作品タイトル不明
新しい移住者とその他
ガルフの息子は、ハウリン村にいる時は採掘関連の仕事をしていた。
大樹の村では採掘はしないわけではないが、ハウリン村よりは少ない。
しかも、採掘現場が森の中なので、基本はハイエルフたちが頑張る。
となると……仕事に困るガルフの息子。
できることを考えに考え抜いた結果、ガルフの息子が始めたのが 石工(いしく) 。
石に細工を施すのが主だが、今は岩を割って石畳を作っている。
計画では、俺の屋敷から南にまっすぐの道と、居住エリアの主要道を石畳にするらしい。
現在、俺の屋敷から五十メートルぐらいが石畳になっている。
短い距離でも石畳があると、文明度が上がった気がするな。
しかし、ここ最近は延びていないが……大丈夫か?
手伝いが必要なら言ってくれ。
え?
今は武闘会の会場の床用の石畳を作っている?
あそこを石にすると、割れないか?
割れた方がカッコイイ?
……
確かに。
頑張るように。
予備を一杯作っておけよ。
ドラゴン一家というか一族は、帰ったり帰らなかったり戻ってきたりしていた。
うん、誰も帰ってない。
帰らない理由の表向きは、もうすぐ武闘会。
裏向きは、ヒイチロウを可愛がるためと食事と酒だ。
食材は渡しているが、料理はまだまだ大樹の村の方が良いらしい。
現在、助産婦としてやってきた悪魔族たちに、鬼人族メイドたちが料理を教えている。
ドラゴン一族のお世話は、その悪魔族たちにお任せ。
さすがに数が多いからな。
試作料理の消化と合わせ、丁度良いのだが……すでに一部は宴会の様相。
対価というか出産祝いを山のように貰っているのでスルー。
貰い過ぎな感じもあるしな。
またマイケルさんに海産物を頼むとしよう。
出産を終えたハクレンは……
これまで飛べなかったストレスからか、ドラゴン姿で飛び回っている。
飛び回るのは別に構わないが、村の近くで低空飛行は止めてほしい。
魔物や魔獣が驚き、暴れるから。
クロの子供たちやザブトンの子供たちが大忙しだ。
食料が備蓄できて、ありがたくはあるけど。
スアルリウ、スアルコウの双子の天使族はかなり村の生活に慣れたようだ。
ハーピー族たちとの連携が上手くなり、魔物や魔獣に反撃されて怪我をすることも少ない。
クロの子供たちやザブトンの子供たちも一安心。
まあ、まだ油断はできないみたいだけど。
キアービットは、グランマリアたちと同じように警戒任務についたり、ティアと同じように俺の補佐をしたりしている。
ある意味、なんでも屋だ。
とても優秀だ。
なので忙しい今の時期は、色々と頼られる。
今も文官娘衆から仕事を振られていた。
「この仕事、ティアもやってたの?」
「ええ、ティアさんもやっていますよ。
それが終わったら、こちらの仕事もお願いしますね」
「結構な仕事量に思えるけど?」
「無理なら構いませんよ。
ティアさんにお願いしますから」
「やらないとは言ってないでしょ。
これぐらい楽勝よ。
任せなさい」
頑張っているようだ。
でも、無理はしないようにな。
ケンタウロス族の移住が始まった。
ビーゼルの転移魔法で、まずは大樹の村で挨拶をする。
「魔王国男爵、フカ=ポロです。
我らを受け入れていただき、感謝します」
十歳の女の子が、四十人の大人たちを代表して挨拶をする。
「村長の 火楽(ひらく) だ。
よろしく。
こちらはコール子爵。
男爵たちの住む村の代表になる」
「魔王国子爵、グルーワルド=ラビー=コールです。
グルーワルドと呼んでください。
爵位呼びは絶対に駄目です」
「わ、わかりましたグルーワルド様。
よろしくお願いします」
「様も不要です」
「は、はい。
グルーワルドさん。
私の方も、フカとお呼びください」
「はい。
フカさん、よろしくお願いします」
グルーワルドとの顔合わせの次は、ケンタウロス族の世話役であるラッシャーシとの顔合わせ。
「ラッシャーシ=ドロワと申します。
よろしくお願いします」
「ドロワ……? ひょっとしてドロワ家の血縁で?」
「現当主の次女になります」
「ははっ。
これは御無礼を致しました。
ドロワ様におかれましては、ご機嫌麗しく……」
「若いのになかなかの礼儀ですが……
伯爵の娘よりも、子爵の当主のグルーワルドさんの方が格上ですよ」
「失礼しました。
え、えっと……」
「グルーワルドさん、ラッシャーシさんです。
ここでは爵位は役に立ちません。
気楽にお願いします」
「はっ。
よろしくお願いします」
「まだ堅いですが……まあ、いいでしょう。
それで、ここに来る前にクローム伯に色々と言われたと思うのだけど?」
「え……あ!
そ、村長様。
大変、申し訳ありません。
無礼の責は全て私に」
あまり脅さないでほしい。
ガチガチじゃないか。
若い子なんだから、もう少し優しく接してあげようよ。
彼女たちが村に来るに際して、土産を用意してきた。
本来なら移住先で冬を越すための食料を持ち込まなければいけないのだが、こちらが不要と断った。
なので手ぶらで良いのだが、それではと気が引けたのだろう。
昔、手土産のあるなしで対応を変えていたルーたちを思い出すと、その辺りはマナー的なものなのかもしれない。
土産は、荷馬車に積まれた二頭の羊。
頭数は少ないが、若いオスメスなので増やすことも可能だろう。
ありがたく受け取り、牧場エリアに放ってもらう。
……山羊や牛、馬と一緒だけど大丈夫かな?
山羊がいじめるかもしれない。
クロの子供の一頭が、そんなことはさせないという顔をしているので任せる。
頭数が増えたら三村で育てるようにしてもらおう。
新しい移住者たちの仕事としても、良いかもしれない。
新しいケンタウロス族の移住者たちには大樹の村の施設を案内した後、そのまま三村に向かってもらう。
ビーゼルの転移魔法を使わないのは、ビーゼルを休ませる意味と、途中の一村、二村での挨拶があるから。
ケンタウロス族たちの足なら、大変という距離でもないだろう。
そう予定していた。
怖がられるクロの子供たちとザブトンの子供たちとの顔見せは、すでに終わっている。
グルーワルドとの挨拶前に、ズラッと並んでいたのだ。
ラッシャーシからの提案で、最初にガツンとやっておいた方が従順になるからと。
別にクロの子供たちやザブトンの子供たちとの出会いがガツンとやることにはならないとは思うけど、従った。
うん、正解だった。
個々にパニックを起こされるよりは、最初に一斉の方が良いよね。
そして、それが済んでいるから予定通りにいけると思ったのだけど……
ハクレン、ラスティ、グラルがドラゴン姿で飛来してきた。
新しい移住者たちは世界の終わりみたいな顔で気を失った。
うーん、予定外。
そんな彼らを見ながらグルーワルドとラッシャーシが同じことを呟いたのが印象的だった。
「私も慣れたなぁ」
気を取り戻したケンタウロス族に、グルーワルドが説明。
「一番目と二番目に大きかったのが村長の奥さんで、三番目はこの前生まれた村長の息子さんの奥さんになる予定のドラゴン」
言葉の意味を理解してもらうのに、少し掛かった。
やっぱり、生まれたばかりの息子の奥さんになる予定というのが理解を阻んでいるのだろう。
そうだよな。
まだ喋れないのに、奥さん予定だもんな。
俺だって理解できない。
まあ、絶対に夫婦にならないといけないとかじゃないから、多少は気が楽。
ヒイチロウに限らず、息子には自由に相手を選んでほしい。
あ、自由だからって人妻とかは駄目だぞ。
モラルの許す相手でお願いします。
人数?
人数に関してはノーコメントで。
父親は見習わない方向でお願いしたい。
ビーゼルとは一旦別れ、復活したケンタウロス族と共に一村、二村を回って三村へ。
そこには建築が終わったばかりの新しい家が数棟。
冬のための衣類は……毛皮が中心になるけど十分な量があるから大丈夫だと思う。
まあ、足りない場合は連絡してほしい。
……
俺の話を聞いていたのは半数だった。
残りの半数は歓迎のために待っていた三村住民に知り合いを見つけ、駆け寄っている。
ラッシャーシが注意しますかと聞いてくるが、やめておく。
無粋だろう。
話を聞いてくれる者たちを相手に説明していく。
聞いてない人たちには、後でグルーワルドが教えてやってくれ。
大樹の村は武闘会に向けて、色々と場所を使っていて歓迎会を開く余裕が今は無い。
紹介は武闘会の時にやってしまおうと思う。
なので申し訳ないが、今は三村で小規模の歓迎会となった。
「え?
これ、一人分?
全部、食べていいの?」
「ちゃ、ちゃんとした食器だ……」
「パンも焼き立て……」
「肉だ。
肉があるぞ」
「果物も……」
小規模でも、一応は形をしっかりしないといけないので俺、ルー、ラッシャーシは参加。
ここまで彼らを連れてきたビーゼルも参加だ。
「ドラゴンたちといるほうが豪華だったんだろうけど、悪いな」
「いえいえ、こちらの方が落ち着きますから。
絶対にこっちの方が良いですから。
変な気は絶対に使わないでください」
よくわからないが、強く言われた。
「父ちゃん、今日は屋根のある所で寝れるの?」
「ああ、そうだぞ」
……
出し物らしい出し物もなかったが、笑顔の多い歓迎会だった。