作品タイトル不明
試してみよう!
ゲイツ様の魔法合宿、思ったより真面目に指導をして貰っている。
やはり、竜が飛来してくるのかも? 駄目、駄目! フラグを立てたくないから、その事は出来るだけ考えないようにしているんだ。
ロマノ大学で、気候の変動と竜の繁殖期の関連を調べては貰っているけど、竜が北の大陸に飛来した五百年前は、ローレンス王国は存在していなかった。つまり、ロマノ大学も無かったんだ。
だから、本当ならエステナ聖皇国に資料を探しに行きたい所だけど、ロマノ大学と教会は仲が悪い。これは、難航しそう。
ゲイツ様は、ゲイツ様で自分が大きくした魔法合宿が気に入らないみたい。
「ペイシェンス様、本当なら転移魔法をちゃんと使えるようにしたいところですが、ちょっと人が多すぎますね」
ルーシーやアイラ、それにアルーシュ王子やザッシュを呼んだのはゲイツ様じゃん。
初めは、パーシバルや弟達との夏休みを邪魔される感じがして、本当に腹が立ったけど、今は良かったと思っている。
領地の改革も手伝って貰っているし、他の人の意見も貴重だからね。
それと、私は、友達が少ない。こちらの貴族の令嬢は、結婚前はそんなものだとリリアナ伯母様は言っていた。
結婚して、旦那様の為の社交をしていくうちに、気の合う貴婦人と仲良くなっていくものだと。
でも、私はそれは寂しいと思っていたんだ。マーガレット王女やリュミエラ王女とも友情を感じているけど、やはり立場が違うから気楽には付き合えない。
ルーシーやアイラ、本当に魔法が好きで、この合宿中にも伸びていっている。
それに、エリザベスやアビゲイルのような上級貴族の令嬢とは、少し違うんだ。自分で道を切り拓こうとしている。
私は、エリザベスやアビゲイル、そしてハンナとも友達だし、ずっと付き合っていきたいと願っているけど、結婚相手次第って感じがするんだよね。
まぁ、ルーシーとアイラは魔法省に入りたがっているから、ちょっとそこは困る点ではある。ゲイツ様、もしかして、それを狙っているの? 疑う面もあるけどね。
クラリッサも、錬金術をロマノ大学で学んで、魔法省に入りたいみたい。
父親の考え方が古いから、学費の援助は難しそう。この夏休みみたいに、学費を稼ぐチャンスを与えてあげたいな。
転移魔法の練習ができないなら、何をしているのか? 結構、厳しく指導されているんだよね。
特に、攻撃から身を護るやり方とか、かなりハードだ。
ゲイツ様は、どうも私には甘いから、ベリンダ、ルーシーやアイラ、そしてアルーシュ王子やザッシュの攻撃を躱しながら反撃している。
勿論、危険だと思ったら、ゲイツ様が、素早く止めるんだけどさ。魔法って、こんなに簡単にキャンセル出来るものなの? ちょっと驚く。
「ペイシェンス様、そろそろ身体強化を学んだ方が良いですね」
無茶言うよ! 生活魔法と身体強化は、別物だよね。
「アルーシュ王子、前にペイシェンス様に生活魔法を教えて貰ったのだから、今度は身体強化を教えてあげて下さい」
アルーシュ王子も困惑している。どう見ても、私は身体強化どころか、運動神経も良さそうにないからね。
「それは、少し難しいです」
そう! そう思う。
「ふぅ、身体強化なら、騎士の方が得意ですね。そろそろ、騎士との連携を練習しても良いのかも?」
パーシバルと一緒に練習できるのは嬉しいけど、身体強化ができる気はしない。
「ゲイツ様は、できるのですか?」
少し腹が立ったから質問した。
「当たり前です! それに剣の腕前も、普通の騎士程度には磨いていますよ」
うっ、そうだったかも。ヘンリーに剣術指導している時、素人目だけど上手いのかもと思ったんだ。
「ルーシーやアイラも、身体強化を学びましょう」
二人は、魔法関係なら、何でも積極的だ。それに、私よりは運動神経も良い。
「そうだ! ペイシェンス様はヘンリー君に身体強化を教えて貰ったら良いのでは?」
流石の弟愛の深い私でも、ヘンリーに習うのは遠慮したい。
「パーシー様に教えて頂きますわ」と反論したら、却下された。
「パーシバルも、ペイシェンス様に甘いですから駄目です。私が、もっと厳しくできたら良いのですが、唯一のお友だちなので、つい甘くなってしまいます」
唯一のお友だち発言に、ルーシーとアイラが『キャァ!』と歓声を押し殺し、アルーシュ王子とザッシュが驚いていた。二人は賢いから、何もコメントはしなかったけどね。
「アルーシュ王子とザッシュもかなり魔素を取り込めるようになったみたいですから、次のステップに進みますよ」
次のステップ? ゲイツ様が見本で空を飛んでいるんだけど? そういえば、サティスフォード港で流行病の検疫に船に乗る時、飛んでいたかも?
「それ、私も習いたいです!」
ルーシーやアイラは、目がキラキラしている。やはり、身体強化より、風の魔法で飛ぶ方が興味があるみたい。
私は、どちらも遠慮したい気分。
「飛ぶのは風の魔法を使うのですが、空中で体勢を維持するのには身体強化が必要なのです」
ふむ、ふむ、ルーシーとアイラ、アルーシュ王子とザッシュは聞いている。確かに、体勢を維持しないと、ひっくり返ったりしたら大変そうだよね。
「ですから、ペイシェンス様とルーシーとアイラは、身体強化をマスターする必要があるのですよ」
それ、無理じゃないかな? 消極的なのは、私一人みたい。他の四人は、やる気満々だ。眩しい!
「兎に角、試してみましょう。それに、騎士達で風が使える人にも指導しても良いですね」
それ、パーシバルやナシウスも飛べるようになるのかも! そしたら、攻撃から身を躱すのに効果的だよね。
「ええ、試してみましょう!」
急に積極的になった理由を全員が察したみたい。
ゲイツ様の深い溜息が、訓練所に響いた。