軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

セルバ陥落

セルバの都市。

壁から城が突き出て見える場所に布陣した俺は、主力であるロルフィスの軍勢を見ていた。

規模は二万に膨れあがっており、ほとんどが傭兵団である。元は、ロルフィス侵攻を考えていたザインが雇っていた傭兵団だが、金が支払われないと知ると、すぐにロルフィスに寝返ったのだ。

お金は大事だと思いながら、攻撃を受けるセルバの都市を眺めていた。

こちらは、相手を引き付け主力であるロルフィスの手助けをする程度に留めていた。何しろ、ザイン側は今回の戦争で利益などほとんどない。

国境で問題がある地域は、最初からザインが受け取る事で話が進んでいる。だが、それだけだ。

あまり頑張っても、ザインの利益はほとんどないならやる気が出ない。

(俺にとっての利益と、ザインの利益は違うからな。預かった騎士や兵士の消耗を、なるべく低くしておかないと)

消極的と思われても嫌なので、セルバの兵力をこちらに引き付ける程度の役割は果たそうと思った。

その甲斐あって、相手はこちらにも兵をそれなりに回していた。

都市内部の動きを見て、住人まで駆り出してこちらの攻撃をしのいでいるセルバは必死に抵抗している。

宝玉を無意識で握ると、傍にいたメイが話しかけてきた。

今回、メイには偵察をして貰ってはいない。

ノウェムは後方で負傷者の治療に。そして、クラーラとミランダは別働隊の支援を。

アリアとエヴァも、別の部隊で支援をさせていた。

シャノンとモニカは、ポーターで後方部隊の仕事を支援している。

「ねぇ、ライエルが指揮をしなくていいの?」

メイの視線の先には、クレートさんがいた。そして、神聖騎士団時代、汚れ仕事をしていた部隊の武具を装備したアルバーノさんも、本陣で椅子に座って背もたれに腕を乗せていた。

二人とも、互いに睨み合っていた。

クレートさんは。

「ロルフィスとは協力すると宣言している! もっと積極的に攻撃しないでどうする!」

本陣のテントの中で、長いテーブルに両手を叩き付けたクレートさんを、右手の小指で耳掃除をしていたアルバーノさんは呆れた顔をして。

「だから石頭って言われるんだよ。こっちはほとんど利益がないんだぞ。しかも、向こうも張り切りすぎて貰ったら困るだろうが。こっちが一番乗りでもしてみろ。向こうはどんな顔をすればいいんだ? 二倍近い兵力があるのに、こっちに先乗りされたら面子が立たないだろうが。ここは距離を取って魔法を撃ち合えばいいんだよ」

クレートさんは積極的すぎた。

アルバーノさんは、消極的すぎる。

二人の意見がぶつかり合い、副官である騎士【ノイ・バーデル】が二人の案を聞き。

「あの、では……積極的に攻撃して、注意を引き付けるライエル殿の案でいいですよね?」

視線が俺に集まると、クレートさんが頷いていた。

「そ、それしかないのか」

アルバーノさんは。

「乗り込んでどうするつもりだったんだよ、お前? もうロルフィスがここを自分の物にするために動いているんだぞ。若い騎士たちは、この機会に手柄を立てておきたいんだ。少しは頭使えや」

クレートさんは、顔を真っ赤にしてアルバーノさんの胸倉を掴んだ。

「アルバーノ、貴様がここにいるのは誰のおかげだと――」

「聖騎士様のおかげだよ。お前のおかげ、とでも言うと思ったか?」

戦場で気が立っているのか、二人は殴り合いを始めた。俺は、メイの「どうする?」という視線を受けて、椅子から立ち上がった。

宝玉からは、七代目の呆れた声が聞こえてくる。

『やれやれ、まったく成長しておらんな』

四代目も。

『このまま二人に任せるのは厳しいね。やっぱり、上に置く人材を決めておくべきだ。優秀なんだけど、どうしても対立するから』

両者、長所もあるが、短所も大きかった。

俺は。

「ここでするなら外に出てください。指揮官がこの場にいないのは問題外ですけどね」

すると、二人とも離れて椅子に座った。

テント内に、伝令が駆け込んでくる。

「伝令! ロルフィスの部隊が壁に取りつきました! そのまま城門を開け、突入に成功しています!」

ここまで来るのに数日はかかったが、意外と早かった。やはり、数の差が大きかったようだ。

すると、クレートさんが。

「こちらも部隊を送る! 私自ら騎馬隊を指揮するぞ!」

アルバーノさんが。

「だから、お前は動かなくて良いんだよ。あいつらの邪魔をすると、あとで恨まれるぞ」

二人の意見が割れるが、俺は助言をしなかった。

すぐにザインを離れるので、次の騎士団長候補の二人に経験を積ませたかったのだ。だが、二人では話にならない。

すると、ノイさんが溜息を吐きつつ。

「こちらもロルフィスの支援をしましょう。城壁の兵士を釘付けに。都市への攻撃はできるだけ避けて。ロルフィスにも使者を送って確認を」

ショートヘアの黒髪をかきながら、ノイさんは指示を出していく。二人の案を取り入れ、足して二で割ったような決定をしたのだ。

俺の方に視線を向けてくるので、俺は頷いておいた。

五代目の声が聞こえてくる。

『アレットが二人を引き入れないわけだ。極端すぎる』

三代目は。

『そうなると、二人の内、どちらかを騎士団長に推すのは論外だね。同格にしても喧嘩をするし』

俺はテントの中で、報告を受けて指示を出すノイさんを見ていた。聖騎士団の立ち上げから、どちらかと言えば目立たない人だった。

人のサポートに回るタイプである。

俺は、椅子に座るとアゴに手を当てた。ノイさんを見ていると、メイがそんな俺の顔を覗いてくる。

「何を考えているの?」

「ん? あぁ、ちょっとな」

(元は貴族で、今は落ちぶれて冒険者だったな? 年齢は二十代半ば……苦労も知っているし、何よりも元は貴族で色々と教育も受けている。前に出ない性格だけど、この二人相手なら……)

騎士団長の副官、もしくは副団長に考えて本陣に呼んだのだが、思っていたよりも悪くない人選だった。

(あ、いいかも)

俺は宝玉を握ると、言いたいことを理解した五代目が。

『……妥協案にしては、いいんじゃないか?』

三代目は。

『個性が強すぎるし、無個性な騎士団長はバランスが取れて良いかもね』

四代目が。

『悪くない。というよりも、この二人がいるなら、かえってこれくらいの方が……』

七代目は、クレートさんやアルバーノさんよりも相応しいと思ったのか。

『苦労もしてきたなら、いいのでは? 真面目そうですし。問題は二人が認めるか、というところですな』

俺は頷きつつ、立ち上がって忙しそうにしているノイさんに近付いた。ノイさんは、不思議そうな表情をして。

「あの、何かミスでも?」

俺がミスを指摘しに来たのかと、身構える。

俺はノイさんの肩に左手をおいて、右手は親指を突き立て。

「おめでとう。次の騎士団長は貴方です!」

「……え?」

周囲が静かになると、次の伝令が駆け込んでくるまでテント内の時間が止まったかのように静かになった。

――セルバの都市に入り込んだロルフィスの騎士たちは、王宮に到着すると王族を全員拘束した。

アレットが駆けつけたときには、金の鎧を着たダリオはロルフィスの騎士たちに囲まれ床に倒れていた。

床には血が広がっており、アレットは顔をしかめる。

(……恨みを買いすぎたな、ダリオ王子)

アレットは、王宮内に入った騎士団長に報告をするために来た。騎士団長の所在を確認すると、アレットは宮殿内を足早に歩いて騎士団長のいる部屋を探し当てる。

慣れない王宮内で、巡回していた兵士に声を何度もかけて部屋に到着すると、アレットは騎士団長に報告をした。

「アレット隊、西側城壁で抵抗していたセルバの部隊を制圧しました!」

すると、大臣クラスの執務室で、椅子に座った騎士団長が報告書を見ながら頷いた。

「ご苦労だった。報告はそれだけかな?」

すでに都市内部では、小競り合いもなくなり各場所でロルフィスの旗が掲げられている。

都市に突入してから、二日目に入りロルフィスの王城には、勝利を報告しに騎士が向かっていた。

アレットは、疲れた表情をしている騎士団長に言う。

「いえ、まだあります。個人的な報告というか、提案です」

勝利したとあって、騎士団長はどこか機嫌が良かった。書類から視線を外すと、アレットに顔を向け。

「個人的な、ね。どんな提案かな?」

すると、アレットは――。

「はい! アンネリーネ王女殿下と、ザインの聖騎士団団長――ライエル・ウォルトの婚約です!」

アレットがそう言うと、騎士団長は眉をしかめて。

「お前、疲れているのか?」

そう返事をした。

だが、アレットは本気だった。本気で、提案していたのだ。ライエルは女好きで問題もあるが、今回の功績は誰よりも大きい。

ザインの軍をしっかり統率しており、その指揮能力の高さも見せつけていた。

「本気です! 元は大国バンセイムの伯爵家の出自! しかもウォルト家と言えば、名門ではありませんか! 格の上でも問題は少ないはずです。そうすれば、ロルフィスは強い王を得られます!」

前のめりになって説明するアレットに、騎士団長は少し引きつつも。

「いや、格以前に追い出されては意味が……それに、ザインが手放すとも思えないんだが? 聖騎士だったか? ザインの聖女と噂があるようではないか」

エルフがロルフィスまで移動し、歌を歌っていたのだ。

そして、噂はロルフィスにも届いていた。勇敢な英雄として、ライエルの名前が広がり始めていた。

「正式に発表する前に、こちらに立ち寄らせて婚約でも発表すれば問題ないはずです!」

騎士団長は小声で。

「お前、そんな考えだからいつまでも……」

「何か?」

アレットは聞こえないフリをして、騎士団長に更に詰め寄った。騎士団長の机の上に両手を置き、顔を更に近づけていた。

「ち、近い、近い! か、仮に、だ。仮に、だぞ? 上手く連れ出せても、王女殿下にしてみれば、聖騎士は憎い相手だ。そのような相手に……いや、待て」

騎士団長は口に手を当てて考え込む。

アレットはその様子を見ながら。

「あの王女殿下です。ダリオの事と一緒に、嫌悪も忘れている可能性があります。それに、成功すれば、我々はザインに今以上の立場に。聞けば、騎士団長の地位も臨時であるとか? つまり、ザインから離れる気がある今なら……」

ライエルが、ザインの騎士団長は臨時で引き受けている事をアレットは知っていた。それは、騎士団長も同じである。

口から手を離し、騎士団長は。

「貴族の結婚……本人同士の意思など二の次など良くある事だ。だが、アンネリーネ様は、英雄とか好きだったな」

アレットは頷きながら。

「顔も悪くない。それに、血筋は名門……ダリオがいない今が、絶好の機会かと!」

騎士団長は、背もたれに背中を預け。

「……城にいるロンボルト殿に提案しておこう。早馬を走らせる。お前は、ライエル殿に話をつけろ」

「はい!」

アレットは、部屋を飛び出すように出ると、ザインの部隊が野営をしている場所まで急ぐのだった――。

セルバを侵略し、全てが終わったと思っていた俺は、なぜかロルフィスの王城に招かれていた。

アレットさんに呼び出され、今後の友好のために正式に以前の謝罪をしたいと呼び出されたのだ。

俺の仕事はほとんど終わっており、後はザインで正式にノイさんに騎士団長職を譲れば終わりである。

クレートさんは反対し、アルバーノさんは受け入れていた。クレートさんの方には、書類仕事ができるのかと確認をすると、難しい表情で渋々納得した。

アルバーノさんは、冒険者から抜け出してザインの騎士になったのだ。書類仕事など元からできないと、ノイさんに仕事を丸投げするつもりのようであった。

(いや、俺もザインに戻って引き継ぎをしないといけないんだけど?)

王城の謁見の間は、ゴテゴテした装飾が取り払われていた。

四代目も。

『あぁ、元はこういう感じだったんだ。落ち着いた感じで俺は好きだね』

五代目が。

『前は婚約者の趣味でゴテゴテしていたからな。さて、それにしても目の前の王女様の目が気になるんだが?』

前回、かなり酷い謁見をして、俺も申し訳ない気持ちがあった。だから、こちらも謝罪する気持ちで足を運んだのだ。

運んだのだが――。

「あの、ライエル様のご趣味は?」

三代目が、呆れた声で。

『これ、謝罪とかじゃないよね? というか、頬を染めてない? なに? ライエル、何かやったの? もしかして、いつの間にからいえるサン状態?』

成長などまだ来ていない。来ていれば、俺は全力でこの謁見を拒否していた。互いに不利益しか生まない結果になるのは分かりきっているからだ。

紫色の髪を落ち着かない様子で触るアンネリーネ王女殿下を前に、俺はどうしていいのか分からなかった。

何か得体の知れない恐怖を感じ、変な汗が出てくる。

(いや、あんたこの前は俺に痴れ者、って言ったよね?)

「しゅ、趣味ですか? あ、あの……それはどういった意味が?」

すると「キャッ!」などと言って、両手で頬を押さえた王女殿下が、体をくねらせた。なにこれ、凄く怖い。

王女殿下の隣に立つロンボルトさんが。

「そう言えば、ライエル殿のお仲間は綺麗な方が大勢おられますね。男一人、大変なのでは? どうですかな、ここは正妻をお決めになられては? それに、いつまでも冒険者暮らしというのも大変では?」

謁見の間には、俺の仲間も全員招待されていた。ロンボルトさんの視線が、仲間に向いている。だが、その視線は美人を眺めているというものではなかった。

(こいつ、何を言っているんだ?)

そう思っていると、七代目が理解したのか俺に言ってくる。

『ライエル、チャンスだ! この王女殿下、どうやらお前に惚れたらしいぞ! 理由は分からんし、分かりたくもないが、このままいけばロルフィスが手に入る!』

三代目も。

『お、悪くないね。丁度、大きな問題もあったし、ここら辺で一国を押さえておくのも悪くはないかも。ロルフィスの兵力は自由に使えるわけだし』

五代目が。

『……そういうの、どうかと思うけどな。いや、必要ではあるんだが、なんと言うべきか……アレは駄目じゃないか?』

四代目は、五代目の意見を切り捨てる。

『少々の問題は、この際は気にしないことにしましょう。ライエル、ここは気を持たせる発言をして様子をみるんだ。いいか、これは勝つためだ! セレスに勝つために必要な事なんだ! 非情になるんだ、ライエル!』

俺はセレスに勝つためと言われると、何やら怖いがロンボルトさんに。

「そ、そうですね。まぁ、男一人で大変な事もありますが」

すると、ミランダが。

「あら、酷い。こっちも色々と気を遣っているのに。それより、ハッキリ言って貰えませんか? どうしてライエルをこの場に呼んだのか?」

喧嘩腰のミランダに、周囲が少し厳しい視線を向けていた。だが、ミランダは怯まない。

ロンボルトさんは。

「……後で話そうと思ったのですが」

どうやら、王女殿下が暴走してしまったようだ。この場では互いに謝罪をして、後で俺だけ呼び出すつもりだったらしい。

「ロルフィスは、ライエル殿の今回の功績を高く評価しております。どうでしょう? 次の王位をその手にされてみませんか、聖騎士殿?」

宝玉内。

四代目が歓喜した。

『よし来た! これでロルフィスをゲットだ! ここを足がかりに、ザインを押さえて周辺を支配すれば――』

だが、ここでニコニコしていたノウェムが口を開く。

「それはできません」

「え?」

俺もつい振り返ってしまった。周囲の視線が集まると、不満そうな王女殿下がノウェムに向かって言い放つ。

「何故です! 私では不満とでも? 希代の英雄、その血を取り込むのは王族の責務でもあります!」

宝玉内の五代目が。

『いや、違うと思うな。もっと他の大事な部分に目を向けろよ』

七代目も。

『……ノウェムが反対する、だと。ここでロルフィスを手に入れるのが、どういう意味かを分かっていないはずがない! ライエル、ノウェムを説得だ!』

ニコニコしたノウェムが、笑みを消して真剣な表情で王女殿下を真っ直ぐと見る。すると、王女殿下口をパクパクさせ、ノウェムに何も言えなくなった。

「ライエル様とアンネリーネ王女殿下とは身分が違います。それに、ライエル様には大きな目的もある。王女殿下との結婚が、双方のためになるとは思えません」

すると、ロンボルトさんが。

「大きな目的、ですか?」

ノウェムは頷くと。

「それに、ウォルト家には家訓があります。歴代当主が遵守した家訓……それをここでは言えませんが、それを破ることになります。この結婚、認めるわけにはいきません」

周囲からは「無礼な!」などという声も聞こえるが、元から俺のような者が王位に就くのを認めたくない者も多かったのか、頷いている貴族たちもいた。

ロンボルトさんは、周囲の雰囲気を察して。

「……そうですか。個人的に目的には興味があります。ロルフィスは、ライエル殿に大きな借りがある。助力出来ることがあれば、助力しましょう」

椅子に座り、落ち込んで俯いて膝の上に手を置いている王女殿下。

(可哀相とは思うけど……何だろう、凄く安心したのも事実なんだよな)

きっと、これから良い相手が見つかると、信じる事にした。

俺たちは、以前の謁見での謝罪をして、双方手打ちとする事にした。

謁見が終わり、俺たちがザインへと向かう途中。

ポーターの天井に座った俺は、一緒に見張りをする事になったノウェムに聞く。

空は青く、雲は白くて日が出ていた。刺すような日差しを受けながら、俺はノウェムに。

「なぁ、なんであの時の提案を蹴ったんだ? 受ければロルフィスが手に入ったのに」

すると、ノウェムはキョトンとした顔をした。まるで、それが当然のように言うのだ。

「い、いえ、あの……だって、ウォルト家の家訓に合わない方でしたので。いくら王女殿下といっても、ライエル様の格とは釣り合いませんし」

俺はノウェムの顔の前に手のひらを突き出し、少し待てと言いながら。

「え、つまり……本当に家訓だけで拒否したと?」

ノウェムは笑顔で。

「はい。ライエル様に、相応しい方ではありませんでしたので」

凄く良い笑顔だった。

そんな笑顔で、ノウェムは王女殿下が俺に相応しくないと言い切るのだった。

内心。

(その家訓を作った初代は、酒の席で適当に言っただけなんだけど……そう言っても、信じて貰えないよね)

グッタリした俺は、ノウェムに言う。

「日が強くなってきたから、ノウェムは中に入りなよ」

「大丈夫です。魔法で日の光を軽減できますから。ライエル様の肌もお守りしないと」

「お、おう」

忘れていたが、やはりノウェムは俺に対して過保護だった。宝玉内からは、歴代当主たちの声がする。

三代目から順番に。

『ノウェムちゃんが言うなら仕方ないね』

『冷静に考えれば、あの女の面倒を見ながら領内の統治は厳しいですね』

『こいつら、手のひら返しが早いな』

『しかしどうします? 緊急を要する大きな問題があるのですが? それを解決する方法を探す必要がありますぞ』

俺たちの目の前にあり、そして緊急を要する大きな問題。

それは――。

(はぁ、今回の戦争で金を使い切ったけど、これからどうすればいいんだ……)

――金銭問題だった。