軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

確認と移動

移住組には 一村(いちのむら) に住んでもらう。

そこで問題となるのが彼らの世話役の選定と、これまで一村の管理人をしていたニュニュダフネたちをどうするかということ。

とりあえず、移住組が来る前に話し合いが行われた。

話し合いに参加したのは俺を含めて四人。

ニュニュダフネ代表、イグ。

いつも通り切り株の姿だ。

ニュニュダフネ世話役、獣人族のマム。

そして、なぜか会議室の椅子に座っている酒スライム。

カウントするかどうか悩んだが、三人だと寂しいのでカウントした。

話し合いと言っても、基本はイグたちの要望を聞くだけだ。

それで、こうだった時はこうしたい。

こういう時はこんな感じでと色々なパターンを想定しながら、希望を聞いた。

ちなみに酒スライムは途中で飽きて、寝ていた。

そして移住組が到着した現在。

本格的にどうするか決定した。

今はその決定の連絡をし、質問を受け付ける場。

場所は宿の一階、歓迎会をやった広間。

参加者は俺、イグ、マムの三人と、移住組の二十人。

移住組全員が参加するのは、移住組のリーダーの希望だ。

今後の生活に直結する話なら聞かせておきたいし、何か意見が出るかもしれないからと。

隠すような内容はないので許諾。

互いに改めて自己紹介をした後、始まった。

「昨日の歓迎会で一部の方には伝えていると思いますが、貴方たちにはこの村の西にある別村、一村に住んでもらいます」

連絡のメインはマム。

俺がやろうと思っていたが、遠慮してくださいと笑顔で言われた。

「一村には多くの空き家があり、一家族に一軒の家を与えることができます」

マムの言葉に、移住組の者たちがおおっと感嘆の声をあげる。

「一村にはこちらのニュニュダフネ族が、村の管理のために住んでいます。

一村に住む者が来た段階でその役目を終える予定でしたが、二十名では住民として少ないと判断し、そのままニュニュダフネ族が生活を続けます」

「えーっと……それは共同生活をするってことでしょうか?」

移住組の一人が手を挙げた後に質問をする。

「共同生活といえばそうとも言えますが、ニュニュダフネ族の生活は人間と大きく違います。

簡単に言えば、家での生活よりも野外での生活を好みます」

「すみません、よくわかりません」

質問した者が恥ずかしそうに答える。

ニュニュダフネ族は珍しいのもあるだろうが、元居た場所に亜人系は少なかったらしい。

「失礼しました。

では、鶏を知っていますか?」

「ええ」

「牛は?」

「もちろん」

「同じ牧場で鶏と牛を放し飼いにする感じと思ってください」

その説明は解りやすいのだろうか?

「同じ場所で、牛は牛の生活を。

鶏は鶏の生活をするということですね?」

おお、理解したようだ。

凄いな。

「どちらが牛で、どちらが鶏だとは言いません。

種族が違うので生活習慣が違います。

その辺りを上手くやってください」

マムの言葉に、移住組の者たちは少し迷いながらも解りましたと返事をしてくれる。

「貴方たちの世話役……簡単に言えば、要望や不満を伝える窓口ですね。

それは私が担当することになりました。

よろしくお願いします」

マムが頭を下げると、移住組の者たちも頭を下げた。

世話役をどうするかで少し悩んだが、マムが積極的に手を挙げた。

同じ一村に住むのだから、今回の移住組も担当したいとのこと。

ニュニュダフネのイグからも賛同されたので、承認。

「当面、食料の供給は行いますが……皆さん、料理はできますか?」

マムの質問に、移住組の者たちが少し困惑。

理由を聞くと、それなりに料理はできるが、見たこともない食材が多くてどう料理すればいいかわからないらしい。

「わかりました。

しばらくは料理をできる人を借りましょう。

村長」

鬼人族メイドかハイエルフを何人か貸し出すことになった。

ニュニュダフネたちは料理を食べるけど、料理はしないからな。

「では、当面は貴方たちで共同生活をしてもらいます。

代表はリーダーさんのままで構いませんか?」

マムは連絡事項や確認事項を一つずつ、進めていく。

なんだかんだで時間が掛かった。

「では、連絡は以上になります。

何か質問はありますか?」

「は、はい」

リーダーが手を挙げる。

「村での生活に関しては大体、わかった。

ただ、俺たちはどんな仕事をすれば良いんだ?」

「こちらの希望としては農業ですが、全員に農業の適性があるとは考えていません」

フーシュからも、農業従事者を集めたとは聞いていない。

「色々とやっていただき、来年の春までにこういったことがしたいと決めてくれたら……と考えています」

「やりたいことによって、村から追い出されたりは?」

「そういったことはしません。

……しませんよね?」

マムが俺を見る。

しないと返事。

ただ、ニートは困るな。

働かざる者、食うべからず。

「難しく考えず、今年はここでの生活に慣れることを優先してください」

後はいくつか質問を受け、連絡質問会は終わった。

しかし、解散にはならない。

一村への移動があるからだ。

一村への移動。

なんだかんだで結構な距離がある。

徒歩で行くのは時間が掛かる。

それに、移住組の者たちは荷物がある。

荷物と言っても家具、食器、調理器具などはこちらで用意するとフーシュに伝えておいたので、各自の着替え程度だが。

それらを持って歩かせるのは、気が引ける。

問題は移動手段。

俺はラスティに頼んで運んでもらおうと思っていたが、マムに却下された。

大樹の村との距離感を教えておきたいからと。

そこで登場したのが馬車。

冬にサスペンションを搭載した馬車はマイケルさんに返したが、その後で三台の馬車が村に持ち込まれている。

サスペンションを搭載する改造はすでに終わっており、後はマイケルさんの所に送るだけなのだが、その際にハクレンの妊娠が発覚して送るのが延びている。

その馬車を使う?

いやいや、納品する物を勝手に使うワケにはいかない。

使うのは、その馬車を見て山エルフたちが村で自作した物。

そっくりに作るかと思ったが、各種改造がされており軽量頑丈高性能な出来になっている。

しかし、サスペンションはマイケルさんの依頼の馬車に搭載するので使われず、板バネを採用している。

板バネは簡単に言えば木の弾性を利用したスプリング。

技術的には存在するらしいのだが、マイケルさんの馬車には採用されていなかった。

魔法があるから、そういった技術が拡がり難いのだろうか?

特許とかないよな?

フラウやマイケルさんたちからそういったことを聞いた覚えはないし。

ともかく、板バネ搭載の馬車が一台。

これには御者席を含め、最大八人しか乗れない。

なので、馬車の後ろにリヤカーのような物をくっつける。

荷物の輸送用として積載量重視で作った物だ。

残念ながら、こちらにはサスペンションも板バネも搭載されていない。

しかし、十人は乗れるだろう。

これをケンタウロス族四人で引っ張ってもらう。

それでも足りない分は、馬とケンタウロス族に頼む。

つまり、移住組の二十人は馬車に八人。

後ろのリヤカーに十人。

ケンタウロスに二人。

分散して乗ることになった。

熱いジャンケン大会が行われた。

ケンタウロスたちの前だから、露骨に残念がったりはしないが……目尻の涙が隠せてない。

そんなに怖くないぞ。

俺はケンタウロス族のグルーワルドに乗ることになった。

馬にはマムと、切り株姿のイグが同乗。

周囲をクロの子供たちが護衛として取り囲むフォーメーションで、出発となった。

馬車とリヤカーが重いので、ゆっくりとのんびりした速度で進む。

馬車で各村を繋ぎ、楽に移動できるようにすれば便利かな?

定期馬車だ。

あー、でもミノタウロスたちは乗れないし、ケンタウロスたちは自力で走った方が速いよな。

やるとしても一村と大樹の村だけか。

……

誰が乗るんだ?

移住組の者達がそう頻繁に移動しないよな。

強いて言えばマムぐらいか。

それなら馬を貸せば済む話だしな。

定期馬車はしばらくお預けだな。

などと考えていたら、一村に到着した。

村には四人家族で住んでも十分に広いと思える家が並んでいる。

移住組の者たちのテンションが上がるのが感じられた。

しかし、目線を落としてビクッとしていた。

村にいるニュニュダフネたちの横に、一村を守っているクロの子供たちと、ザブトンの子供たちが並んでいたからだ。

並ぶと、結構な数がいるなぁと俺も実感。

「紹介します」

マムは笑顔で、互いの紹介を始めた。

「住む家は自由に選んでいただいて構いませんが、喧嘩はしないように。

希望がぶつかった時は話し合いで決めてください」

移住組全員に集合場所となる広場と井戸、トイレの場所を教える。

大丈夫だとは思うが、井戸とトイレの使い方の説明。

「排泄は必ずトイレで。

トイレの後はかならず手を洗うこと。

これは最重要です」

衛生面を考えると、当然のことだ。

病気で村人の大半が倒れるとか考えたくもない。

「村の中心にある大きな木。

あれはこの村のシンボルです。

イタズラはしないように。

また、これから生まれてくる貴方たちの子供にもしっかりと教えてください」

「あそこにあるのは?」

「社です。

祈りの場ですね」

「創造神様!

……もう一つは?」

「農業の神です」

マムが一通り説明を終えると、移住組の者たちはペアで住む家を決めるために行動を開始する。

即決するペアと、じっくり選ぶペア。

性格が出るな。

ああ、祈るのは後で良いぞ。

早く選ばないと良い家が取られる。

「村長。

あんな感じで大丈夫でしたでしょうか?」

「十分だろう。

これからも頼む」

「は、はい。

頑張ります」

「それとイグ。

これまで村の管理、助かった。

これからも頼むぞ」

「お任せを」

切り株姿でも頼もしい。

俺たちを運んでくれたグルーワルドたちは馬車を切り離し、リヤカーだけを引っ張って大樹の村に戻った。

移住組の当面の食料と、料理を教える者を運ぶためだ。

ついでにスライムを何匹か運んでもらう。

ニュニュダフネたちは排泄をしないので、一村にはスライムが少ない。

食べるだけ食べて排泄しないのは不思議だが……木になったり人の姿になったりと存在自体が不思議なので深く考えない。

そういったものと考える。

「あの家はニュニュダフネたちの家か?」

一軒の大きい家が、ニュニュダフネたちの家として先ほど説明していた。

「はい。

ニュニュダフネたちは野外生活を好みますが、物品の保管には家が必要ですから」

ニュニュダフネたちが物品の保管?

少し疑問に思ったが、褒賞メダルや褒賞メダルで交換した品のことだと気付いた。

家がないと、そういった物の保管ができないか。

「あと、衣服も」

なるほど。

ニュニュダフネが人の姿になると全裸スタイル。

村で生活するには困るので、人の姿の時は服を着用してもらうように頼んでいる。

着衣が習慣付いた者もいるが、大半が着衣が面倒なので木の姿か移動用の切り株スタイルでいる。

人の姿になれば美人なのになぁ。

一時間ぐらいでグルーワルドたちが帰還。

速いのは馬車を切り離したからか、遠慮がないからか……

スライムたちは元気そうだが、料理を教える役目を担うハイエルフが二人、少しぐったりしている。

リヤカーにもサスペンションか板バネを搭載すべきか検討しよう。

荷卸しをしていると、移住組の大半が住む家を決めたようだ。

なんだかんだと移住組は笑顔。

その笑顔を維持してほしいものだ。

マムも言っていたが、当面はここでの生活に慣れてもらうこと。

今日の予定は、夜に一村での歓迎会。

昨日の歓迎会と違うのは、昨日はまだ彼らはお客様だった。

俺は住む家を決めたペアを呼び、表札を渡す。

昨日の歓迎会で名前を聞き、今日のために用意した。

これを受け取ると同時に、彼らは一村の住人だ。

苦労も多いだろうが、頑張ってほしい。