軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

来客ドラゴン

春のパレードが終わったあと、ウルザが帰ってきた。

急にだ。

びっくりした。

気づいたら、食堂で普通に食事してたから。

思わず、二度見をしてしまった。

ウルザが帰ってきたのは、ドースの知り合いのドラゴンが村を訪れるので、その紹介役。

それが終われば、またすぐに旅立つらしいけど、数日は滞在するとのことでハクレンとザブトンが大喜びだ。

村の子供たちも、久しぶりのウルザとの再会を喜んでいる。

その様子をみて、リアがうちの子は……と嘆いていた。

いや、リリウスたちは五村に泊ることもあるけど、ほぼ毎日、戻ってきているじゃないか。

あと、比べるのはよくないぞ。

そして、氷の魔物のアイスよ。

自然とウルザの執事っぽいポジションにおさまっているけど、それでいいのか?

ウルザに呼ばれなかったというか、連れていかなかったことに対しては?

いや、本人がいいと言うなら、いいんだけどな。

ドースの知り合いが到着するまで、俺はウルザに近況を聞く。

とくに五村からかなり東に行った場所に作っている新しい街の様子を。

アサとアースを残してきているから、大丈夫だとは思うけど、ウルザがいなくて大丈夫なのか?

ウルザは看板で、実務は専門の者たちでやっているから大丈夫と。

なるほど。

アサとアースは、その専門のほう……集団の取りまとめ役を任されているから、一緒に戻って来れなかったのか。

なるほど。

そのアサとアースは、ウルザだけ戻すことをすごく心配している。

ウルザが持ってきた手紙に、そう書いてあった。

ご迷惑をおかけしますと謝るのは、親であるこっちの役目なんだけどなぁ。

街のほうは順調らしく、また文官として送った天使族や飛行船はなんだかんだと活躍しているらしい。

飛行船を移動させるたび、そこを宿にしている天使族が文句を言っているそうだけど。

……自由に使える飛行船がほしいという要望かな。

飛行船の生産状況を見て、検討しよう。

ドースの知り合いが、どういった知り合いなのかはウルザは教えてくれなかった。

到着するまで秘密とのことらしい。

これはウルザではなく、ドースの知り合いの希望。

なんにせよ、歓迎するために食材の確保をしておかないとな。

まずはゴロウン商会のマイケルさんに発注。

あとは五村のヨウコに頼むか。

好みがわからないから、いろいろと用意しておこう。

酒はドワーフたちに任せる。

おっと、クロたちの狩りにも期待しているぞ。

でも、無理するんじゃないぞ。

大きい獲物を狙って、怪我とかしないようにな。

あとは、来るのがドラゴンだから着陸場所をどうするかだな。

屋敷の前……ハクレンやドライムなら大丈夫だけど、慣れてないと畑を潰しそうだな。

居住エリアの広場も……家が増えたからな。

万が一を考えると危ない。

そうすると、村の南にある競馬場が無難か?

よし、そこにしよう。

競馬場に、合図用の 狼煙(のろし) 台を用意。

ドラゴンは総じて賢い。

目的地に狼煙が上がれば、意図に気づくだろう。

察しの悪いドラゴンもいるらしいけど、ドースの知り合いなら大丈夫だろう。

いつ来るかはわからないが、ドースにはちゃんと待機しておいてもらわないとな。

来てくれたのに不在だと、申し訳ない。

「知り合いのドラゴンというと……ライメイレンの弟のクォラインかな。

ドマイムの妻のクォンの父になる」

ああ、前に会ったことがある。

そのときは気弱だと思ったが……気難しいのか?

「いやいや、温厚な男だ」

それは助かるな。

でも、なぜ秘密にするんだろう?

それに、彼ならウルザの紹介も不要だろ?

「ライメイレンを驚かせたいとかであろうか?

ウルザに関しては……村に戻ってもらいたい理由があったとか?」

あー、なるほど。

だから、ドースの知り合いと言って、ライメイレンに気づかれないようにと。

「うむ。

嬉しい報告があるのかもな」

おおっ、クォンの妊娠とかか。

「おっと、これぐらいにしよう。

相手のサプライズを潰してはいかん」

そうだな。

俺とドースは笑いながら、その知り合いの到着を……

いつ来るかわからないので、気長に待つことにした。

ウルザが村に戻って、五日後だった。

ドースの知り合いであるドラゴン。

彼女は人の姿で、村の南の門前にやってきた。

そう、彼女。

だから、ライメイレンの弟のクォラインではない。

彼女の人の姿は、四十代ぐらい。

ドースの知り合いだから、当然ながら見た目通りの年齢じゃないのだろう。

すらっとした……男装の貴婦人。

いや、どちらかと言えばマフィアのボスかな。

風格がすごい。

そんな彼女はドースだけでなく、ライメイレンとギラルとも知り合いらしい。

……

えーっと、ドース?

あと、ギラル?

なぜ、俺の背中に隠れる?

ウルザが連れてきたのだから、敵とかじゃないと思うのだが?

ウルザはそういった勘は強い。

敵を村に連れて来たりはしないはずだ。

だけど、ドースとギラルは俺の背中に隠れ続ける。

仕方がない。

俺がなんとかするしかないみたいなので、話しかける。

この村の村長、ヒラクだ。

貴女は?

「名は、私に挑んだ者にしか教えん」

えー……

なんだか面倒くさそうな人……じゃなくて、ドラゴンだなぁ。

背中に隠れているドースとギラルになんとかならないのかと聞くと、二人は声を揃えた。

「挑め!

そして倒すんだ!」

おいおい。

ドースが俺の背中を押す。

「村長の強いところが見てみたい」

い、いや、俺は強くないぞ。

俺は否定するが、ドースは諦めない。

「いけるいける。

ハクレンをなんとかしたんだ」

なんとかしたって……

彼女はハクレンより弱いのか?

「ハクレンの十倍ぐらい強い」

……

ドースの次はギラルだ。

「村長、弱気になるな。

自分を信じろ!」

いや、その自分が弱いと言っているんだが。

「村長は俺たちの希望だ。

光り輝いている。

眩(まぶ) しいぐらいに!

頼む!

やつを倒してくれ!」

そう言われても……

「大丈夫だ!

倒してくれたら、俺たちが確実に止めを刺す」

なにも大丈夫じゃない。

あと、止めとか物騒なことを。

ライメイレン、二人を……あれ?

さっきからドラゴン姿になってなにをやっているのかなと思っていたけど、ひょっとして俺が戦う場所を作ってる?

作られても、村の近くじゃ戦わないぞ。

えーっと、名乗ってくれない彼女も戦う感じじゃないし。

「あー、うん。

挑む姿勢を見せてくれたら、名を教えるから」

ほら。

その彼女の言葉に怒ったのは、俺の背中に隠れているドースとギラル。

「ひよったか!」

「自分より強い者に挑まれるのが夢とか言ってたくせに!」

ぎゃーぎゃー言ってる。

「……私にそんな口をきくとは、ドースの坊やも、ギラルの坊やも偉くなったもんだね。

ひさしぶりに試してやろうか?」

名乗ってくれない彼女がそう言うと、ドースとギラルは俺の後ろにまた隠れた。

よほど怖いらしい。

えーっと、とりあえずウルザからの紹介を待とうかな。

そのウルザは……ナートたちと遊んでいると。

村に戻ってきた目的を忘れちゃいけないとは思うけど、彼女は人の姿で来たからなぁ。

狼煙も上がってないし、気づいていないのかもしれない。

誰かー、ウルザを呼んできてー。