作品タイトル不明
村にいるウルザ
山エルフたちとテテトは、技術交換会という名のドミノ大会を実行。
三日ほどかけて作った巨大ドミノは、村の住人の目を喜ばせた。
「最後の大仕掛けはよかった」
「まさか、村長の像が宙に舞うとは」
「予想外だった」
俺も予想外だった。
ドミノの途中の仕掛けで巨大な俺の像が組み立てられ、それが最後の最後で爆音とともに大空に飛び出したのだ。
聞いていなかったので、びっくりした。
山エルフたちは、俺の偉大さを表現したと胸を張っている。
それはいいが、着地でバラバラになった巨大な俺の像は見ていないのかな?
ん?
あまり俺に似ていなかったから、俺は気にしていないぞ。
テテトが、ウルザが拠点としている街に帰った。
ビーゼルが場所を知っていたので、直接だ。
ただ、大量のお土産は五村から飛行船で輸送するので、届くのが少し遅れる。
そのあたりのことを書いた手紙をテテトに預けたので、アサとアースは理解してくれるだろう。
ウルザからアサとアースに宛てた手紙も預けている。
ウルザはテテトと一緒に転移して、ぱっと戻ってきてもいいと思うけどな。
あ、ザブトンが駄目だと抵抗している。
絶対にすぐに帰ってこないと。
ハクレンも強く頷いているから、そうなんだろう。
反論はしない。
村に滞在中のウルザは、ハクレンやザブトンと一緒じゃないときは村の子供たちといる。
村の子供たちと、しっかり交流しているようだ。
なにより。
夕食時に、ウルザからガットの娘であるナートの話を聞いた。
ナートの夫はどうするつもりと?
え?
それって、父親であるガットが決めることだろ?
なぜ俺に聞く?
俺の息子の誰かと考えていないか?
ないない。
息子から相談があれば考えるが、俺から動いたりしないぞ。
俺としては、結婚相手は自分で決めてほしいからな。
まあ、俺はそんなスタイルだが、息子の母親は考えているかもしれない。
確認しておこう。
実際、アルフレートとウルザの話は、ルーとハクレンで進められたからな。
俺としては本人の了承がなければ駄目だと言ったぐらいだ。
しかし、ナートの結婚相手か。
そんな歳になるんだなぁ。
あー、ガットのほうにもこっそり聞いておくか。
ガットに聞いてみた。
「相手を決めるには、まだ早いかと」
そうだよな。
うん、わかる。
まだ嫁に行くには早いよな。
ガットの妻のナーシィがこっちを見ているけど。
えーっと、ナーシィはナートから相談をされたりしているのか?
相談はされていないけど、狙っている相手はいるみたい?
そうなの?
誰とかは聞かないほうがいいな。
変に意識して邪魔になっても悪いし。
ガットは相手が誰か聞きたがっているけど……ナーシィに任せた。
これは夫婦の話だからな。
うん。
昼。
ガルフは木剣を肩にかけ、空を見ていた。
「俺って、弱かったんだなぁ」
なにやら深そうなことを呟いているが、見たところウルザと手合わせして勝ったんじゃないのか?
ウルザがめちゃくちゃ悔しがっているが?
「村長……
あー、俺の戦い方は、相手の強いところを潰し、弱いところを突くのが基本なんです」
ん?
そのあたりは俺にはよくわからないが、それは普通じゃないのか?
相手の弱点を突くってことだろ?
「そうなんですが、ウルザの嬢ちゃんは相手に全力を出させたうえで叩き潰そうとしてくるんです。
今回、俺が勝ったのは俺の全力をウルザの嬢ちゃんが受け止めきれなかったからで」
あー、まあ、それはそれでウルザが未熟ってことだと思うぞ。
「ウルザの嬢ちゃんの剣技に、体がまだついてきていないだけですよ。
もう少し身長があれば、俺は負けてましたね」
今回の手合わせで、それがわかったと。
「はい。
もっと頑張らないと」
なるほどなぁ。
向上心があっていいことだ。
で、向こうでウルザの 仇(かたき) を取ろうとしているザブトンが準備運動をしているんだが?
これから勝負するのか?
「逃げられると思います?」
無理だな。
ガルフは頑張った。
すごいぞ。
そして、次はハクレンだ?
あ、逃げた。
ウルザは五村に出かけることがある。
そのときの護衛は、レギンレイヴに任せている。
同じ女性だしな。
五村に出かけたウルザは、村議会を中心に見学をしているそうだ。
ウルザが拠点にしている街の運営の参考にするのかな?
ヨウコと一緒に食事をしたり、ヨウコの秘書に話を聞いたりしたそうだ。
それにヨウコはご満悦。
「うむうむ。
外の国よりもまずは身近なところで学ぶのが正しい姿だと思う」
アルフレートやティゼルが人間の国に行ったことに、思うところがあったのだろう。
すまなかった。
ただ、ウルザに仕事を振ったんだってな?
「簡単な内容のものをな。
なに、ウルザなら問題なくこなせる」
それが五村の外に出る、冒険者仕事だと聞いたんだが?
レギンレイヴが困っていたぞ。
「む、無理にさせたわけじゃないぞ。
ウルザがやると言ったのだ」
その言い訳を、ハクレンとザブトンが聞いてくれたらいいんだけどな。
あっちで待ってる。
「…………………………」
ヨウコは小さいヨウコになって、ハクレンとザブトンを相手になんとかごまかした。
すごいぞ。
「た、助けてくれてもよかったのでは?」
そこはすまなかった。
五村でウルザは野球をやった。
魔王のチームでだ。
セカンドで四番打者。
攻守で活躍したそうだ。
見にいきたかった。
しかし、魔王のチームはレギュラー争いが厳しいんじゃなかったのか?
よくウルザが出られたな?
「最近、ゴールもシールもブロンもオージェスもハイフリーグータもキハトロイも忙しくて」
なるほど。
で、暇なのは魔王だけと。
魔王が暇なのはいいのだろうか?
「王が遊ぶ暇もない国は、滅んでいいと思う」
ははは。
ビーゼルが見ているから、ノーコメント。
ビーゼルが、アサとアースからの手紙を持ってきてくれた。
手紙というには量があるな。
紙じゃなく木の板に文字を彫ったものもあるし。
えーっと、とりあえず最初に読んでほしそうな手紙から。
内容は、過去に行なわれたウルザの逃走方法の説明だった。
こういった感じで護衛を撒くから、注意と。
な、なるほど。
木の板に彫られているのは、アサとアースとウルザのあいだで取り交わされた、これはやっちゃ駄目という 規約(ルール) だそうだ。
規約ができるほど、逃げたのか。
代表的なのは、死んだふり。
心配するし、いろいろと迷惑がかかるから駄目と。
当然だな。
そういったのが列挙されている。
拠点にしている街では、この規約を巨大な岩に刻んでいると。
あー……とりあえず、これらの手紙と規約はレギンレイヴに見せておくか。
見たレギンレイヴが、追加の護衛を求めた。
二十人ほど。
種族も多様で。
一つの種族で揃えると、出し抜かれると。
男性も必要なのか。
女性が入りにくい場所を使う可能性があると。
……
護衛は用意する。
それと、ハクレンとザブトンからウルザに護衛を撒かないようにと言ってもらおう。
あと、俺からもちょっと注意。
護衛は敵じゃないんだから、迷惑をかけないように。
いや、俺もときどき護衛を忘れることはあるけど。
うん、そこは俺も反省している。
一緒に反省しよう。