーラだけでは限界があるだろうしな。

文官娘衆は貴族の娘さんたち。

そういったことに適した知り合いがいるなら紹介してもらいたい。

ああ、誰でもいいぞ。

ビッグルーフ・シャシャートで働いてくれるなら。

給金もちゃんと出す。

人数は……とりあえず十人ぐらいでどうだ?

おお、快く引き受けてくれるか。

頼んだぞ。

……え?

これは罰じゃないから、別の罰を?

自分に厳しいなぁ。

だが、お前たちに厳しい罰を与えない理由がちゃんとある。

お前たちを厳しく罰すると、途中で抜けたフラウとセナが気にするだろ。

だから今回はこれぐらいで。

各自、反省して次回に活かすように。

では、解散。