軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

天使族の長

今、住んでいる場所は死の大地。

その死の大地にある森は死の森と呼ばれている。

死という言葉が軽く使われるには理由がある。

この森には鳥類がほとんどいないからだ。

鳥も飛ばない森、鳥も飛ばない大地ゆえに死の森、死の大地。

そして、鳥類がほとんどいない原因だが……

それはもう魔物や魔獣が鳥類を狩りまくるからだ。

俺は詳しくは知らなかったが、デーモンスパイダーと呼ばれる蜘蛛が最も鳥類の天敵として君臨している。

蜘蛛が鳥類の天敵って逆だよな。

さて、なぜ俺がそんなことを思い出しているかというと……

俺の目の前で、十人の天使族と三十人ぐらいのハーピー族? でいいのかな? 手が翼の者たちが、ザブトンの子供たちの糸によって落とされ、クロの子供たちによってボコられているからだ。

あ、ハーピー族でいいらしい。

えーっと……

「すみません、村長。

止めていただけると……」

グランマリアが、少し困った顔で頭を下げた。

俺はグランマリアの説明を聞いた。

心当たりのある天使族に声を掛けに行ったら、天使族の長の娘と遭遇。

この村のことを色々と聞かれ、ティアが俺の子供を産んだ話を聞いて激怒。

手勢を集めてここに向かった。

……

「つまり、敵か?」

俺の言葉に、治療が終わった後で正座させられている天使族とハーピー族がビクッとした。

「べ、別に敵意があったわけじゃ……」

天使族の一人がそう呟くのが聞こえたので返す。

「手勢を集めて、村に来たんだろ?

明確な敵意だよな」

「ひっ……」

現状、この場にいるのは俺とグランマリア。

目の前に一列に並んで正座する天使族と、ハーピー族。

その背後で、クロの子供たちがウロウロしている。

許可無く立ち上がったら、取り押さえるためにだ。

彼女たちの治療のために、ティアやルー、フローラを呼んだら、来たのはフローラだけだった。

なんでも、今は顔を見せない方が良いとの理由。

色々あるのかもしれない。

「グランマリア。

どうしてティアが俺の子供を産んだ話で激怒するんだ?」

「村長。

少しこちらへ」

グランマリアは正座している天使族たちから離れた場所に俺を連れていき、説明してくれる。

「天使族は、基本的に女性だけの種族です」

昔、そんなことをティアから聞いた気がする。

「でも、増えるためには男性が必要です」

そうだな。

「なので、他種族に男性を求めます」

ふむ。

「普通は人間なのですが、伝統だ試練だ審査だと色々とありまして……その考え方の違いが今回の件の発端です」

「……省略し過ぎだ。

もう少し、説明が欲しい」

「結婚相手が格式のある相手でないと天使族が低く見られて困るので厳しい試練を用意したら誰も突破できなくなってしまい、その試練を守る派と試練を無視する派に分かれて喧嘩しています」

「あー……」

「天使族の長の娘なので、試練を守る派です。

ティア様、私、クーデル、コローネはどちらかといえば試練を守る派でしたが、その……村長と」

「それで怒って、ここに突撃しに来たと」

「はい」

ちなみに、リザードマンやハーピーなど卵生の種族を従えるのは、身が穢れてませんアピールらしい。

なるほどなー。

「現状、彼女たちに何かしらの罰を与えて終わりにしてもいいが……」

ティアやグランマリアたちの立場を考えると、憚られる。

「その試練とはどんな内容なんだ?」

「え?」

「つまり、俺がその試練を突破して、天使族のパートナーに相応しければ問題無しだろ?」

「は、はい。

そうですけど……」

「空を飛べとか一時間水の中にいろとか、不可能系の試練なのか?」

「それに近いですが……村長なら大丈夫だと思います」

「そうなのか?」

「はい。

なにせ村長はティア様のお相手なのですから」

「ティアとお前たちのお相手な」

グランマリアが少しテレた。

まあ、その前に天使族とハーピーから謝罪の言葉が聞きたい。

「さて、えーっと……天使族の長の娘」

「キアービットです」

「キアービット。

お前たちがここに来た理由は理解した。

つまりは敵だな。

で、捕らえているからお前たちは俺のものだ。

俺がお前たちをどう扱おうが自由。

理解したか?」

「待ちなさい!

わ、私は天使族の長の娘です!」

「知ってる」

「私に何かすれば、天使族が黙っていませんよ!」

「グランマリア。

そうなのか?」

「そうでしょうけど……ティア様がいますから大丈夫かと」

「力関係はどうなっているんだ?」

「ティア様が天使族最強です。

その次に長がいて、その次ぐらいに私たちがいます」

「んー……すると、ここに十人の天使族がいるが……」

「クーデル、コローネと協力すれば勝てます」

「他に天使族は何人いるんだ?」

「総数では三百人ほどですが、連絡が取れて長と一緒に行動をするとしたら……五十人ほどでしょうか?」

「五十人。

ここにいるのが五倍と考えて……」

天使族一人に、クロの子供たちが二頭ぐらいで押さえ込めていた。

そこにザブトンの子供たちも加わると考えれば……

「負けはないかと」

「なら、どう扱っても問題無しだな」

「はい」

「待って待って待って!

て、天使族だけじゃないわよ。

色々と協力してくれる種族だって多いんだから!

私に手を出したら、千や二千じゃない数でここに攻めてくるわよ!」

「……なるほど」

「理解できたようね。

なら、さっさと私を解放しなさい」

いや、別に縛ってないけどな。

正座させているだけで。

まあ、クロの子供たちが見張っているようなものだから、拘束といえば拘束なのかな?

……

俺は一旦、キアービットから離れ、ハーピーたちの前に立つ。

「ハーピーたち。

お前たちは言われるがままに付いてきただけらしいな。

本当か?」

俺の質問に、ハーピーの代表らしき者が答える。

「はい。

その通りです」

「なるほど。

ならばキアービットではなく、グランマリアにつくなら許してやる。

食事も用意してやろう。

どうだ?」

「……我が忠誠、グランマリア様に」

練習でもしていたのか、全員がピッタリ同じ動作で頭を下げた。

「あ、あ、あ、貴方たちぃぃっ!」

「よし、約束通りお前たちは許してやろう。

立ってもいいぞ」

「ありがとうございます」

ハーピーたちは後ろのクロの子供たちが移動したのを確認し、立ち上がって身体をほぐし始めた。

正座はキツかったのだろうか?

「食事は……ああ、来たな。

簡単な料理しか出せなくて悪いが、どうぞ」

「いえ、感謝します」

ハーピーたちは鬼人族メイドの運んできた食事を食べ始めた。

一瞬、腕が翼だから大丈夫かなと思ったが、翼の真ん中辺りの爪で器用にスプーンを持って食べている。

また、意外と行儀が良いので驚いた。

鳥って食べ散らかすイメージがあったから。

勝手な思い込みをして申し訳ない。

さて次。

俺はキアービット以外の天使族を見る。

天使族はキアービットを含め、キラキラの美人揃いだ。

髪も時間をかけてセットしたのかな。

衣装も戦闘用の服装だが、無骨さよりも優雅さが勝る。

また、その背中に存在感を示す綺麗な白い翼。

まさに天使。

ティアやグランマリアたちには負けるけどね。(身内贔屓)

それに今現在、彼女たちの髪も衣装も翼もドロに塗れている。

せっかくの美人が台無しだ。

本人たちもその辺りを気にしてか、俺が見ていない時に手で服や髪の汚れを落とそうとしている。

「お前たちもキアービットに従っただけだろう。

素直に謝るなら、許してやろう」

……

反応なし。

ハーピーとは違うということだろうか。

「村長。

よろしいですか?」

「ん?」

グランマリアが小声で説明してくれる。

「ハーピーたちは、天使族に仕えられるならキアービットでも私でも構わないのです。

だからあの条件でこちらについてくれます。

ですが、彼女たちは長の娘であるキアービットを明確に裏切ると、この場は助かってもその後で困ります」

「緊急避難的な方便も言えないのか?」

「キアービットが目の前にいますから」

「なるほど」

では、手を変える。

「キアービットがこの村を攻めたのは許されない罪だ!

それゆえ、キアービットには十の罰を受けてもらう。

一つの罰でもかなりの苦痛だろう。

それを十も受けたら……悲しいことになってしまうかもしれない。

いや、きっと悲しいことになってしまうだろう」

俺の説明に、キアービットが露骨に青ざめた。

「だが、お前たちが一人謝れば、キアービットの罰を一つ減らそう。

二人謝れば、二つ減らそう。

三人謝れば、三つ減らそう。

どうだ?」

「すみませんでした」

キアービット以外が頭を下げた。

グランマリアがかなり驚いていた。

「まさか、キアービットの取り巻きがこうも簡単に頭を下げるなんて……」

「頭を下げても問題ない理由を与えればいい。

今回は、キアービットを助けるためという理由だ」

「よーし、キアービット以外は立っていいぞ。

食事も用意しよう。

風呂も使っていいぞ」

さて、あと一人。

キアービット。

どうしようかなぁ。

「すみません。

私が悪かったです」

俺がキアービットの前で悩んでいると、向こうが先に頭を下げた。

……

「……さて、どうしようかなぁ」

「ごめんなさい」

半泣きだ。

少しイジメ過ぎただろうか?

いやいや、村に攻め込んできたのだ。

これぐらいの罰は受けてもらおう。

そして、謝罪の言葉が聞けたので……

「許す」

「あううううううっ」

キアービットがガン泣きした。