作品タイトル不明
試作品をテストしなきゃ
お茶の時間になったから、一旦、休憩する。
「やはり、ここは良いな!」
ノースコート館は、上級貴族が滞在しているから、お茶の時間でも気を使うみたい。
「今日は、サミュエルも好きなアイスクリームだからでしょ」と揶揄うけど、私も夏の離宮で窮屈な生活を味わったから、理解できるよ。
「あっ、お姉様! 失敗したかもしれません。オルゴール体操のご褒美にアイスクリームを加えたのですが、こうしてお茶の時間に食べられるのなら、ご褒美の意味がありませんね」
ヘンリーががっかりしているけど、ルーシーやアイラやジェニーやリンダが「アイスクリームは何度食べても良いです!」と宥めている。
「オルゴール体操のご褒美とは何なのだ?」
サミュエルにヘンリーが説明している。サミュエルも明日から参加決定だ。
「皆様、お茶の後で耐久テストをしたいから、お手伝い下さい」
領兵の訓練所に、ポリカーボネート擬きの盾を設置する。
「透明な盾なのか? あまり強そうに無いが……ペイシェンスが作ったのなら、何か魔法が掛けてあるのだろう」
サミュエルは、やる気満々だ。ヘンリーも物理攻撃のテストもしたいと言ったので、目がキラキラだよ。
「最初は、弱い攻撃からにしてね。いきなり壊れたら嫌だから」
ヘンリーが剣を抜いて、盾に斬り掛かる。お姉ちゃん、複雑な気持ちだよ。盾がちゃんと防衛するのが見たいけど、ヘンリーが喜ぶ顔も見たいから。
剣は、盾に弾き飛ばされた。
「駄目でした……私では無理みたいです」
がっかりしているヘンリーを抱き締める。
「あれは、防衛魔法を掛けていますからね。それがちゃんと機能したのです。私の魔法陣が間違っていなかったとわかって、嬉しいわ」
ヘンリーが「役に立てて良かったです」なんて可愛い事を言うから、キスしておこう。
「次は、私だな!」
あっ、サミュエルはかなり魔法が使える。その上、ノースコート伯爵に剣術指南も受けているから、壊れちゃうかも?
剣の攻撃だけでは、弾かれるのをヘンリーので見ていたから、サミュエルは風の刃を剣に乗せて攻撃した。
「ああ、駄目だ!」
風の刃は、透明な盾に阻まれて消滅した。
「ふうん、この盾は魔法攻撃も阻むのか? でも、私の火の攻撃はどうかな?」
アイラは、気合い十分に詠唱し始める。
「業火の矢よ、透明な盾を貫け!」
あっ、冬の魔物討伐の時よりも、大きくて太い炎の矢が盾に向かって飛ぶ。これは、拙いかも?
「ああ、駄目だわ! ペイシェンス様、何を盾に掛けているのですか?」
ルーシーも風の刃をブンブン飛ばしたけど、全て逸らしている。
騎士クラブの二人は、ヒソヒソと相談している。
「ペイシェンス様、二人で同時に攻撃しても良いでしょうか?」
魔法を剣に乗せても、アイラやルーシーよりも攻撃力が弱いと感じて、一計をめぐらせたみたい。
「ええ、ご自由に!」
これまでの魔法攻撃や物理攻撃を見て、大丈夫だと思ったんだ。
「悔しい! リンダ、頑張るぞ!」
ジェニーとリンダの波状攻撃、なかなかヒヤリとしたけど、どうにか躱せたみたい。
「後は、魔石の消耗度を減らすのと、もう一つの機能を試したいわ」
内側の魔法陣を、バリアに切り替える。その際に、魔石を新しいのと交換するよ。前の魔石の消耗度と、今度の消耗度を比べたいからね。
「ヘンリーからお願いね! 今度は、反撃されるかもしれないから、気をつけて!」
反撃というか、反射するんだよ。バリアって、そう言う機能だったかな? 阻むだけだと思っていたのだけど? 何か間違ったイメージで魔法陣を作ってしまったのかも?
ヘンリーの剣が飛んでいった。周りにいたのは、私以外は運動神経が良いから、怪我はしなかったよ。
「これは、何なのだ!」
サミュエルがバリア機能に気づいて騒いでいる。
「もう少し離れた方が良さそうよ。あの防衛壁の中で見ましょう」
風の刃が飛んでくるのはごめんだからね。
サミュエルの風の刃、カツンと空に向かって飛んで行った。
「ああ、これ以上の実験は危険だわ。終わりにしましょう」
アイラの火の矢が飛んでくるのは、危険すぎる。
「ペイシェンス様、この盾は何でしょう?」
騎士クラブの二人は、目がキラキラだよ。
「パーシー様の誕生日プレゼントにしようと作ったのです。ですから、内緒ですよ!」
あああ? 皆が残念な子を見る目になっている。私が残念なの?
「えっ、誕生日プレゼントに相応しく無いのかしら? もっとロマンチックな物が良いのですか?」
こちらの世界で、婚約者に盾を贈るだなんて、令嬢として相応しく無いのかな?
「ハンカチに名前を刺繍して、贈れば良いの?」
これは、恋人にプレゼントするのが相応しいと、刺繍のマクナリー先生が言っていたよ。
「違うだろう! ペイシェンスは、やはり何処かズレている。こんな国宝級の盾を誕生日プレゼントで渡すのかと、皆が驚いているのだ」
「いえ、私は素晴らしいプレゼントだと思いますよ! パーシバル様もお喜びになるに決まっています!」
ヘンリーは、素直な子だよね。抱きしめておこう。
「あのう、ペイシェンス様……確か、パーシバル様に守護魔法のマントをプレゼントされたと聞いています。その上に、この非常識な盾をプレゼントされるのですか?」
リンダが代表して質問する。
「えっ、皆様、この合宿の目的をご存知ないのですか? 南の大陸では竜が百年に一度の繁殖期になっています。それも、ここ数百年なかったほどの活性化で、竜が飛来するかもしれないのですよ!」
しまった! ヘンリーが真っ青な顔で「本当に竜がくるのですか!」と呟いている。ぎゅっと抱きしめて宥める。
「竜がローレンス王国まで飛来するかはわかりません。それに、万が一、飛来してもお姉様がヘンリーを護ります! その為に、頑張って修業しますからね」
ヘンリーが私を抱きしめ返して「はい! その時は、私もお姉様と一緒に竜を討伐します」と応える。
「ええ、万が一来たら、頑張って討伐しましょう。でも、ヘンリーは私の言う事を聞いて、避難すべき時は、避難するのですよ」
これは、大切な事だから、キチンと言い聞かせておく。
「そうだな! 竜を討伐するだけが、民を護ることではない。戦力にならない者は、足手纏いになってはならないのだ。避難の誘導や、できることに力を注がなくてはいけない」
魔法クラブの二人、騎士クラブの二人、かなり顔が真剣になってきた。口を滑らしたのは失敗だったけど、何処かで聞く話だからね。
多分、ここにいるメンバーの親は、竜の脅威について知っていると思う。ただ、それを知らせる時期を早めてしまったのは、私の失言だったね。
「でも、やはり誕生日プレゼントには、貴重な盾過ぎると思うのですが……」
ぽそっと、リンダが何か言っているけど、聞こえなかった事にしよう。パーシバルが喜んでくれたら、それで良いんだもん。