軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

慣れた?

ニュニュダフネたちは、こちらが考えていた以上に自給自足が可能だった。

食料を特に必要としないのが一番良い。

いや、食べたり飲んだりできるが、水や日光で十分なのだそうだ。

そして、待ち姿勢の狩り。

獲物が狩れるまで、何日でも同じ場所で待機できる持久力。

簡単に言えば、世話が不要だった。

必要なのは許可。

「この辺りで日を浴びるのは構わない」

「人の姿をしている者は、全裸で動き回らないように」

「木に寄生しているように見えるが……本当か?

まあ、その木なら構わないが村の中央の木に何かしたら……」

世話は不要だが、手間が掛からないわけではない。

ニュニュダフネたちには二村周辺で狩りをしてもらっていたが、二村の建築作業が始まると護衛のクロたちがいるので一村周辺に場所移動。

でも、一部は大樹の村や二村で待機してもらっている。

待機の理由は、警報と光源。

ニュニュダフネたちは、ある程度の距離の同族に対し、念話ができるらしい。

念話と言っても細かいことを伝えられるワケではなく、現在の位置や「満足」「不満」「安全」「危険」などのシンプルな内容をふんわりと伝えられる。

注目したのは位置と「危険」が伝えられること。

つまり、村に居る時に「危険」を発信したら何かあったと判断できる。

精度的にはイマイチだが、気付けば他の村が魔物や魔獣に襲われて全滅していたという事態は避けられると思う。

これが警報。

光源に関しては、ニュニュダフネたちは切り株姿の時に発光することができた。

切り株から、植物を伸ばし、程よい高さで花が咲き、それが幻想的な灯りとなった。

野外を好むことと合わせ、夜の街灯ならぬ村灯としてのポジションを確立したのだ。

「マム。

ニュニュダフネたちから要望があったりはしないのか?」

「いくつかありましたが、私で対応できる内容でした。

問題は……服の習慣ですね」

「ああ」

ニュニュダフネたちは、本来は全裸の種族らしい。

それは人の姿の時も同じ。

話を聞くと、いま着ている似合わない服は、マイケルさんが贈ったものだそうだ。

「マイケルさんに感謝だな」

「はい。

それで、どうしましょう?

一応はその辺りの指導を重点的にやっていますが……」

切り株姿になった時に服が脱げるらしいので、狩りに行っている間は全裸。

スタイルが良いのが目の毒だ。

「人の姿で村にいる時は、着用義務。

自分の家の中なら、強制はしないという感じで」

「わかりました」

「今更だが、ミノタウロスたちがこの村に来た経緯は聞いているか?」

忙しくて忘れていた。

「はい。

聞いています」

ミノタウロスたちの世話役のナーフが答えてくれる。

「ゴードンさんたちが、以前住んでいた場所で養蚕業をやっていたのは聞いていますか?」

「普通に農家をやっていたと聞いているが……

蚕を育てていたのか?」

前にミノタウロス達が農業をできるのか不安になり、聞いたことがあった。

その時、農業はやっていたから大丈夫だと胸を張られたのを覚えている。

「はい。

農業もやっていたのですが、移住の原因は養蚕業です」

「……?

何があった?

蚕が病気で全滅でもしたのか?」

「いえ、順調な売り上げを誇っていたらしいのですが、その地を治めていた領主が無理を言ったそうです」

「無理?」

「蚕の繭が高値で売れるので、生産量を増やすようにと」

「ああ、なるほど」

領主の気持ちはわかる。

儲けが出る商売は手広くやりたいものだ。

「ですが、生産量を増やせと言われても、生き物を扱う仕事ですからすぐには対応できなかったらしいのです」

「そうだろうな」

「それに怒った領主が、税率を引き上げてしまい……」

「……は?

税率を引き上げって、その領主は無能か?」

「でしょうね。

ゴードンさんたちは三年ほど頑張ったそうですが耐えられず、結局は村を捨てたそうです」

結果的に、儲けの出ていた産業を儲けに目が眩んで潰したのか。

しかも、村を捨てる決断までさせるとは……

「その後、各地を放浪している時に、運良くドライムさんの手の者と連絡が付いてこの村に来ることになったそうです」

なるほど。

それでこの村に来た時、あんなにガリガリだったのか。

「私の勝手な意見ですが、二村で安心して暮らせるようになって、本当に良かったと思います」

「そうだな。

この先も安心してもらえるように、頑張っていこう」

「はい」

「ちなみに、その無能な領主はどこの国に居るんだ?

まさか、フルハルト王国か?」

「いえ、さすがに違います。

国の名前は覚えていませんが、フルハルト王国よりかなり西の方の国だったかと。

聞いてきましょうか?」

「いや、思い出させるのも悪い。

ちょっと気になっただけだ」

なんでもかんでもフルハルト王国のせいにするのは良くないな。

イメージの悪い国だけど。

ケンタウロスたちが住む予定の三村の建設は、急作業で行われた。

俺が【万能農具】で切り拓いた土地に、ハイエルフとリザードマン、ミノタウロスたちが家を建てていく。

ミノタウロスたちの家と同じく、平屋中心。

下半身が馬のケンタウロスたちとの差は大きいので、まずは小さな一軒屋を建てて問題点を洗い出す。

「通路が少し狭いです。

これでは一人しか通れないので、すれ違えません」

「扉の取っ手の位置は、もう少し高い場所で。

窓も高くお願いします」

「ここの中途半端な段差は無い方が良いです」

「無理に床板を張る必要はありません」

「室内は扉よりも、カーテンの方がありがたいです」

最初は遠慮していたケンタウロスたちだが、俺とラッシャーシが強く求めたので少しずつ意見が出始めた。

合わない家に無理に住んでストレスを溜められるのはよろしくない。

ケンタウロスたちの意見をある程度まとめると……

「ちょっと豪華な馬房?」

馬房の一角に台所やトイレがある感じだ。

「ま、まあ、下半身が馬ですから……その、生活はそっち方向になってしまうかと……」

グルーワルドが困りながら言うので、その認識で良いのだろう。

「方向性は理解したから、とりあえず急ごう」

建物の形が決まれば、後は早い。

一斉に何棟かを作り始める。

そろそろ肌寒くなってきているので、急がないといけない。

間に合うかどうかギリギリだろう。

俺たちは一心に建築作業に従事した。

そんな中、俺はゴードンとグルーワルドの二人を呼んだ。

場所は三村のできたばかりの家の一つ。

まだ誰も住んでいないので、周囲には誰も居ない。

「大事な話がある。

しっかり聞いてほしい」

俺の宣言に、二人の顔が引き締まる。

「本当に大事な話だ。

率直に聞く。

ゴードン。

お前たちは、他種族との交配は可能か?」

「交配?

え?

……あ、ああっ。

すみません。

えっと……可能ですが、その問題があります」

ゴードンの喋りは、以前よりも少し丁寧になった。

二村で落ち着くことができたからだろうか。

しかし、距離が少し遠くなった気はする。

なぜだろう。

疑問を横に置いて……

「問題?」

「はい。

その……」

ゴードンがグルーワルドを気にしたので、グルーワルドに耳を塞ぐように頼んだ。

そして聞かされるミノタウロスたちの交配事情。

うん、普通の交配。

ただ、サイズに問題があった。

要約、ミノタウロスはミノタウロス以外は無理じゃない?

というか不可能。

最善ではないが、こちらに求めてこないならOKだ。

「ゴードン、恥ずかしい話をさせて申し訳なかった。

そして理解した。

ミノタウロスはミノタウロスたちで幸せな家庭を築くことを願う」

「承知しました。

あの、ただ、その……」

「なんだ?」

「男の方は滅多にいないのですが……女の一部はミノタウロス以外を求める者もいまして。

村長の好みに合うかどうかわかりませんが……差し出すことは可能です」

「待て待て待て」

「はい」

「求めてないから」

「え?」

「ハッキリ言うぞ。

求めてないから。

遠慮でも謙遜でも遠回しの表現でもなくだ」

俺の宣言に、ゴードンが困った顔をする。

「お前たちを侮蔑しているワケではない。

言っただろ。

ミノタウロスはミノタウロスたちで幸せな家庭を築くことを願う。

それだ」

「それはわかるのですが、女の一部はミノタウロス以外を求めまして……」

「矯正しろ」

「え?」

「矯正だ。

いいか頼むぞ。

俺は、お前たちの誰かから差し出してもらおうとか一切考えていない!

恩を感じるなら労働で返してほしい」

「……承知しました」

「まだ不満そうだから、言っておく。

ドワーフたちは男性だけだし、リザードマンの女性には手を出すのは不可能だ。

俺の言っている意味はわかるな。

別に俺に誰かを差し出さないと、立場を得られないわけじゃない。

それに、差し出したからと優遇することもない。

覚えておいてくれ」

「承知しました」

話が終わったのでゴードンを先に帰し、次はグルーワルドと話をする。

「女性に聞くのは恥ずかしいが、これも種族代表の務めと思って答えてほしい」

「なんでしょうか?」

「ケンタウロスたちは、人間との交配は可能か?」

「…………………………そ、その質問が、人間の子を産めるのかということなら、残念ながら不可能です」

赤面されながら答えてくれた。

おおっ。

不可能。

無理。

OK!

ベストアンサー!

「ですが、遠慮は無用です村長。

楽しむことは可能です!」

「…………は?」

「ま、ま、まだまだ未熟な私ですが、男女の楽しみ方は色々あると聞いています!

幸いにも、私は胸に自信があります!」

「待て待て待て!」

「覚悟はできています!

さあ、お命じください!」

「命令しない。

そして、その覚悟は捨てるように」

「なぜですか!

こう言ってはなんですが、私は強気な女です。

男性は、強気な女性を虐げることに喜びを見出すと聞きかじった覚えがあるのですが?」

「誰に聞いたのかな?

あと、男性全員がそうじゃないからな」

「ではなぜ、そのような質問を?」

「そ、そうだな、それを先に言っておけば良かった。

種族間のトラブル防止のための調査みたいなものだ。

誰かを差し出せとかいう話じゃない」

「トラブル防止?」

「将来的に、子供たちが大きくなった時のことを考えてだ」

「……」

「どうした?」

「わ、私たちのことをそこまでお考えに……ありがとうございます」

「いや、まあ、こっちの都合もあるから……

だが、交配が不可能なら、ケンタウロスはケンタウロスたちで幸せな家庭を築いてほしい」

「はい!

わかりました!」

うん。

良い返事だ。

「それで、私はいつから村長のお部屋に伺えばよろしいでしょうか?」

「ん?」

「私はいつから村長のお部屋に伺えばよろしいでしょうか?」

「君は何を言っているのかな?」

「い、いつ、楽しみます?

こういったことを言わせるプレイですか?」

「違う!

何を聞いていた!

俺は、ケンタウロスはケンタウロスたちで幸せな家庭を築いてほしいと言ったんだぞ」

「はい。

村長のお気持ち、感謝します」

「で、それがどうして俺とお前が楽しむことになるんだ?」

「この村で安定した立場にいなければ、幸せな家庭は築けません。

安定した立場にいるためには、村長のご寵愛を受ける者がいれば良いと考えます。

不肖、このグルーワルドが立候補させていただければと」

「あー……ゴードンにも言ったが。

大丈夫だ。

気にするな。

俺がどう思おうが、追い出したりはしない。

安心しろ」

「そうは言われましても……」

「んー……」

新しく来た者は、新しく来た者で悩みがあるのか。

十分に慣れたと思っていたが、まだまだそうではないのか。

難しい問題だ。

とりあえず、服を脱ごうとするグルーワルドをなんとか説得し、この場を切り抜けた。

誰か、相談に乗ってほしい。