軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

レース

「よし、行くか」

俺たちはぞろぞろと村の南側に行く。

と言っても村から離れるワケではない。

目的は、畑のある場所のすぐ南に作られた競馬場だ。

馬やケンタウロスたちが存分に走れる場所として作ったのだが、主に活用しているのはクロの子供たち。

山エルフたちがコースを拡張、増設、改造し、障害物を設置したりして難易度がアップしたが、クロの子供たちは喜んでいるようだ。

そして、現在。

クロの子供たちに獣人族の男の子たちが乗ってレース的なことをするのが、冬の外の遊びとなっていた。

競馬場の基本コースは、円を横に伸ばしたようなオーソドックスな形。

距離は……伸ばした直線部分が八百メートルぐらいだが円の部分の距離がわからない。

円周の計算の仕方ってどうだっけ?

俺が実際に走ってみた体感……一周、三千メートルぐらいに感じた。

ただ、山エルフたちの改造でアップダウンが激しい。

実際は一周、二千四百メートルぐらいだろう。

スタート位置は共通。

コースをどうするか、どちら周りにするか、何周するか、ゴール位置などでレース模様が色々と変化する。

毎回、同じ展開にならないのは獣人族の男の子たちの試行錯誤なのだろうか。

最初の頃はとにかく前へ出ることばっかりだったから、成長と思おう。

成長の切っ掛けは、クロの子供に乗る酒スライム。

体重差もあるかもしれないが、ゴール直前で鋭い差しを炸裂させて見学者たちを驚かせた。

足を溜めていたというヤツだろうか。

なんにせよ、獣人族の男の子たちには大きな衝撃を与えたらしく、それから色々と作戦を考え始めた。

「最終コーナーまでは二番手で良いわ。

最後の直線で外に広がって抜くのよ」

「先に前に出て、そのまま逃げ切れ。

とにかく逃げ切るんだ」

「だーっと行ってぐわっとすればいいのよ」

大人たちが色々と入れ知恵をしているのもあるが……

レースへの参加者が増えたのも多い。

クロの子供たちにすれば、ミノタウロス族が乗っても大丈夫らしい。

さすがにレースでは勝負にならないが。

今のところ、獣人族の男の子、酒スライム以外にハイエルフ、山エルフ、鬼人族メイド、リザードマンの子供が参加している。

参加は自由だ。

ただ、俺がつけた条件は二点。

レースに参加する女性はズボン着用と、クロの子供たちに無理をさせない。

今のところ、問題は起きていない。

問題とすれば、見学者たちだろうか。

コースを見渡せる高い観客席をエルフたちが作り上げている。

寒い冬への対策に、保温石が各所に設置されている。

ハクレンと一緒に温泉のある場所に採掘に行ったらしい。

さらには調理する場所も作っている。

といっても簡単なスープだが……

温まる。

まあ、これだけ見学者が集まるのは毎日ではない。

今日はちゃんとしたレースをするからだ。

コースをしっかり決め、審判も各所に配置されている。

決まっていないのは出走者。

というのも、選手登録があるわけじゃないからだ。

ただ、レースをすることは発表しているので各自が心に決めているだろう。

みんなの顔を見れば、参加者が足りないということはないと思う。

レースで賭けは行わないが、一等の者には俺が賞品を出すことになっている。

全員参加できないので褒賞メダルは出さない。

代わりに俺の手作りのお菓子が出る。

それで賞品になるのかと俺は首を捻ったが、周囲の声は大丈夫で統一された。

甘味は大事ということだな。

第一レース。

エキシビションレース。

コースはコーナー込みの約二千メートル。

出場者、駐在ケンタウロス族二人と、馬。

さらにレースの話を聞いて駆けつけたケンタウロス族のグルーワルドと他四人。

馬にはいつも世話をしている獣人族の女の子が乗っている。

俺を乗せている時よりも従順なのはどういうことなのだろう。

ちなみに、俺は馬に名前を付けている。

競馬をしない俺でも知っている超有名馬の名前を。

だが、馬は気に入らなかったようだ。

獣人族の女の子がベルフォードと呼び出し、今ではそう呼ばないと顔を向けない。

レースが始まった。

実は二千メートルの距離に決めるのは揉めた。

速度は馬の方が優れているが、持久力は圧倒的にケンタウロス族に軍配が上がる。

どちらかの圧勝ではレースが面白くない。

色々と調整した結果、二千メートルがベストと判断された。

ゴールは観客席の正面。

大歓声の中、グルーワルドと馬の競り合いとなり……

グルーワルドが勝利した。

そのままウィニングラン。

体力あるなぁ。

馬は乗せていた獣人族の女の子に慰められていた。

うん、尻尾や耳の動きからかなり怒っている。

次が楽しみだ。

第二レース。

これもエキシビションレース。

ミノタウロス族たちによる大荷物を引くレースとなる。

距離は四百メートル。

直線コースだがアップダウンがあり。

これは単独ではなく、チーム戦。

四人一チームで参加となり、六チームが出場となった。

そのチームの一つに、グラッツとロナーナが参加している。

頑張ってほしいものだ。

引く荷物はソリに乗せられた木材。

重さは平等にしたけど、微妙に差はあるだろうから開始直前にクジで決められた。

レース開始。

……

三メートル前後の巨体が協力してソリを引く姿は、なかなか熱いものがある。

かなり盛り上がった。

グラッツたちは惜しくも二位。

楽しそうだから問題なし。

第三レース。

クロの子供たちによるレース。

ただし、誰も乗せない。

参加者が殺到したので選別。

この後、誰かを乗せて走る予定の者は遠慮してもらい、さらにここ数年で生まれた者に限定し、なんとか二十頭に。

不満の声が上がったので、急遽新しいレースをこの後に差し込むことを決定。

ともかく第三レース開始。

距離は一周と少しの三千メートル。

一団となって進むかと思ったら、意外とバラける。

その中で先頭を競う二頭。

最後尾で足を溜める四頭。

どうなるのかと思ったら……

中ほどにいた一頭がするすると前に出ていき、最後の直線では独走だった。

見事な勝ちっぷり。

マサユキが出迎えたことから、彼の子供か孫かな?

……パートナーの一人ってことはないよな。

ともかくだ。

他の者と混ざると区別が付かなくなるので……首に布を巻いてやる。

おおっ。

速そう。

他の者が羨ましそうに見ている。

第四レース。

急遽、差し込んだクロの子供たちによるレース。

こっちは年齢制限無し。

参加頭数、二十二。

距離、コースは第三レースと同じ。

先ほどのレースを見ていたからか、牽制しあってバラけず、一塊となって行動。

最終コーナーを回って、ラストの直線でやっとバラけた。

抜きつ抜かれつの名勝負が繰り広げられた。

勝った者が、俺の前に自慢気にやってくる。

俺は褒めてやりながら首に布を巻いてやった。

第三レース、第四レースの反省点。

クロたちに色分けの布とかを付けないと、誰が誰だかわからないな。

第五レース。

ハーピー族による二百メートル走。

飛行禁止。

……

バタバタとした感じのレースだった。

わかっていたけど、走るのは得意じゃないみたいだ。

第六レース。

距離はコース一周の二千四百メートル。

獣人族の男の子たち、酒スライム、リザードマンの子供、ハイエルフ、山エルフ、鬼人族メイドがクロの子供たちに乗るレース。

本日の本命レースだ。

体重差で本命が酒スライム。

対抗が獣人族の男の子。

大穴が鬼人族メイド。

評判は気にせず、頑張ってほしい。

と、ここで乱入者あり。

クロの子供に跨り、腕を組むその乱入者の正体は……ウルザ。

ズボンを穿いて、やる気満々。

後ろでハクレンが応援している。

人数に余裕があるので、来る者拒まず。

でも、落馬……落狼したら危ないから草を詰めたヘルメットみたいな帽子を被ってもらおう。

レース開始。

いきなり飛び出したのがリザードマンの子供。

逃げ切るつもりだろう。

しかし、後方の者たちは落ち着き、ペースを乱さない。

ウルザは……最後尾だが、しっかりと集団についていっている。

コース中盤、鬼人族メイドが逃げているリザードマンの子供を追走。

集団が縦に長くなった。

しかし、鬼人族メイドは追いつけず、リザードマンの子供は逃げ続ける。

最後まであのペースで持つのか?

最終コーナー。

集団が一気に速度を上げ、先頭に襲い掛かろうとする。

だが、追いつかない。

タイムウォッチがあればわかったのだろうが、逃げていたリザードマンは飛び出した後、少しずつ速度を落として足を残したのだ。

だから、最後まで逃げ切れる。

リザードマンの子供は勝利を確信した。

甘い。

鬼人族メイドが追った時点でそのことに気付いた者がいた。

追った鬼人族メイドと、レース慣れしている獣人族の男の子たち三人。

そして天賦の才か野生の勘かウルザ。

鬼人族メイドは追走してしまったので、そのまま追いかけるしかなかったが……獣人族の男の子たちとウルザは後方でさらに足を溜めた。

逃げている先頭が足を残している状態で、後方がさらに足を溜めるって……作戦として駄目じゃないのか?

どうなんだろう?

ラストの直線。

後方から、獣人族の男の子たちとウルザがイナズマのように駆け上がってきた。

逃げていたリザードマンの子供が、慌てる。

ゴール前。

リザードマンの子供、獣人族の男の子たち三人、ウルザが並んだ。

リザードマンの子供が遅れる。

獣人族の男の子の一人がさらに遅れ……

ゴール。

なかなかの熱戦。

だが、勝負は非情。

勝者と敗者に分ける。

優勝は、獣人族の男の子。

ウルザは三着だった。

参加者全員に甘味を配りたくなるが、優勝の賞品なので自制。

頑張ったと褒めてあげよう。

まあ、俺が褒めるまでもなく見学者たちが褒め、反省会とか始めているけど……

甘味ではないが、何か料理を作ろうかな。

レースはまだまだ続いたが、平和な一日だった。