軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

お礼をどうしよう?

リチャード王子から 御用達(ロイヤルワラント) を頂いた。お二人を見送ってから、じんわりと喜びが込み上げている。

転生した途端の極貧暮らしの中、愛しい弟達と別れて寮に入り、マーガレット王女の側仕えに任じられ、本当に不満に思っていた事を思い出す。

でも、それが今の私を作っている。前世の知識もあるし、ペイシェンスが持っている生活魔法のお陰もあるけど、マーガレット王女の側仕えをしていた事から発展した事も多いんだよね。

ただ、パーシバルとの婚約は、アマリア伯母様からの縁談だったし、目の前に居座っているゲイツ様との腐れ縁は、カザリア帝国の遺跡が結んだのだ。

元ペイシェンスでも、遠縁だからパーシバルとの縁談はあったと思う。彼女なら賢くてお淑やかで、パーシバルの赴任先にもついて行って、陰から支える外交官夫人になったのかもしれない。ズキン! と胸が痛む。

目の前で、ソースの陳列棚を真剣に見ているゲイツ様とは、元ペイシェンスだったら無縁だったのかしら?

いえ、きっと賢い彼女は、サミュエルの家庭教師を頼まれただろうし、夏休みに弟達とノースコートに招待されただろう。

それに、あの地下通路を発見したのはナシウスなのだ。錬金術クラブには、多分、元ペイシェンスは入らないだろうから、夏合宿状態にはならなかっただろう。

でも、ナシウスが落ちたのは防げたかわからない。サミュエルと友だちになり、あの子は遺跡に興味を持って何回も見学に行きそうだもの。

元ペイシェンスも弟愛が激しい。だって、死に際に異世界から弟達の世話をさせる為に私を転生させたんだから。よく分からないけど、多分ね?

きっと、地下通路に落ちたナシウスを自分の手の中に転移ぐらいさせただろう。

ただ、ゲイツ様との関係はここまで濃密になったかと言うと、ちょっと違う気がする。

ゲイツ様に転移の件は追求されただろうが、ああ見えて、ゲイツ様は女性に優しい。本当にお淑やかな元ペイシェンスが心から困っていたら、強要したりしなかったと思う。

まして、冬の魔物討伐に元ペイシェンスを連れていくなんて、絶対にしなかったよね。

つまり、ゲイツ様とここまで腐れ縁的な関係になったのは、私の迂闊な言動のせいなのだ。

「ペイシェンス様、ここに並んでいるソースは全種類頂きます!」

それは、良いから頷く。メーガンがすかさず従業員に指示して、注文書に記入させている。

「それと、前に頂いたスイートチリソース、この前のバルサミコ酢が欲しいです」

うっ、それは困る。

「スイートチリソースは、領地で作っておりますから、大丈夫ですが……バルサミコ酢は、今年は少ししか作っていませんの。この前、お分けしただけですわ」

ショックを受けたみたいだけど、無い袖は振れない。

「なぜ、もっと作らなかったのですか!」

そんな事を言われても……上手くいくかわからなかったんだもん。

こんなぐだぐだした会話を続けている場合じゃない。王妃様にお礼の手紙を書かなきゃいけないんだ!

「ゲイツ様には、冬の魔物討伐の時にチョコレートやティーバッグ、それに日持ちのする焼き菓子を差し入れするつもりです。お楽しみにして下さい」

「えっ、そうなのですね! それは楽しみです!」

これ、効果覿面! ほくほくとゲイツ様は退場してくれた。

ここから、メーガンとアダムと一緒に王妃様への手紙に何かお礼の品を付けるべきではないかと話し合う。

「あのう、バーンズ商会のパウエル支配人さんに相談しては如何でしょう。それか、バーンズ公爵に報告をかねて、ご機嫌伺いをされても良いと思います」

そうだ! ここは領地の特産品店だけど、元々はバーンズ商会に二人もフロアマネージャーを世話して貰ったり、発明品をあれこれ商品化して売って貰っているんだ。

「それは、良いですわね! 社交界シーズンでお忙しいでしょうが、手紙で面会のご都合を聞いてみましょう」

パウエル支配人さんと、バーンズ公爵、どちらにもご都合が良い時に訪問したいと連絡を取る。

返事が来る間も、H&G商会の開店準備に忙しい。

「何軒かは、もう予約注文分は配達しても良いかもしれませんね」

明日のプレオープンで、それをする予定だったけど、リチャード王子、キース王子、ゲイツ様からも大量の注文があった。

明日だけでは、配達が終わりそうにないんだ。

「それは良いと思いますわ。ただ、プレオープン前ですから、選んで配達致しませんと……」

大量注文の第一騎士団、魔法省、王宮繋がりでリチャード王子、キース王子、それにソニア王国大使館、デーン王国大使館、バラク王国大使館に配送する事にした。

これだけで、倉庫のストックの半分が無くなりそう。

「予約以外の店頭販売は、数に制限を掛ける必要がありそうですね」

アダムが冷静に指摘する。

「ええ、バーンズ商会もチョコレートはお客様に一枚だけと限定販売されていましたわ。今でもかしら?」

これもパウエル支配人さんに質問したいな。

先ずは、第一騎士団に納入する品物を荷馬車に乗せる。まぁ、前向きに考えたら、予行演習になるよね。

パーシバルに 御用達(ロイヤルワラント) を貰った事を手紙で知らせた。

すぐにH&G商会に来てくれる。パーシバルも卒業の単位はほぼ取っているから自由が多いのもあるけど、一緒に祝ってくれるのは嬉しいね!

「おお、凄いじゃないですか!」

玄関の扉の上のリチャード王太子の 御用達(ロイヤルワラント) を一緒に並んで見上げる。

「ええ、でも実のところ、意味をよく理解できていないのです。勿論、とても名誉な事だとは感じているのですが……」

パーシバルも、その点は同じみたいだ。貴族だもんね!

「そうですね、それはバーンズ公爵にお聞きになった方が良いかもしれません」

だよねぇ!

「今、バーンズ公爵とパウエルさんにお手紙を書いて、お返事待ちですの」

パーシバルは、手紙を貰った瞬間に来てくれたけど、彼方は色々な用事もあるだろうからね。

二人で事務室でお茶を飲みながら、王妃様に何をお礼するべきかと話し合う。

「H&G商会の 御用達(ロイヤルワラント) のお礼なのですから、やはり商品は欠かせないと思います」

「そうなのですが、リチャード王子とキース王子が山ほどソース類は買われたのです」

ちょっと二人で考える。こうして、悩むのも二人だと楽しいね!

「あっ、リチャード王子もキース王子も魚介類は購入されませんよね?」

「ええ、勿論! ああ、それは良いですわ」

内陸のロマノでは、魚介類は真冬にちょこっと出回るだけだ。それに、鮮度が落ちている場合もある。

ゲイツ様が急速冷凍庫を作って下さったので、うちの魚介類の冷凍品は質が良いんだ。砂糖ザリザリのケーキは駄目だったけど、腕の良いシェフなら、上手く調理してくれるだろう。

「それと、グレンジャー海老のテルミドールのレシピを添えて差し上げると良いと思いますよ。母もパーティで見栄えが良いと褒めていましたから」

あれは、前世の結婚式の披露宴でもよく出た料理だからゴージャス感があって良いと思うよ。

メアリーがグレアムを使いに出して、屋敷から取ってきた最高級の便箋で、丁寧に王妃様へのお礼状を書き、別の封筒にレシピも詳しく書いて添えておく。

冷凍車もH&G商会には備えてあるから、そこにマッドクラブ、グレンジャー海老を積む。王妃様への手紙は、メアリーが女官に渡す。

ラッキー! キャリーを交代に来させているけど、メアリーより監視が緩いんだよね。若いカップルを邪魔しちゃいけないと、キャリーには遠慮する心遣いがあるんだ。

そんな事を考えていたけど、バーンズ公爵とパウエルさんからの返事が届いた。甘いデートにはなりそうにないね。