軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

帰り道その一

始祖さんの話では、巨人族のダンジョンの崩落した場所に繋がった穴の先は、東西に伸びる大きなトンネル。

西側はラスティの発見した黒い岩がある場所で行き止まり。

東側も同じように黒い岩がある場所に行きついたが、さらにトンネルは東に伸びている。

最終地点は死の森の東側にある山脈を越えた向こう側だったらしい。

トンネルは真っ直ぐ一本道だが、途中に何度か地上へ続く道がある。

その道は様々。

ダンジョンだったり、アースラットの巣だったり。

ダンジョンは死の森の内部に一箇所と、山脈の下に一箇所、そして山脈を越えた向こうに一箇所の計三箇所。

アースラットの巣は二箇所。

二箇所の巣にいたアースラットはハクレンや鬼人族メイドのアン、ザブトンの子供たちが倒したらしく、巣としては崩壊しているとのことだ。

「逃げたりは?」

「確認のしようがないよ」

「確かにな」

俺の疑問に、始祖さんが投げやりに答えてくれる。

本当に疲れているようだ。

そして、隙あらば温泉に浸かっている。

今も入浴中。

「ダンジョンの方は?」

「目に付くのは潰したけど、大したのはいなかったよ。

連中……彼女たちは空気穴を必要とはしないだろうから、偶然ぶつかった感じかな」

始祖さんの横で、俺も入浴中。

「なるほど」

「それで相談だけど、巨人族のダンジョンの安全を考えるなら……あの穴は崩した方が良いと思うよ」

「そう……だろうな」

ダンジョンを家と考えれば、裏口が広く開放されているようなものだ。

「黒い岩も気になるけど、一緒に埋めるのが一番じゃないかな」

「何か手はあるか?」

「んー……結構、深いから素直に崩しても地上に影響は無いと思うけど……

魔法は止めておいた方が安全かな」

「そうなると手作業か。

要所だけ埋める形にするか」

「そうだね」

「……そういや、アースラットは掘った土をどうしているんだ?」

「ん?

そりゃ、巣の出入り口から外に放り出して……ああっ、そうか。

丁度良い魔法がある」

「良かった。

じゃあ、任せた」

「頑張るよ」

始祖さんはそう返事をした後、上を向いて目にタオルを乗せた。

「あー……でも、しばらくはここを堪能させてね」

始祖さんは、本当に疲れているようだ。

「山脈の向こうにあったダンジョンは、ほぼ無人でした。

そのダンジョンの地上の出入り口の近くに廃村があり、始祖様が言うには天使族がアンデッドを退治した場所だとのことです」

食後に、アンが東側であったことを説明してくれる。

「かなり遠い場所まで行ったんだな」

「ええ。

ですが、トンネルが真っ直ぐだったのでかなり楽でした」

「そうか」

アンの傍で俺たちも頑張ったと足を上げるザブトンの子供たちを、良くやったと褒める。

聞けば、通信、荷物運び、戦闘とかなり活躍したらしい。

おっと……

「アンもお疲れ様」

「いえ。

ところでウルザですが……」

「ああ、村に住んでもらうつもりだ」

「では、私の方でお世話しても?」

「構わないが、トラインが拗ねないか?」

「かもしれませんが、愛情は平等に。

トラインも頼もしい姉ができたと思うでしょう」

「わかった。

トラインと揉めたら、何か考えよう」

「ありがとうございます」

アンが座りながら頭を下げたところで、向こうからウルザがやってきた。

ウルザはクロの子供に乗っている。

あの年ぐらいの子は、クロの子供たちに乗るのが普通なのだろうか。

「えへへ、あのねー、向こうで変なの見つけたー」

ウルザはアンを見つけると、クロの子供から降りてトテトテと走って抱きついた。

「変なのではありません。

村長の作った滑り台です」

その後にハクレンがついてくる。

ウルザがハクレンを嫌っているので近づけないようにしようとも思ったが、村で生活するならそれでは困る。

なので逆にハクレンにウルザの世話を頼んだのだが……

「べー」

ハクレンに舌を出すウルザ。

上手くいっていないようだ。

まあ、すぐには無理か。

ちなみに、滑り台は温泉から川に向かうウォータースライダーだ。

水量少な目の子供騙しだと思ったが、意外と皆の反応が良い。

子供の頃に滑り台を滑ったことが無いからかな?

村に設置すべきだろうか。

考えながらも、先ほどまでウルザを乗せていたクロの子供の頭をワシャワシャと撫でてやる。

「ご苦労だったな」

……数頭のクロの子供たちがウルザの傍にいった。

いや、別に乗せなくても撫でてやるぞ。

ハクレンたちと合流してから五日目。

俺たちは温泉を後にした。

予定では、イカダで川を下り、ラスティが火事を起こした森に行く。

「あと、合流してないのはマクラだけか」

居場所は判明している。

巨人族のダンジョンだ。

帰りに迎えに行くか、始祖さんに頼んで運んでもらおう。

各自、イカダか丸木舟に乗り込む。

合流してから出発までに五日も掛かったのは、全員が乗るためのイカダや丸木舟を作っていたからだ。

まあ、始祖さんが温泉からなかなか離れたがらなかったのもあるが……

間隔を空け、イカダや丸木舟が出発していく。

川の流れは速いが、丸木舟で遊んでいたエリアを越えると少し緩やかになる。

こういったのも悪くないな。

時々、川の中から一メートルぐらいの魚が飛びかかってこなければ。

大半がザブトンの子供たちの糸によって受け止められ、クロの子供たちの胃袋に入っていく。

生で大丈夫なのか?

火を通した方がと心配してしまう。

川の流れは時々速くなり、お約束の滝の存在を心配したりもしたが、グランマリアやキアービットが飛んで偵察してくれるので安心。

川の流れが変化するのは、水底の深さのせいか。

深いとゆっくり、浅いと速くなるようだ。

なるほど。

止まるレベルにゆっくりになったということは、ここはかなり深いということだな。

そして深いということは……

川の水面からでっかい魚が飛び出してきた。

おおっ。

三メートルぐらいありそうだ。

この辺りの主かな?

形はウツボのようだ。

そして、俺がウツボと思った理由は口。

どう見ても肉食。

観察したかったが、ルーが魔法で退治した。

見事だが、雷系を水辺で使うのはどうなんだろう?

クロやザブトンの子供たちは平気そうだが、俺は少しビリッとした。

「全員、無事か?」

なんとか大丈夫という返事と共に、ティアとアンがルーを説教していた。

特にアンが、怒っている。

ウルザが涙目だからだろう。

……

見回すと、リザードマンのダガと、獣人族のガルフが気絶していた。

そうか、無事じゃなかったら返事できないか。

反省。

川に浮かんできた魚を集め、食料に。

二匹目の主はいないようだ。

一安心。

なんだかんだで目的地に到着、イカダや丸木舟を川岸に上げ、森に移動。

見事な焼け跡。

それなりに広範囲だ。

そして、その中央に巨大な穴。

この穴の底に、ラスティが言っていた黒い岩があるのだろう。

まずは……

燃えた森に何かあるのか、見たこともない大型の獣たちがそれなりにこちらを見ている。

それらを退治しよう。

俺は【万能農具】のクワを構える。

ん?

……?

………………?

とりあえず、見たこともない大型の獣たちはハクレンやラスティに任せた。

俺は気になる一本の糸に注意する。

……

黒いモヤのような糸が、穴の底から伸びて……アンの傍のウルザに繋がっている。

よく解らないが、嫌な感じがする。

……

【万能農具】のクワでそのモヤの糸を耕した。

ザクッと切れた。

そしてモヤが霧散した。

うん、すっきりした感じ。

ウルザを確認。

モヤの糸は見えない。

ウルザはこれで大丈夫だろう。

なぜか、俺はそう確信した。

天使族のティア、グランマリア、キアービット。

「彼女がウルブラーザ様として……若返ってここにいることに問題はないかしら?」

「本気で本人だと証明すると、フルハルト王国、ガルバルト王国、ガーレット王国がザワつくかもしれません」

「あー……確かにそうね。

あの辺りって、英雄女王の国だったから」

「魔王と相討ちした後、分裂してできた国でしたね」

「全員が英雄女王の後継を名乗っていたかと」

「となると、本人が生存していると証明しちゃうと……」

「素直に譲っては……くれませんよね」

「無視も……してくれないでしょう」

「ドラゴンに吸血鬼、それに私たちもいるからね」

「大戦にならないにしても、面倒な事にはなりそうですね」

「村長が嫌がりそうです」

「……となると、私たちが黙っていないと」

「そうですね。

他の者とも話し合っておきましょう。

吸血鬼組は私が」

「では、私はアン、リア、ダガ、ガルフに」

「え?

私がドラゴン組?

ちょ、交代。

交代で」

「頑張ってください。

あと、ブルガ、スティファノにも忘れずに」