作品タイトル不明
お泊まりのグレンジャー館へ
剣術の稽古をして、喉が渇いただろうから、お茶にする。
館に入る前に、いつもの癖で全員に「綺麗になれ!」と掛けた。
「これは、凄い!」
あっ、しまったかも? いつものメンバーは、当たり前になってしまっているけど、騎士達やベリンダは、驚いている。
「さぁ、一応は綺麗にしましたけど、手をお洗い下さい」
清潔第一だからね。リラが王都から連れてきたグレンジャー家のメイド見習い達に手洗いのタライや手拭きを持って来させている。
本当ならシャワーを浴びて欲しいけど、今夜はグレンジャー館に泊まってもらうからね。
あちらにもシャワーや浴槽は完備させてある。
お茶は、全員で楽しむ。ヘンリーを仲間外れにはしないよ。ここの主人は私だから、私のしたい様にする。
まぁ、王都のグレンジャー屋敷にいる時から、朝、昼、お茶はヘンリーも一緒だったけどね。
ただ、アルーシュ王子が滞在中は、お伺いを立ててからにしよう。本心は、来なければ良いなぁと思っている。
「あっ、このアイスクリームはメロン味ですね!」
ヘンリーとサミュエルは、瞬殺だった。他の人も早い。
アイスクリームは、溶けるから、早く食べた方が良いのだけど。
お昼のデザートは、メロンだったから、それを活用したのだと思う。エバは節約家だからね。
こちらでは、メロンは一口大にカットしたのをお皿に盛って出すのがエレガントみたい。つまり、皮ぎりぎりまで食べたりはしないのだ。
あれ、前世で何処まで食べるか悩んだんだよね。
なんて思いながら、アイスクリームを食べる。
「これは?」
サミュエルやパーシバルや弟達はいちごのホワイトチョコ掛けも食べた事があるけど、父親には出していなかったかも?
アイスクリームがすぐに無くなるのはエバもわかっているから、ちょっとした摘める物も出してくれる。
「これは、チョコレートの新作ですわ。軽いから、召し上がれると思います」
皆がいちごのホワイトチョコ掛けを堪能している。
「これは食べた事がありません」
メーガンは、高級チョコレートも口にした事があるみたい。
「ええ、まだ一、二回しか作った事がありませんから。ホワイトチョコレートは、少し作るのが大変なのです」
パーシバルは、くすくす笑う。
「私は、フレッシュいちごのチョコレート掛けも好きですよ」
「あれは、日持ちがしませんの。でも、パーシー様がお好きなら、また作りますわ」
騎士達は甘い物は苦手かな? と見たけど、蕩けた顔をしている。
「先ほどの昼食といい、お茶のスイーツも素晴らしいですな」
ローラン卿、格好良い顔が崩れ掛けているよ。ベリンダは、もう崩れているから、がっかりされなくて良いかもね。
「私は、ここに仕官できて、幸せです!」
エルビス卿、騎士をずっと食事に招待はしないよ。でも、折に触れて、食事会やお茶会はしないといけないみたいだけどね。
リリアナ伯母様も気をつけていたから、それを参考にするよ。
「グレンジャー館に案内しましょう」
お茶の後の歓談も終わったので、パーシバルが話を進める。
今日は、もう少し北部の町で泊まって、ここに来たのだから疲れているかも。
「お姉様、私もグレンジャー館に行きたいです。お兄様にお会いしたいのです」
ヘンリー、可愛いな。でも、どうしよう。
「ナシウスは明日には帰ってきますよ」と言ったものの、私も会いたくなっている。
「私もナシウスに会いたい。今から行ったら、遺跡から戻っているだろう」
サミュエルは、ヘンリーの気持ちを汲み取って、そう言っているの? 我儘坊ちゃんだったのに、成長しているね。
「ええ、フィリップス様にもご挨拶したいし、私も馬車で行きますから、ヘンリーもサミュエルも一緒に行きましょう」
行きは大丈夫だけど、帰りは夕方になるからね。夏だから、日は長いから明るいとは思うけど、弟を危険な目に遭わせたくない。
「子爵様は、 馬の王(メアラス) で行かれないのですか?」
ローラン卿は、 馬の王(メアラス) を一目でも見たくてと、志望動機にあげていたけど、本気だったのかな?
「いえ、 馬の王(メアラス) も運動したいだろうから、パーシー様に乗っていただきますわ。帰りにヘンリーが眠くなったら困りますもの」
パーシバルが苦笑している。ローラン卿達は、ちょっと戸惑っているみたい。私の弟ラブは、こちらの世界で変わっているのかもね。
今日、来た組の人達も、ここで暮らすなら、すぐに慣れると思うよ。
私は、弟最優先を曲げるつもりは、一ミリもないからね。
アダムとメーガンは、バーンズ商会の馬車で来ていた。それに、騎士達の荷物も載せて来たみたい。
「ローラン卿の戦馬は、素晴らしいですね」
パーシバルが褒めているけど、私には凶暴そうな顔の栗毛の馬だとしか分からない。
「ええ、私の最愛のシュバルです」
おい、おい、隣に奥様のベリンダがいるのに、最愛だなんて良いの?
「ローラン卿、それは……」
パーシバルも同意見みたい。私は、パーシバルが馬の方が好きだと言ったら、怒るよ!
「ははは、ローランはいつもそんな感じだから、気にしないでください」
ベリンダがそれで良いと思うなら、私達がどうこう言う事では無いけどさ。
少し、スレイプニル馬鹿な王を思い出してしまったけどね。
そこに、 馬の王(メアラス) をサンダーが連れてきた。
やはり、戦馬よりも二回り大きい気がするよ。スレイプニルは、一回り大きい感じだけどさ。だから、私には乗りにくいんだ。
「これは素晴らしい!」
「本当に八本脚なのですね!」
「美しい!」
騎士達は、涎が垂れそうな顔になっている。冷静なジェラルディン卿すらも、顔面が崩れてデレデレしているよ。
「ええ、 馬の王(メアラス) は素晴らしいでしょう。私は、ペイシェンスの婚約者だから、運動係に指名されて、とても幸せなのです」
パーシバルの言葉に、騎士達は全力で頷いている。
「朝早くから運動させて頂いて、迷惑をお掛けしていますわ」
これは、本音だけど、騎士達には通じない。
「世界一、美しい馬に乗れるのです。早起きなんか気にならないと思いますよ!」
ああ、ローラン卿の熱が強い。
「私も、全く気にならないのに、ペイシェンスはとても気にしてくれるのです。本当に気にしなくて良いですよ!」
「そうなのですか? では、パーシー様に甘えることにしますわ。私だと 馬の王(メアラス) は全速力で走れないみたいですから」
ベリンダは黙って話を聞いていたけど、口を開いた。
「子爵様、明日から、防衛術と共に乗馬も練習しましょう。 馬の王(メアラス) に追いつける馬はいません。暴漢に襲われた時、子爵様だけでも、逃げられます」
えっ! 忙しいからと断ろうとしたのに、パーシバル、ヘンリー、サミュエルが「それが良いです!」と私の代わりに返事をしている。
「お姉様の身の安全が大切です」
パーシバル、狡い! ヘンリーに言わせるなんて。
「分かりましたわ」と答えるしか無いじゃん。