軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

アースラット

始祖さんの転移魔法は大勢を運ぶのには向かないそうなので、普通の転移魔法で送ってもらう。

黒い闇に身体を通せば、別の場所にいる。

不思議な感覚だ。

移動した先は森が少し開けた場所で、その中央辺りに岩が重ねられており、その岩の隙間のどれかが北のダンジョンの入り口なのだろう。

ダンジョンがあると思うと、岩が重ねられただけのものが何かの遺跡のようにもみえてしまう。

その岩の次に目に入るのが、大きな山。

辿り着くにはまだ少し距離があるだろうが、なかなかの迫力。

壁のようだ。

あの山は大樹の村からは見えないから、かなり移動したのだと実感。

魔法凄い。

そう思いつつ、妙な違和感を足元に覚える。

……

土かな?

この辺りの地面が柔らかい。

いや、硬いのは硬いのだが、大樹の村周辺ほどじゃない感じだ。

これぐらいなら、【万能農具】が無くても耕せそうだ。

問題は土に栄養があるかどうかだが……

森ができるのだから栄養が皆無ということはないだろう。

とりあえず、耕して……ああ、季節的にちょっと悪いか。

もうすぐ冬だしな。

などと考えていたら全員の移動が完了。

面倒なことは後回しにしたいが、そうもいかない。

「まず、挨拶をしよう」

初めての人と会うのは苦手ではないが、緊張する。

失礼のないようにしないと。

俺は前に来たことのあるハクレンとラスティに案内を頼もうと思ったら、岩の隙間からドドドッという大きな音と震動を感じた。

そして岩の隙間から出てくる巨人族たち。

見た目は……毛の塊?

手や足があるのはわかるが、全身が毛だらけだ。

子供向け番組に出てきそうなコミカルな感じ。

しかしサイズは大きい。

俺の頭を遥かに超える大きさ。

三メートルぐらい……いや、五メートルクラスもいる。

そんな巨人たちが、次々と岩の隙間から出てきてこちらに走ってくる。

なんだろう?

鬼気迫っている感じがするが……

彼らの目標は俺たちであることは間違いないようだ。

とりあえず挨拶をと思ったら、彼らは俺たちを避けるように二手に分かれて進み、俺たちの後方に回った。

え?

どういうことだと周りを見ると、アンが岩場を指差した。

巨人族が出た後に、人間を一飲みにできそうなほど大きな蛇。

ブラッディバイパー。

それに追われて逃げ出してきたのか?

前にハクレンとラスティが多く退治したらしいが、その生き残りか?

俺は手に【万能農具】のクワを持ち、構える。

と、ブラッディバイパーの様子がおかしい。

あれ?

ブラッディバイパーは巨人族たちを追いかけるでなく、その場で暴れる。

なんだ?

よくよく見れば、ブラッディバイパーの尻尾が千切れ、血を撒いている。

そして、その尻尾を噛み千切ったであろう巨大な口。

「アースラット!」

リアが叫ぶ。

「穴を掘るのが得意な魔獣で、下から襲ってきます!」

アースラット。

ラットと呼ばれているが、穴を掘るのが得意ってことはモグラか。

ともあれ、危険な生物であるようだ。

目の前で、ブラッディバイパーが食われた。

「しまった。

先に倒せばその肉を奪えた……」

ラスティが呟く。

そんな場合じゃないと思うが……

アースラットがこちらを見ている。

俺たちの後ろにいる巨人族が怯えたのが伝わってきた。

だからか、アースラットはこちらに向かってきた。

地面の上を。

真っ直ぐに。

なので、俺が【万能農具】のクワを振るう前に、他の者が攻撃した。

ハクレン、ラスティの打撃、ダガ、リアの剣撃、ルー、ティア、フローラの魔法攻撃。

うん、やりすぎ。

リアの剣撃が決まったところで、終わっていた気がするけど?

ともかく、これで危機は去った……で良いのかな?

クロ達が周辺に散り、警戒。

ザブトンの子供たちは岩の周辺を取り囲み、糸を張っている。

糸で封鎖するのではなく、出てくるのを察知するセンサーみたいなものだろう。

なんにせよ、これで一安心。

と思ったら、ザブトンの子供たちが騒ぎ出した。

各自警戒すると、不意に地面の一部が盛り上がり、クロの子供の一頭を突き上げて空中に放り出した。

そして盛り上がった地面から出てきた大きな口を広げ、空中に放り出されたクロの子供を丸呑みした。

……アースラット?

もう一匹いた?

いや、それよりも……

「うわわわわわわっ!」

パニック!

助けないと!

相手が【万能農具】のクワで……駄目だ。

丸呑みされたクロの子供まで一緒に土にしたら悔やんでも悔やみきれない。

斧? ナタ?

いや、アースラットは地面に潜って逃げようとしている。

その尻に向け、【万能農具】の鎌でぶっさし、地面に引っ張り出す。

俺の力では無理だが、【万能農具】の助けがあればやれる。

アースラットが驚いた声を出したように思えた。

弱肉強食の世界に申し訳ないが、クロの子供を返してもらう。

俺は【万能農具】の鎌で、アースラットの首を刎ねた。

そして、身体を裂いていく。

クロの子供を発見。

胃液にまみれて動かない。

手遅れだったか?

俺が不安になったぐらいで、ブルルッと身体を動かし、目を覚ました。

「おおっ」

良かった。

間に合ったようだ。

一安心。

そして気付く。

血塗れの自分の姿に。

うーん。

あ、助けたクロの子供が俺に感謝を示してくれているのはわかるが、互いの汚れが酷くなるだけだぞ。

「とっ、まだいるかもしれない!

油断は禁物!」

俺はそう言うが、俺以外は油断していなかった。

「……探知魔法で調べたけど、もういないみたいよ」

「私の方も同じ結果です」

ルーとティアが魔法で探知できるらしいので、それで調べてもらった。

結果、アースラットは合計で七匹いた。

場所がわかれば楽勝とばかりにハクレン、ラスティ、それにブルガ、スティファノが駆け出して処理してまわった。

そして、全てを退治した。

「アースラットは、もっと東の方に生息するのですが……この辺りに出るのは珍しいですね」

リアがそう教えてくれる。

東側になにかあったのだろうか?

なんにせよ、俺は汚れた身体を洗う為、始祖さんに頼んで村に帰還した。

短い旅だった。

すぐに戻るけどね。

「救援、ありがとうございます」

ダンジョンの入り口前で、巨人族が総出で頭を下げた。

毛の塊がいっぱい。

全員で五十人ぐらいだろうか。

なかなかの人数。

半分ぐらいは人間サイズだが……多分、子供なのだろう。

退治したアースラットの体内から、五人ほど救出している。

それにより、怪我はしたが死者は出なかったらしい。

良かった。

「それで、この辺りにアースラットは出ないらしいが、出た理由はわかるか?」

「それがその……」

何か言い難そうにしている。

遠慮だろうか。

「構わない、言ってくれ」

「その……前に……そちらのお二人が来て、ブラッディバイパーを退治された際にダンジョンの一部が崩落しまして」

巨人族の代表が、ハクレンとラスティをみる。

そういえば、そんなことをしたと報告を受けた覚えがある。

「崩れた場所を放置していては危ないので、少しずつですが整備をしていたのですが……」

まさか……

「その崩れた場所から知らない穴に繋がりまして、そこから出てきました」

あー……

なるほど。

なるほど、なるほど。

……

「大変、申し訳ありません」

俺は頭を下げる巨人たちに、頭を下げた。