軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

久しぶりの王宮

王宮に行くのは午後からなのに、朝からメアリーが張り切っている。

ドレスは決まっているけど、買った宝石のどれかをつけて行かせたいみたい。

「ダイヤのピアスはさりげなくて素敵ですが、まだファーストピアスを外さない方が良いですし……」

メアリーは宝石店の店員さんに聞いた通りに、夜には消毒液で耳の穴の周りを丁寧に拭いてくれている。

でも、これって生活魔法で「綺麗になれ!」で済ませても良いと思うんだよね。

前世でもファーストピアスって、ちょっとダサかった。こちらのも、金のシンプルなピアスだ。

フック型のピアスをする事が多かったけど、こちらのはキャッチ式みたい。

半貴石でなら、フック型でも良いかもね。ゆらゆら揺れる小さなピアスが好きだったんだ。

午前中は、ナシウスもヘンリーもお勉強だから、私も明明に貸してもらったカルディナ帝国の物語を辞書片手に読む。

「これって勧善懲悪の話みたいだわ」

ローレンス王国の子ども向きの童話も勧善懲悪っぽいのが多いけど、カルディナ帝国のは特に顕著な感じ。

絵に描いたような悪代官が出てきて、都からの巡察使に子どもが訴えて、罰を与えるとか……水戸黄門っぽい本だよ。

でも、カルディナ帝国の各地方に行くから、それぞれの土地柄がわかって面白いね。

北部では、冬に備えて食料の備蓄をしなきゃいけないのに代官が取り上げるとか。

内陸部では水不足で困っているのを、巡察使一行の中の導師様が雨乞いの儀式をして助けるとか。

これは、カルディナ帝国のプロパガンダをかねているのかな? 実際の巡察使がこんなに問題を解決しているのかどうかはわからないけど、地方より都の権威を高くしようとしている。

「お姉様、真剣に読んでおられましたね」

ナシウスは、初等科の勉強は終えているから、中等科の予習をしている。

「ええ、明明様に貸していただいたカルディナ帝国の子ども向けの童話なのですが、お国柄が出ていて面白いわ」

ナシウスは、パーシバルの影響なのか、フィリップスの遺跡巡りの夢に同調しているのか、外交官になりたいと言っている。

「それは興味ありますね。私も中等科になったら、カルディナ帝国語を選択します」

「ああ、でも王立学園では、カザリア文字の授業しかないのですよ。少しだけカルディナ帝国語も習いますが……だから、本を読むのも辞書頼りなのです」

ナシウスが興味がありそうなので、簡単な文法を教える。

「私も読んでみます!」

昼からは王宮なので、ナシウスに辞書と本を渡しておく。

早昼を食べてから、張り切るメアリーに任せて、ドレスを着替える。

ピンク色の薔薇の刺繍のあるドレス。婚約指輪のオパールとお揃いのネックレスをする。

「お嬢様、素敵ですわ!」

メアリーは身贔屓が凄いけど、なかなか似合っているんじゃないかな? 眉墨で少し眉をキリッとさせ、色付きのリップクリームを付ける。

持ち物は、モラン伯爵夫人と出席を決めたパーティを書いた手帳を小振りのビーズバッグに入れて持って行く。

マーガレット王女が出席するパーティには、私も出席する事になりそうだからね。

でも、領地に月一には行きたいから、無理な日程の時は、学友のエリザベスやアビゲイルが一緒に出るように調整してもらう。

それと、マーガレット王女のエスコート役は誰になるのだろう? 婚約が正式に決まったのなら、パリス王子だけど……。

勿論、エスコート役がいない令嬢もいる。これから、社交界で相手を見つけるのだから。

ただ、そういう場合は後見人の母親や父親が付き添うのだけど、国王陛下や王妃様が全てのパーティの付き添いをする訳にはいかないよね?

そんなことを考えながら、王宮に行ったら、シャーロット女官に王妃様の部屋へ案内された。そこには、マーガレット王女もいて、目で熱烈歓迎された。

夏の離宮で、パリス王子が国に帰ってからは、王妃様からとても厳しく指導されたみたい。

もしかしたら、ソニア王国の未来の王妃になるんだもんね。そりゃ、王妃様も気合いが入りそう。

その成果があったのか、王妃様の用事が済むまでは、マーガレット王女は口を開くのを我慢している。

「ペイシェンス、よく来てくれました」

王妃様に挨拶して、椅子に座るようにと言われる。

「社交界デビューの準備は大丈夫ですか?」

母親がいない私の心配をして下さっているけど、宝石やドレスを頂いたのだ。

「王妃様のお心遣いのお陰で……」とお礼を言っておく。

王妃様が満足そうに頷き、シャーロット女官に合図すると、ベネッセ侯爵夫人が王妃様の部屋に来た。

「私がマーガレットの出席するパーティに全て行くのは難しいので、ベネッセ侯爵夫人に後見人をお願いしたのです」

王妃様の実家だから、不思議ではない。それに、ベネッセ侯爵家には後見人が必要な令嬢はいないから、好都合なんだね。

そこからは、ベネッセ侯爵夫人と王妃様とで、マーガレット王女が出席しても良いパーティを選んでいく。

私もマーガレット王女も口を出したりしない。ほぼ、モラン伯爵夫人と同じだったしね。

ただ、マーガレット王女は、各公爵家のパーティに招待されるのと、ベネッセ侯爵家のパーティも加わったよ。

「ペイシェンス様の予定はどうなっていますか? モラン伯爵家と相談したと思いますが……」

ベネッセ侯爵夫人に、バッグの中から予定表を出して渡す。

「バーンズ公爵家は予定に入っているのですね。あら? ラフォーレ公爵家は? 確か、同じクラブだと思っていましたが?」

困った! と思っていたら、マーガレット王女が助けてくれた。

「ラフォーレ公爵は、ペイシェンスの音楽の才能に惚れ込んでおられるので、パーシバルは近づけたくないのでしょう」

王妃様は察していたみたいだけど、ベネッセ侯爵夫人は初耳なのか驚いている。

「まぁ、年齢が違い過ぎますわ! でも……そうですわね。婚約者の意見に従った方が宜しいでしょう」

王妃様が公爵家のパーティは欠席するのは好ましくないと困った顔だ。

「マーガレットだけでは、話の相手にも困るでしょう。ペイシェンスが行かないパーティは、学友のエリザベスかアビゲイルを同行させましょう」

公爵家のパーティは、格式が高そうで、私的には遠慮したいな。でも、何件かは行く事になりそうな予感。

それとベネッセ侯爵家のパーティも出席に決まった。これは、ゲイツ様の兄上のお嫁さん選びの為に開くから、独身の令嬢をいっぱい招待して舞踏会を開くそうだ。

もしかしたら、兄上だけでなくゲイツ様のお嫁さんを選びたいのかもね。

「ペイシェンス様が出席されるなら、あの子も引っ張り出せるでしょう」

ベネッセ侯爵夫人は満足そうに微笑んでいるけど、ゲイツ様が出席するかは知らないよ。