軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ヒッポグリフ

村の中央に位置する場所で、俺はポーターの盾を展開して屋根にしていた。

テーブルを置いて紙の上に簡単な地図を描く。

そうして村のどこを補強し、罠をどこに設置するのかを確認するのだ。

地図を描き、そこに罠の場所や種類を書き込んでいく。

朝食後で、俺の近くにはミランダさんがいた。

ルカは、俺の隣でその様子を見ている。

ジオニ村の村長が地図を見て、驚いていた。何より、クラークさんの驚きの方が凄い。

「ライエル君、これを一晩で考えたのかね?」

村長の方は。

「補強と罠の設置……いや、でもこの人数なら」

俺が書き込んだ補強と罠の設置が可能かを、村長が考え込んでいた。

それを見ていたノーマさんが、俺に言ってくる。

「何を驚いている? こんなの、誰でも考えつくだろう。私なら、こことここに罠を追加して、ここを補強する」

自信満々に言ってくるノーマさんだったが、それを聞いた二代目が噴き出した。

『何こいつ。無能すぎ』

三代目は大笑いだ。

『確かに誰でも思いつくよね。でも、実行できるか出来ないかは別問題だよ』

ノーマさんに、クラークさんが首を振って説明する。

「隊長、人手が足りません。最低でもこれだけを数日で行なう必要があります。その間にヒッポグリフの襲撃もあるでしょうし、グリフォンが出てくるまでにこれだけの補強と罠の設置が必要です」

村長はノーマさんを見て嫌そうな顔をしていた。

「……流石に今の場所に罠を設置して貰っては困ります。後で元に戻して頂けるにしても、そこには家もあるんです」

ノーマさんが一歩退く。悔しそうな表情をしていた。

(まぁ、もっと罠を設置する事は考えたんだけどね)

四代目が言う。

『色々と考えて設置しているんだよね。でも、これが限界だろうね』

五代目は次の指示を出せと急かしてくる。

『ライエル、いつまでも黙っていないで先に進め。ここからは時間との勝負だ』

俺は集まった面子に指示を出す事にした。

「それでは、ノーマさんはここで待機してください。報告はここに誰かを走らせて貰えれば、俺が指示を出します。クラークさんは兵士の訓練を開始してください。村長は村の補強を。ミランダさんは――」

ミランダさんが分かっています、という感じで返事をする。

「罠の設置でしょ。出来るとは思うけど、大きさ的には指示を出すだけになるわよ。道具も持ってきてはいるけど、準備に一日はかかるわ」

俺はそれも考慮しているので、問題ないと伝えた。

「罠の設置は二度目――グリフォンが出てくるまでに終わらせて貰えれば」

ヒッポグリフを使い、村を襲撃させていた。

まずはヒッポグリフが魔物を率いて村に襲撃をかけてくるだろう。

ジワジワと追い詰めるやり方は、なんだか嫌な奴に思える。

もっとも、これがドラゴンなどであれば村などすぐに滅ぼされてしまう。

グリフォンがあまり動きを見せないのは、力でも蓄えているのかも知れない。

「補強にはノウェムとクラーラにも参加して貰います。モニカには炊き出しを手伝わせますから、食事や休憩も交代で行ないましょう。何か意見は?」

俺が全員を見渡すと、その場にいた騎士の一人が聞いてくる。

「あ、いや……その……俺たちは誰の指示で」

チラチラとノーマさんを見る騎士だが、俺はここでキッパリと告げる。

「指揮官代行として俺が指示を出します。報告も俺に」

騎士が頷くと、少し安心した様子だった。

六代目が言う。

『……こいつ、指揮官として駄目なのでは?』

七代目も同意見だ。

『まぁ、違う意味では優秀ですな。使う方からすれば厄介な人材ですが』

視線を逸らし、その場に立っているノーマさん。

(確かに、違う意味では優秀だな。ただ、上手くやっているようには見えないんだが)

もっと違うやり方で出世も出来ただろうに……。

そう思いながら、俺は質問に答えていく。

どうでもいい質問もあれば、まったく話を理解していない質問もある。

それに答えつつ、仕事の仕方まで説明を求められると現場で直接という流れになった。

そうした会議を見て、二代目が言う。

『うわぁ……不安だな』

不安と言いつつ、楽しそうにしているのは何故なのか? 俺は二代目の明るい口調からそんな事を思うのだった。

馬を借りた俺は、スキルを使用して村の全体を確認していた。

作業が進む村を見つつ、問題があれば駆けつけるというスタイルである。

中央で報告を待っていても良かったのだが、動き出したばかりでトラブルの方が多かった。

もめ事を確認すると、馬を走らせて現場に向かうのである。

丸太を突き刺して作った壁の外側では、溝を掘って高低差を付けていた。

土は壁側に盛って補強の役割も果たしている。

力仕事なのだが、そこで揉めているのはノウェムだった。

村人がノウェムの魔法を見て、騒いでいる。

「なんで全部してくれないんだ! 急いでいるんだから、それくらいしてもいいだろうが!」

ボロボロの服を着て細身の男が騒いでいるが、周囲は呆れた表情をしていた。

ノウェムは説明する。

「ですから、全力を出すわけにはいかないんです。私はこの後も治療で待機しますし、魔力は温存する必要が――」

「一人だけ楽をする気か!」

騒いでいる男を見ると、どうもまともそうには見えなかった。

そこに、小柄の男が歩み出てくる。

ノームだろうか。

「なぁ、さっきから仕事もしないで騒いでないで、手伝ってくれないかな? それに、仕事をしないと報酬が貰えないんだよ」

小柄なノームは、大人でも百五十で高身長の部類である。細身の男がノームの青年を見て大声を出す。

「ふざけんな! ノームのクソチビは黙って仕事をしろ! 人間様にたてつくんじゃねー! この女が仕事を早く終わらせれば、俺にも報酬が――」

そこまで唾を飛ばして叫んでいる細身の男に、俺は馬に乗って近づく。

「報酬は出さないぞ。言っておくが、ノウェムは監視役でもある。働きに応じて報酬を支払うが、成果があれば追加もしてやる。だがな、逆なら報酬が減るだけだ」

俺を見た細身の男は、急に大人しくなった。

そして、ノームの青年は男が飛ばした唾を「汚いなぁ」と言いながら拭き取っていた。

「俺は真面目に……でも、この女が……ノームが……」

ブツブツと文句を言う男に、俺は大声を張り上げる。

「文句があるなら俺に言え! 働く気がないなら邪魔をせずに閉じこもっていろ! それと、ここの作業が一番遅れている。このまま遅れていれば、追加報酬はなしだ」

そう言うと、見ていた村人たちが大急ぎで仕事を再開する。

どこが一番早く仕事を終えられるか、というのを競争させているのだ。

本当なら仕事の質にも気をつけたかったが、今は速さが重要だった。

「申し訳ありません、ライエル様」

馬から降りて、俺はノウェムと作業の確認をする。

「いや、これくらいなら可愛いものだよ」

俺はそう言いながらノームの青年を見ていた。手先が器用で、村では大工の真似事をしていると聞いた。

鍛冶屋のドワーフは、罠を設置するための穴掘りでミランダさんのところだ。

「気に入って貰えた鍛冶屋がいれば良かったかな」

ノウェムに冗談を言うと、少し困ったような表情をしていた。

「こちらよりも罠の設置で頑張って欲しいですから。それに、武器も用意して貰わないといけません」

弩の矢。

槍。

それらも用意して貰う予定だ。

「敵が攻め込んだらすぐに中に逃げ込めよ。今のところ動きはないが、村長の話では感覚的に近い内に来るみたいだからな」

「気をつけます。ライエル様も気をつけてくださいね」

「分かっているよ」

そう言って馬に乗ると、スキルで周辺の状況を確認する。

次に問題が出ているのはクラーラのところだった。

(どこも問題ばかり)

馬を走らせると、三代目の声が聞こえた。ニヤニヤしながら楽しんでいそうな声に、俺は腹が立ってくる。

『ほら頑張れ。こういうのって、見ている分には楽しいよね』

四代目も同意する。

『責任がないと思うと楽な上に、余裕が出て来て色々と見えるんですよね』

五代目も。

『あ、それって分かるわ』

(お前ら……)

楽しんでいるご先祖様たちを放置し、俺はクラーラの下へと向かうのだった。

作業を開始し、日が傾き始めた頃だった。

ポーターの下に戻ってきた俺は、馬から下りるとそこで待機しているノーマさんに声をかける。

「誰か来ましたか」

本当は誰も報告に来ていないのを知っているが、話しかけてみたのだ。

不機嫌そうなノーマさんは、短く。

「何も。あのモニカとかいう頭の中がお花畑のメイドなら、食事を持ってきたけどね」

木製の皿にスープらしきものを入れてきたのだろう。

食事を終えて椅子に座るノーマさんは、暇そうにしている。

三代目が言う。

『こいつさぁ……どこかに配置しようよ』

七代目が拒否する。

『遊撃という形にすると決めましたよね? 却下です。それに思っていた以上にライエルが動きますから、代理として置いておくには十分では?』

代理である俺の代理は本物の隊長――。

訳が分からなくなってくる。

そうしていると、モニカが俺の食事を持ってきた。お盆に皿を載せており、笑顔で走ってくる。

転ばないか不安そうにしていると、近づいてきたモニカが言うのだ。

「転ぶと思った? 残念! 食べ物は粗末に出来ないんです」

こちらを見透かしたような態度に腹を立てる俺は、モニカから食事を受け取る。

馬に乗って村中を移動した事もあって、食事が遅れたのだ。

俺の食事を見て、ノーマさんが言う。

「おい、私の食事と内容が違うぞ!」

ノーマさんの食器を回収するモニカは、鼻で笑っていた。

「だから? 材料は私たちの持ち込みなので」

ニヤニヤするモニカに、悔しそうなノーマさんを放置して俺は食事を手早く済ませる。その様子を見て七代目が。

『ライエル……昔はあんなにお行儀の良い子だったのに』

二代目が呆れる。

『時と場合を考えろ。ここは戦場だぞ』

七代目は言い返す。

『戦場だろうと、ウォルト家は伯爵家! その振る舞いは重要なのです!』

三代目が最後に。

『……でも、今のライエルは貴族でもないよ』

ご先祖様の会話を聞きつつ、俺は食事を終えた。

モニカが「豪快に食べて……そんなところも……」などと何か言っていたが、無視してスキルを使用する。

休憩を挟みつつ使用しなければ、疲れが出てしまう。

モニカが食器を持って自分の持ち場に戻る背中を見送る。

スキルで村の様子や、近くの林を確認していた。

そして、頭をかいて立ち上がった。

「……休憩ぐらい、取らせてくれても良いだろうに」

サーベルを引き抜くとノーマさんが驚いた様子で椅子から立ち上がっていた。俺から距離を取っている。

ポーターを叩くと、そこからシャノンが出て来た。

欠伸をして出て来たので、軽く叩いておく。

「痛いじゃない!」

「狼煙の準備だ。急げ!」

すると、ワタワタとシャノンがポーターの近くに設置していた狼煙を上げる道具に、火を付けていた。

簡単な魔法で火を付けさせると、しばらくして濃い煙が空に昇っていく。

「ちょっ! これ、苦しい!!」

シャノンが咳をしながらポーターに逃げ込む姿を見て、俺は思った。

(本当に残念な美少女、って感じだよな)

オロオロとしているノーマさんだったが、騎士であるのは間違いない。狼煙の準備に入った段階で武器を手に取っていた。

「来るのは三十体程度ですね。ヒッポグリフが率いています」

率いる魔物の数が増えてきている。

以前は十体程度と聞いていた。

(人を襲って力を蓄えると、そう言えば本で読んだが……)

魔物の習性には謎が多い。

魔石というものを体内に持っているのもそうだが、食事に関してもそうだ。

人間や獣を襲ってはいるが、体の割に食事の感覚が長い。

(今は考えることじゃないか)

俺はノーマさんに声をかけて、馬に乗る。

そして、走ってきた伝令の兵士たちに、状況を説明するのだった。

どこから来るのか?

数は?

魔物の種類は?

それらを教え、どう動くのかを指示を出す。

騎士や兵士にとっても稼ぎ時である。

緊張しているというより、早く自分のところに来いと思っている様子だった。

「相手をするのはヒッポグリフ以外だ。襲われたら反撃。もしくは逃げてもいい」

指示を出し終わると、伝令が自分たちの隊に戻っていく。

元からヒッポグリフ相手に不安要素が多かった遠征部隊だが、ある程度はマシになっていた。

そして、マーカスさんとブレッドさんが俺のところに走ってくる。

「ライエル! 魔物が出たんだって!」

マーカスさんは槍を持って戦うつもりのようだ。

ブレッドさんも真剣な表情をしている。

その様子を見て、ノーマさんがボソッと呟いた。

「……ふん、お前らで勝てるものか」

助けた三人組みも集まってくると、俺は指示を出す。

「ヒッポグリフは村に入ります。危なくなったらポーターの近くに避難してください」

ブレッドさんが言う。

「ここで逃げられません! どうしても手柄が欲しいんです!」

必死なようなので、それ以上は声をかけなかった。

背中に背負った弓を手に取ると、矢筒から矢を取り出す。爆発する矢は、数が少ないために俺が所持をしていた。

クラークさんに渡そうと思ったが、弩で試している時間もなかったので止めている。

グリフォンがいる林の方を見る俺は、そこから飛び上がったヒッポグリフを見た。

森からはゴブリンが出てヒッポグリフに従っている。

「オークも出て来て貰った方が楽だったんだが」

ここで相手の戦力を減らしておきたかったが、そう上手くは行かないようだ。

村が一気に騒がしくなる。

狼煙が上がったのを疑っていたようだが、実際に魔物が攻め込んできたので慌てて本気で避難している。

「これで、本番も大丈夫だろうな」

マーカスさんが、俺を見ながら言う。

「本番って……これも本番だろうが」

俺は首を横に振った。

「どれだけ上手く勝つか、それによって今後が変わってきます」

俺の言葉を聞いて、六代目が声をかけてきた。

『言うようになった。だが、油断はするなよ』

宝玉を握りしめると、俺は魔物たちの動きを見る。

(場所から言えば、アリアだな)

――ジオニ村を襲撃してきた魔物たちは、補強した壁に阻まれて攻め込めなかった。

そこを弩や槍で兵士や騎士たちが攻撃して数を減らしていく。

だが、空を飛ぶヒッポグリフには関係ない。

村に飛び込むと、兵士を一人吹き飛ばして獲物を探していた。

前足は鷲の爪を持っている。

兵士一人を掴んで離そうとしていなかった。

掴まれた兵士は、吹き飛ばされ強い力で握りしめられ爪が食い込んで血を吐いている。

周囲では騎士や兵士が槍を持ってヒッポグリフを囲んでいた。

馬よりも一回り大きなその姿に、騎士や兵士も金が出るとは言え腰が退けている。

そんな中、飛び出したのはアリアであった。

槍を握りしめ、バックラーは外してヒッポグリフに飛びかかった。

「掴んだままで上手く飛べるか見せてみなさいよ!」

一瞬で距離を縮めると、そのままヒッポグリフに槍を突き立てる。

ただ、目が良いのか、ヒッポグリフは距離を取って即座に飛び上がろうとしていた。

掴んでいた兵士を放り投げると、仲間が駆け寄る。

アリアは即座にナイフを投げつけるが、ミランダほどの腕もないので容易にヒッポグリフに避けられてしまった。

翼を広げて飛び上がったヒッポグリフは、鷲の頭で鳥が鳴くように甲高い声を出す。

アリアに狙いを定めて襲いかかろうとすると、アリアは笑うのだった。

「人間を舐めんじゃないわよ」

ヒポグリフが空中で勢いを付けようとした瞬間に、全員がその場から避難するのだった。

網は間に合わなかった。

だが、それ以外の方法がない訳ではない。

紐の両端に石を結びつけたものを、ヒッポグリフ目がけて投げつける。

遠心力を活かして投げられたそれらは、ほとんどが外れるが一つだけヒッポグリフの頭部を直撃し、左の翼に一つが巻き付いて地上へと落とす。

すぐに巻き付いたものを振り払うヒッポグリフだが、アリアがその隙を見逃すはずもない。

アリアの赤い玉が光を放ち、スキルを使用させる。

槍を頭部に突き立てると、暴れるヒッポグリフをそのまま地面に突き刺して封じ込める。

その力業は、女の子には見えなかった。

まさしく、猛者である。

「あんな可愛い顔をして……」

「声かけるのは止めるわ」

「返り血で真っ赤じゃないか」

槍を突き刺し、暴れ回るヒッポグリフの返り血を浴びたアリアに、周囲はドン引きしていた。

(たく、この程度で……セントラルの騎士、って軟弱ね)

ヒッポグリフが動かなくなったのを確認するアリアは、タオルを取り出して顔を拭くのだった。

投げつけた道具を回収する兵士や村人は、アリアに確認してくる。

「あ、あの……俺たちの働きは?」

アリアは笑顔で返事をする。

なのに、兵士たちは「ヒッ!」と驚いた声を出していた。

「心配しなくてもライエルには伝えておくわよ。次もお願いね」

「は、はい!」

道具を回収し、騎士や兵士たちがヒッポグリフの死体を確認する。

確かに死んでいるのを確認すると、一人が伝令として走って行った。

「さて、外の様子は……」

そう思って周囲を見ると、壁に張り付いて魔物の相手をしていた騎士や兵士たちもヒッポグリフを見るために集まってきていた。

(終わったのか。怪我人は一人……)

ドアを取り外して担架にしたもので、兵士が運ばれていく。

傷の具合からノウェムなら何とかすると判断したアリアは、ヒッポグリフから槍を引き抜くのだった。

鷲の体に馬の下半身がくっついた魔物を見て、アリアは自分の成果に満足する。

(でも、流石にグリフォンとなると厳しいわね)

槍を突きした時の感触から、もう少しだけ頭蓋骨が硬ければ――。

などと考えてしまうアリア。

もう、お嬢様とは呼べないだろう。

武器の確認を行なうアリアの下に、馬に乗ったライエルが駆けつけてきた。

その後ろにはマーカスとブレッドがついてきており、戦闘が終わったのを確認すると肩を落としていた。

(怪我した人は見なかったのかしらね)

ライエルが馬から下りると、アリアに労いの言葉をかけてくる。

「怪我はないようだな。無事で安心した。それにしても、ほとんど一撃じゃないか」

アリアは血を拭き取りながら、言う。

短い返事だが、声は嬉しそうだった。

「そ、そう? まぁ、私も成長しているのよ」

ライエルは周囲を見ると、怪我をしている騎士や兵士たちを下がらせるように指示を出す。

そして、マーカスやブレッドにその穴埋めを任せたのだ。

二人は嫌そうにしている。

渋々壁の方へと歩いて行く二人を見て、アリアが言うのだ。

「……ライエル」

「ん?」

「私もあんな感じだったのかしら」

すると、ライエルは笑顔で。

「そうだよ。なんか、見張りとか簡単な仕事です、って感じで嫌そうにしていたね。もっと重要な仕事がしたい、って態度に出ていたね。あそこまで露骨じゃないけど」

笑うライエルに、アリアは怒る。

「ハッキリ言わないでよ! これでも反省しているのよ!」

ライエルは、優しい笑顔になるのだった。

「なら、いいんじゃないかな? 今なら笑い話で済む。ま、あの二人がどうなるかは分からないけどさ」

笑い話で済まない。それは、あの時真面目にしていれば、などという後悔しかない場合だ。

腕を失い火傷を負ったライラ――自分を指導してくれた二人目の冒険者を思い出し、アリアは真剣な表情になる。

二人の教育までは請け負っていないと、ライエルは少しだけ寂しそうな表情をするのをアリアは見逃さなかった。

そして、ライエルが言う。

「怪我人のためにお湯も用意しているから、体を拭いてくるといいよ。あ、それと」

「それと?」

まだ何かあるのかと思っていると、ライエルが本気で心配しながら。

「……仲間内だけじゃないんだから、アラムサースみたいに裸でウロウロしない方がいいよ」

「し、してないわよ!」

イチャイチャする二人見る周囲の騎士や兵士、そして村人は言う。

「俺、血まみれの女に興奮できない」

「あの女も猛者だけど、あの男も別の意味で猛者だよな」

「冒険者とか、騎士や兵士の女は駄目だな……」

そんな事を口にした連中を、アリアが睨み付けると即座に逃げ出していくのだった――。