軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

溜息をつくと幸せが逃げる

明日は、サティスフォードに行くので、留守の間の事をあれこれ決めておく。

騎士クラブ、魔法クラブの四人は、午前中は勉強! 昼からは、弟達とサミュエルと音楽、乗馬、ダンスの練習。クラリッサは、午前中はメーガンの助手、昼からはこちらに参加する。

音楽は、カミュ先生とサミュエルがいるから大丈夫。

ダンスは、騎士クラブの二人は上手いみたい。身体を使うのは、慣れているからかな? 魔法クラブの二人は、どうなのかな?

騎士クラブの二人は、パーシバルがいるならパトロールに参加させても良いけど、騎士は未だ仮採用期間だからね。

預かり物の令嬢だからさ。私とパーシバルがいない間は、館から出て欲しくない。

なんて事を言ったら、ブーブー文句を言う人が何人か!

「二日間も館から出られないなんて!」

「午後から魔法訓練をしても良いんじゃないかな!」

特にルーシー! 卒業の危機なのにわかっているのかな!

私は、あれこれと忙しいから、聞く耳を持たないと朝食の席を立った。

でも、ベリンダに捕まったのだ。

「ペイシェンス様、乗馬と拘束魔法の練習をしましょう」

にっこりと笑うベリンダ。逃す気はないと顔に書いてある。

「昼からなら、何とか時間を作りますわ。午前中は、ライトマン教授と教会の改築について話し合わないといけませんの」

これは、本当だよ! 頭が痛いんだ。

「わかりました」とベリンダは了承したのに、聞いていた騎士クラブの二人と魔法クラブの二人がぎゃーぎゃー煩い。

「ペイシェンス様がいない二日は仕方ないですが、今日、遠乗りをされるなら一緒に行きたいです!」

ジェニーが騒ぐので、頷く。まぁ、それも、そうかもね。

「拘束魔法の訓練! 前に魔法決闘で拘束魔法で負けたのです。リベンジしたいです!」

「ルーシー様、あの回転する拘束魔法は、無理では? でも、氷の拘束なら、私は火だから何とかなるかも! チャレンジしたいです」

ベリンダ! この二人の前で拘束魔法の訓練なんて口にしたら、大変だよ。目がメラメラ燃えている。

「おや、ペイシェンス様は魔法決闘でお二人を負かされたのか? なかなかやりますね!」

ベリンダは感心しているけどさ。

「お姉様が決闘!」

ナシウス、ヘンリー、サミュエルが驚いて目がまん丸だよ。パーシバルは、噴き出すのを我慢している。

「昼からは、乗馬と拘束魔法の訓練ですわ!」

諦めるしかなさそう。だって弟達の目がキラキラなんだもの。

「私達も参加したいです」

ヘンリーが抱きついて言う。サミュエル、ナシウスは、ヘンリーに言わせたな! 私がヘンリーに一番弱いのを知っている。だって、母親代わりだったからね。

「ええ、一緒に訓練しましょう!」これしか答えは無いよ。

執務室で、パーシバルと一緒にモンテス氏から、貸家、貸店舗の状態を聞く。

「ハープシャーも寂れていますが、グレンジャーの方は早急に改築が必要ですね。雨漏りしていない家を探す方が難しい状態です」

溜息しか出ない。パーシバルがそっと肩を抱いてくれる。

「後は、騎士の家を作らないといけませんが……何軒か多めに作っておきましょう。普通の子爵家なら、四人程度でもよろしいのですが、 馬の王(メアラス) がいますからね。いずれは、馬の生産をしたいです」

つまり、厳重な警護体制が必要なのだ。スレイプニルは貴重だし、戦馬の仔馬も貴重だから。

「それにペイシェンスを護る必要があります」

パーシバルは、あの偽手紙事件から常に心配している。

「モラン伯爵領からも、二名ほど騎士を紹介しようと思っています」

えっ、聞いていないよ? パーシバルの顔を見る。先日決まったのだと笑う。

「前から父上に相談していたのですが、王都にも騎士を常駐させていますから、調整が難しかったのです。でも、何人か息子が騎士になったので、紹介できるようになったのです」

「それは、良いですね! 信頼できる方からの紹介は、有り難いです」

モンテス氏は、面接の予定を立てると喜ぶ。

「ラドリー様がいらっしゃる前に依頼する建物を決めておかなくては! グレンジャー館をホテルにするなら、少し改装も必要では? それと会議室も作りたいですわ」

モンテス氏は、メモを取って聞いていたが、少し考えて口を開いた。

「ハープシャーのボロな宿を買い取って、改築しては如何でしょう? 実は、宿屋の主人から儲けにならないと泣きつかれているのです。あのボロさでは泊まる商人もいないでしょう」

ふぅ、溜息しか出ない。

「秋になれば、ワインを買いに商人も来ます。あの宿では困ります」

「グレンジャー館に泊まって貰えば?」

モンテス氏とパーシバルが苦笑する。

「今のハープシャーのワインを買いに来る商人は、言っては悪いですが、大商人はいないでしょう。もっと、良いワインができるようになり、グレンジャー館に泊まって貰えるような大商人に来て欲しいですね。それに、小麦を買い付けにくる商人もいますよ」

これまでハープシャーとグレンジャーでは、農民は小麦を商人に売って、そこから税金を国の管理人に支払っていたのだ。

「その小麦商人は、ちゃんとした値段で買っているのかしら?」

モンテス氏が苦い顔をする。

「領主がいないと、商人達は安く買い叩く場合もあります。農民は税金を納めないと土地を取り上げられる弱い立場なのを見透かされているので。でも、今年からは私が目を光らせていますから。価格は守らせます」

ふぅ、改築した宿は、今の主人に貸しても良いのだ。それが上手くいかない場合は、他の人を探せば良いとモンテス氏は言うけど、大丈夫なのかな?

「ペイシェンス、宿は必要ですよ。ないと商売や旅行で移動する人が困ります」

確かにね! 貴族は馬車か馬で移動して直接目的地に向かうけど、庶民は町と町をつなぐ乗り合い馬車しかない。

今は、モラン伯爵領かノースコート領に泊まるか、あのボロなハープシャーの宿しかないのだ。

ライトマン教授は、何となく私の頼みを察していたようで、ざっとだけどグレンジャーの教会を見てから来た。

「あれは、もう限界でしょう。建て直す必要があります」

だよね……はぁ、溜息をつくと幸せが逃げていくと言う格言があるけど、溜息しかでないよ。