軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

太陽城の事情 クズデン ゴウ ベル

俺の名はクズデン。

太陽城を占領した英雄クズーポンを曽祖父に持つ悪魔族の男。

と、誇ってみたところで誰も聞いていないので空しい。

俺の仕事は部隊長。

悪魔族六十人と夢魔族二百人の取り纏めにある。

まあ、クズーポン様からお爺ちゃん、お父さんと代々引き継いできただけだ。

現在、太陽城内に閉じ込められており、外部の情報は皆無。

不安がないかと聞かれても困る。

子供の頃からこの環境なので慣れているというか、これが普通だと思っていた。

年配の者だけが不安を持っている程度だ。

ただ、そういった者は自分から夢魔族に頼んで、長く寝るようにしている。

夢の中なら、そういった不安も感じないで済むからだ。

夢魔族から、あまり長時間夢に浸らせると現実で生きていくのに支障がでると警告を受けるが、どうしようもない。

本人の問題だ。

夢魔族には申し訳ないが、よろしくお願いする。

俺の毎日は変わらない。

朝、見回り。

外壁のチェックを怠ることはできない。

魔物や魔獣を甘く見て痛い目に遭うのは遠慮したい。

昼、農作業。

ダンジョンイモは暗所でも育つ利点がある。

収穫量も悪くない。

難点は味らしいが、生まれた時からの主食だ。

特に不満は無い。

夜、太陽城を名乗る水晶石との会議。

俺は居場所の太陽城と区別するため、太陽城様と呼んでいる。

お爺ちゃん、お父さんから悪い方ではないと教えられている。

城内の大半の場所を畑にすることを認めてくれたのも彼とのこと。

俺たちの指導者的な人だ。

ただ、褒めるところはしっかりと褒めないと拗ねる面倒臭さがあるのが弱点だ。

毎日のことを毎日のように過ごすだけ。

そう思っていたが、その日は違った。

なんと太陽城の進路が大きく変わったらしい。

正直、どこをどう飛んでいるかわからないし、俺たちにはどうしようもないので伝えられても困る。

返答に困った時は褒めておけとお父さんに言われていたので、褒めた。

「きっと、良い方向に進んでいるのでしょうね」

進路の方向と、今後の未来的な方向を掛けたナイス褒めと自画自賛。

しかし、太陽城様からの返答は予想外だった。

「クズさん。

残念ながらこの進路変更は古の契約に従ったもの。

我の意向は関与していない」

「えーっと……?」

「この古の契約は、太陽城が人間の味方をするためのものだ。

つまり、これから向かう先はクズさんたちにとって悲劇の地となる可能性が高い」

「え?

ま、マジ?」

「嘘を言ってどうする。

予定では八十七日後に到達予定だ。

それまでに覚悟を決めておけ。

できることなら戦闘訓練もしておくように」

「そんな」

こんなこと、俺だけで受け止めれるワケがない。

悪魔族、夢魔族全員で太陽城様の話を聞く。

会議に何日も費やした。

当然ながら、事態は改善しない。

いや、悪化した。

太陽城様の言葉は過激になり、目的地に到着したら俺たちは全滅すると言われた。

そこまで言われたら覚悟を決めるしかない。

残り少ない日数に戦闘訓練。

戦闘訓練ってどうやれば良いんだ?

武器は……使い方がわからない。

お爺ちゃんから危ないから触っちゃ駄目と言われた魔道具類を持ち出そうとしたが、さすがにそれはと太陽城様に止められた。

とりあえず、やれることをやるだけだとみんなで城内をランニングした。

汗をかいた後の食事が美味しい。

……

時間の進みは残酷だ。

あっと言う間に、到着日まで一桁になった。

太陽城様が特別にと目的地を見せてくれる。

森の中にある村のようだ。

人数は太陽城にいる悪魔族、夢魔族を合わせた数の倍ぐらい。

絶望。

しかし、太陽城様は俺たちを励ましてくれる。

そうだ。

やれるだけやろう。

太陽城様の提案で、宣戦布告をする。

上手くいけば、これで戦いを回避できるかもしれないとのこと。

でも、俺、宣戦布告とかしたことないし。

本を参考にしろ?

小さい時に読んでたヤツで良いのかな?

それなら得意だ。

太陽城様の前でリハーサル。

言葉をいくつか修正し、本番。

城全体が揺れる攻撃をされた。

太陽城様は即時に降伏を判断。

全面降伏で命を永らえろとの意見。

俺も同感だ。

戦う気は消滅している。

それからの数日は激動だった。

目的地の村からドラゴンが来訪。

ドラゴンに乗ってやってきたインフェルノウルフと紹介された角の生えた真っ黒な狼は、死神のような存在だった。

見た瞬間、あ、駄目だこりゃってなる。

大抵の者が気絶していた。

もちろん、俺もだ。

気絶から目を覚ませば、太陽城にいた魔物、魔獣は駆除され、俺たち悪魔族や夢魔族は解放されていた。

正直、解放の喜びはよくわからない。

生まれた時からそうだったからな。

ただ、恐ろしい存在の魔物や魔獣がいなくなったのは嬉しい。

それより怖い存在のドラゴンやインフェルノウルフがいるが……

まだ話が通じる。

怒らせなければ大丈夫。

え?

謝罪?

あ、最初の宣戦布告の?

はい、謝罪します。

ただ、その、礼儀作法を教えていただけると助かります。

村の代表、村長は寛大な方だった。

現在。

気付けば俺は太陽城の城主になっていた。

なぜだろう。

我の名はゴウ=フォーグマ。

太陽城の城主補佐の一人だ。

補佐筆頭は特別任務でお休み中なので、我が最上位。

というか起きているのが我だけ。

太陽城の燃料不足は深刻だ。

そして、それ以上に深刻なのは現状。

古の契約が発動している!

ドラゴン族と人間のいる場所への自動航行。

太陽城のコントロールが利かない。

我の権限では、無理。

補佐筆頭ならなんとかできるだろうけど……連絡不可。

詰んだ。

ヤバイ。

太陽城はなんとかなっても、ここで生活しているクズさんたちが殺される。

人間は悪魔族に容赦がないからな。

多少、時代が流れた程度でその辺りが変化しているとも思えない。

各地を飛んでいる時に集めた情報でも、戦争は各地で行われている。

昔よりも規模が小さいのは、文明的に後退したからに過ぎない。

……

太陽城にはオートで発動する魔法防壁が五枚ある。

これは燃料系が独立しているから、問題なく展開できるはず。

乗り込まれても、太陽城に巣食っている魔物、魔獣が防壁になるだろう。

古の契約は、目的地に到着さえすれば解除される。

そこから急いで逃げれば……

戦闘予想期間は最大で二十日。

燃料が厳しいが全速力で移動すれば、なんとか逃げ切れるか。

となれば、後はこちらの出方だが……

向こうからのアクションを待つべきだろうか?

いや、ドラゴンがいると太陽城の古の契約を知っている可能性が高い。

味方だと乗り込んでくるか……

人間とドラゴンを牽制するために宣戦布告をして、それから交渉で時間稼ぎ。

太陽城を神人族が武装したことを知っていれば、十分に効果があるはず。

実際は魔物や魔獣に破壊され、使い物にはならないけどな。

ともかく、クズさんたちを助けるにはこれしかない。

宣戦布告の結果、五枚あった魔法防壁はアッサリと貫通された。

同時に、魔法防壁の発生装置に異常。

年代物だが、ポンコツではない。

防壁が突破された瞬間に新たな防壁を展開しようと頑張った結果だ。

お役目ご苦労と感謝。

……

そして相手の力の見誤りを後悔。

あの攻撃が連発できるとは思えないが、初撃でこっちの防御の要を潰された。

魔物、魔獣が頑張ってくれるかもしれないが……

城への直接侵入を防ぐ手段がなくなった。

「クズさん。

駄目だ。

降伏。

完全降伏。

全部、我のせいにしていいから謝罪で」

あとは直接交渉で切り抜けよう。

クズさん……

侵略者の子孫かもしれないが、この城で生まれたからには我が子も同然。

最悪、クズさんたちの命さえ助かれば城はどうなってもいい。

城主にしなくて良かった。

城主にしてたら責任問題だったからな。

村の代表者たちと交渉。

普通の人間?

他のメンバーは……あれ?

吸血鬼? 神人族? ドラゴン?

え?

なんだこれ?

……

あ、これクズさんたちに価値つけないとまずいかもしれない。

「クズさんが城主で。

はい、決定!」

私の名はベル=フォーグマ。

軽い挑発に乗って長々とお役目に縛られている馬鹿な女。

王め、人間だからもう死んでいるだろうから、墓か。

墓を見つけたら蹴飛ばしてやる。

いや、それだけじゃ気がすまない。

墓を粉にしてやらねば。

……

ああ、駄目だ。

後ろ向きの暗い感情が前に出る。

これでは駄目だ。

心を穏やかに。

来るべき日を待つのです。

そう。

予言の書ではあともうすぐ。

あと十年と七ヶ月先。

あと十年と七ヶ月先に解放の時が待っているのです。

長かった。

本当に長かった。

ん?

書斎に侵入者?

期待はしない。

ほら、やっぱり。

仕掛けに気づかず、出ていった。

そうよね。

もう何度も期待して、裏切られてきた。

慣れたわ。

でも心がザワつく。

本当にあの仕掛けに気付く者がいるのだろうか?

予言の書の的中率は確かに高い。

未来を見てきたと言ってもおかしくないぐらいに当たる。

しかし、外れないワケじゃない。

本当に十年と七ヶ月先に来るのでしょうか?

……

来なかったら、この太陽の剣を砕く。

私には触れないけど砕く。

どうあっても。

徹底して砕く。

私を縛り付けるこの憎しみの対象を。

……

あれ?

先ほどの者たちが戻って……

まさか……

仕掛けを……

嘘でしょ。

来た、来た来た来たぁ!

やった!

ウェルカム!

さあ、あと少しです!

そう、そこをまっすぐ……

ノウ!

なぜ、そこで引き返す!

いや、理解できる当然の用心。

ならばっ……

結界解除!

一度、解除したら再度の展開は不可能ですがこのチャンスは逃せません。

そして猫を被るのよ。

できるだけ優しい顔で出迎える。

太陽の剣を受け取ってもらえないと、駄目ですからね。

私の前に来た人は普通の人でした。

ですが、私にとっては彼は恩人です。

なにせ、私を縛り付けていた太陽の剣を受け取ったばかりか、破壊してくれたのですから。

清々しい。

心の中の闇が晴れていきます。

ふふふ。

予言の書の予言が外れたのも嬉しかったです。

十年ぐらいは誤差なのでしょうか?

ふふふ。

もう全部外れたら良いのです。

さて、そろそろここから出ましょう。

美しい太陽城が私を待っているのですから。