軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

子どもに人権は無いの?

昼食は 上級食堂(サロン) でマーガレット王女、キース王子、ラルフ、ヒューゴと食べた。8人用のテーブルなので、マーガレット王女と私、そしてキース王子と学友に分かれて食べられるため、お互いにストレスを感じなくて済んだ。

「お昼からの美容は一緒ね。でも、今年は履修内容が変わっている授業が多いから、少し心配だわ。栄養学も実践を入れると仰ったのよ。何をするのか不安だわ」

家政数学も難しくなったみたいだし、裁縫も4年はワンピースだったのにドレスになった。その上、それを着て青葉祭に出なくてはいけないのは厳しい。

「栄養学の実践? 何かメニューでも作るのでしょうか? 経営学も内容に実践を取り入れていました。10ロームで事業を立ち上げて黒字経営しなくてはいけないそうです。10ロームの価値がよく分からないから困っていますの」

内職はしているけど、めちゃくちゃ安すぎて10ロームの価値が分からないのだ。苺の値段を商店で調べた程度しか異世界のお金の価値を知らない。賃金っていくらなのだろう。シャーロット女官は公務員だと父親は言ったけど俸給はいくらぐらいなのかな? やはり街に出てみたい。なんとかメアリーを説得しなきゃ。

私たちが履修内容の変化について話していると、隣からキース王子が加わる。

「おや、家政コースや文官コースも履修内容に実践が増えたのですね。騎士コースもかなり変わったとクラブの先輩が話していた」

「まぁ、そうなのね。育児学も少し変わってくれたら良いのに、あれは退屈だし、馬鹿馬鹿しいわ」

なんて呑気な話をしていたが、美容の授業。大変でした。

「私はマリア・デスパル。美容は実践が大切です。さぁ、この子達を綺麗にして下さい」

教室には椅子に子供が何人も座っていた。何処から連れて来たのか分からず、皆、騒つく。

「デスパル先生、この子達は誰ですか?」

キャサリンは眉を顰めている。どう見ても貴族の子では無さそうだ。

「王都ロマノには何軒もの孤児院があります。この子達は日頃、美容には縁遠い生活をしていますが、10歳になると社会に出ていかなくてはいけません。なるべく綺麗にした方が良い就職口に恵まれるのよ。さぁ、頑張って綺麗にしてね」

そこからは競争だ。なるべく綺麗な子を取り合う。マーガレット王女も可愛い子をゲットしていた。残った子は2人。2人とも髪の毛ももつれて薄汚れていた。

異世界って過酷な世界だね。子どもを授業に使って良いのか? なんて考えている間に出遅れたのだ。

「2人ともこちらにいらっしゃい。私はペイシェンス。貴女達の名前は?」

おどおどと「キャリー」「ミミ」と答える。うん、キャリーもミミも素材は悪くない。

「身綺麗にしていた方が就職には有利よ。大丈夫、私が綺麗にしてあげるわ。それと髪の毛の整え方も教えるからね」

教室にはブラシやリボンなども揃っている。これなら楽勝だよ。

先ずはキャリーとミミに生活魔法を掛ける。

「綺麗になれ!」生活魔法、マジ便利。

着ている服まで綺麗になったよ。顔も髪の毛もピカピカ。

「では、先ずはキャリー。この椅子に座ってね。どんな髪型にしたい?」

もじもじしながら「メイドになりたいから髪をまとめたい」と答える。

「そっか、じゃあやって見せるから、自分でもできるようにならないとね」

1番簡単なお団子を作って見せる。ピン1本で留めるやり方だ。

「ほら、簡単でしょ。ミミの髪の毛を整える間、自分でやってみてね」

ミミもメイドになりたいと言うので、同じ髪型だ。

2人に練習させると、すぐにできるようになった。

「じゃあ、応用篇に挑戦する?」

2人が元気よく頷く。リボンもいっぱい用意してあるもの。目がいくよね。

「好きなリボンを選んで良いわよ」

キャリーは茶色の髪に似合う赤色のリボンを選ぶ。ミミは赤毛なので赤色やピンクは選べない。

「キャリーのリボン、私には似合わない?」

髪に当てて見るが、目立たない。

「そうね、グリーンのリボンはどう?」

ミミの赤毛にグリーンのリボンはよく似合った。

「自分でできる髪型なら、2つに分けて編み込みを2本作るでしょ。そしてそれを後ろで纏めて、リボンでくくるの」

キャリーの髪の毛を編み込んで纏めるのをミミは真剣に見ていた。

「ミミ、自分で編み込んでみる?」

やらせてみないと、自分でできない。

「はい」と元気よく返事をする。キャリーも解いて自分で編み込んで纏める。

「2人ともよくできたわ」と褒めていたら、デスパル先生が後ろから「ペイシェンス、貴女には修了証書をあげましょう」と声を掛けてくれた。

「先生、この授業、子ども達はどうなんでしょう」

修了証書は嬉しいけど、中には悲惨な髪型になっている子もいる。令嬢達はメイドに髪型を整えて貰っているから、自分では何もできないんだもの。

「そうね。私もここまで酷いとは思って無かったの。ペイシェンス、貴女ならどうにかできるでしょ。ジェファーソン先生から聞いているわ。このまま帰したら、孤児院から苦情が来るレベルよ」

そうじゃなくて、子どもの人権はどうなるのか聞きたかったのだけど、異世界では考慮されないんだね。

「分かりました。残りの子をここに集めて下さい」

14人の子どもに「綺麗になれ!」と生活魔法を掛ける。変な髪型にされて、ぐちゃぐちゃになっていた髪もツヤツヤになった。ついでに古びていた服も新品同様になった。

「はい、見ててね」

全員に簡単なお団子の仕方を教える。

「上手にできたわね。キャリー、ミミ、今度は手伝ってね」

私は1番小さな女の子の髪の毛を編み込んで纏めて見本を見せる。

「皆、やってみて。分からない子は手を上げてね。キャリーとミミも教えてあげてね」

全員が自分でお団子と編み込みの纏め髪ができるようになった。やれやれ疲れたよ。

こんな迷惑な授業の材料にされたけど、子ども達は綺麗になったと嬉しそうだ。それだけが救いだよ。それにお土産に櫛とリボンも貰ったと喜んでいる。異世界は身分制度もあって、生きるのが辛い世界だ。そんな事を考えているのに、頂点に近いマーガレット王女から愚痴られた。

「ペイシェンスはやはり修了証書なのね」

そんな愚痴より、デスパル先生に意見がある。

「先生、この遣り方で良いのでしょうか?」

デスパル先生もここまで出来ないとは思っていなかったと愚痴る。

「私は良いアイデアだと思ったの。美容の授業にボランティアを取り入れるつもりだったけど、これだと被害を与えてしまうわ。次の授業からは、お互いの髪で練習しましょう」

教室に悲鳴が上がる。クラスメイトに髪の毛をぐちゃぐちゃにされるのは御免なのだ。身勝手だよね。でも、変な髪型で学園内を歩くのが嫌なのも分かるよ。

「ねぇ、ペイシェンス。その修了証書、デスパル先生に返上しなさい。そして、私と組みましょう」

マーガレット王女の無茶振りは、笑顔のデスパル先生に拒否された。

「マーガレット王女の髪は、ペイシェンスが整えているのね。素晴らしい腕前だわ。皆様、この程度できないと留年ですからね」

クラスに悲鳴が響いた。

「他の科目に移るべきなのでは?」真剣に話し合っている。

何だか、変化が津波のように来ている感じだ。でも、法律と行政は不変だね。あと、育児学も。