軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

パーシバルと夜の馬車

夕方になり、パーシバルが夕食のために迎えに来てくれた。

「ペイシェンス、少し大人びて綺麗だよ」

父親に外出の許可を得て、モラン伯爵家の馬車に乗る。

エスコートもスマートだし、これで付き添いのメアリーがいなければ、夜のデートなんだけどね。

モラン伯爵家までも近い。馬車の中で、今日の教授会の話をパーシバルにする。

「ペイシェンス、本当に大人数になりましたね」

パーシバルは、くすくすと笑っている。やはり、大学生達はグレンジャーに滞在で良かったよ。

「ローレンス王国やコルドバ王国でも米は栽培されていますが、長粒種で畑栽培なのです。短粒種の米は、明明様にお聞きしたら、やはり水田で栽培するみたいなの。リンネル教授も興味を持たれたから、学生達と一緒に滞在して実験して下さるそうよ」

パーシバルも教授まで来られると聞いて、少し驚いている。

「そう言えば、ラドリー様はハープシャーに滞在されるのですよね?」

ラドリー様は、エバの料理目当てだから、きっとハープシャーだと思う。

「ええ、ラドリー様が領地に来られるから、ライトマン教授も来られると言われましたが、彼は学生達とグレンジャーに滞在されるそうです」

あのボロボロのハープシャー館に滞在しようかと言われたぐらいだからね。

海洋生物学のベッカム教授の件も伝えたし、一番大事な話をしたい。

「リリアナ伯母様の手紙で、独立したがっている騎士を紹介すると言われたのです」

やはり、パーシバルは騎士関係の萌ポイントが高い。真剣な顔になる。

「それは、良いですね! モラン伯爵領でも騎士を引き続き探しておきます」

私は、領地の管理について、何も知らない。

「何人ぐらいの騎士が必要なのでしょう」

「最低でも二人は必要です。領内をパトロールするのは領兵だけでも良いのですが、今はその領兵もレベルが低い。騎士が率いるしかありません」

パトロール中に何か問題があった時の為に、ハープシャーに滞在している騎士も必要で、最低二名。

「本来なら、子爵家だと四名は必要ですが、一気に信頼できる騎士を集めるのは難しいですね」

ハープシャー、グレンジャー、どちらも放置されて寂れているけど、元々子爵領だったから、二つ合わせると伯爵領並みの広さになる。

「他の方にも声を掛けてはいるのですが、騎士も家政婦も必要なのです」

私が嫁ぐまでに、グレンジャー家の家政婦を育てておかないといけないのだ。

折角の、夜のお出かけなのに、全く色気のない話をしている間にモラン伯爵家に着いた。

モラン伯爵夫妻は、温かく出迎えてくれ、応接室で少し話をしてから食事になった。

メアリーは、もちろん同席していない。それなら付き添う意味が無さそうだけど、パーシバルと二人っきりにはなれないみたい。

「とても、美味しかったです」

モラン伯爵家は、外交官を集めてパーティが多いみたいで、どの料理も洗練されていた。

「ペイシェンス様の料理人には敵いませんが、古典的なローレンス王国の料理を少し現代風にアレンジさせています」

今夜の料理、アンが作ったのは、前菜だと分かったよ。エバは、これまで魚料理はあまり作った事がなかった。

王都では、生きの良い魚は手に入り難いし、高いからね。それに、肉は、やはり晩餐のメインだから料理長が作ったのだろう。

普通は、紳士方は食卓に残って、強いお酒や葉巻などを楽しむのだけど、今夜は全員で応接室に移動する。

「ハープシャー館にモラン伯爵領の使用人を派遣して下さり、ありがとうございます」

到着した時は、時候の挨拶程度だったから、これを言わなきゃね!

「良いのですよ。私達は、この夏は領地に行きませんから」

マーガレット王女、キース王子、ジェーン王女の縁談があるから、外務省は大忙しみたい。

「少しでもお慰めになるかと、チョコレートとメロンとスイカをお持ちしました」

伯爵夫人は、チョコレートに微笑んだ。伯爵は、メロンとスイカに興味を持つ。

「ペイシェンス様、それは輸入した物ではないのですね!」

パーシバルが、私の横でくすくすと笑っている。

「ペイシェンスが屋敷の温室で栽培したのです。領地のハープシャーでも、二つの温室でメロンとスイカを栽培していますよ」

「それは良い! メロンは、南の大陸からの輸入品で、高価な上に時々中が腐っている物もあったのだ!」

ああ、南の大陸から船便で送る途中で、傷んでしまうのも多かったのだろう。

「まだメロンは何個か熟していないのがあります。熟し次第、こちらに届けるように言っておきますわ」

留守中のメロンは、売ろうと思っていたけど、使用人を借りるからね。それに将来の舅姑には、良い子だと思われたい。

それからは、社交界デビューの注意点などをモラン伯爵夫人から聞いた。

「婚約者が決まっているので、不必要なパーティには参加しなくても良いでしょう」

これは、ありがたい。卒業に必要な単位は足りると思うけど、秋学期が最後の王立学園の日々になるなら、クラブ活動をもっとしたいんだ。

あっ、音楽クラブはちょこっとで良いかな?

錬金術クラブと料理クラブ、特に料理クラブのメンバーは可愛い性格の女の子が多いから、もう少し親密になっておきたい。

ロマノ大学に進学する子はいなさそうだから、ここで仲良くならないと縁が切れそうなんだ。

パーシバルが私の代わりに伯爵夫人に質問してくれた。

「何回ぐらいになるのでしょう?」

伯爵と顔を見合わせて、アイコンタクトを取ってから話し始める。

「先ず、王宮のパーティは欠かせません。ここで国王夫妻に挨拶して、正式な社交界デビューになるのですからね」

それは、伯母様方からも聞いている。

「各国大使館も、社交界シーズンにはパーティを開く。普通は、デビュタントに招待状など送らないが、ペイシェンス様はマーガレット王女の側仕えだから、いっぱい舞い込むだろう」

えっ、ロマノに大使館って何軒あるのかな? 小さな国のもあるよね?

「招待されたからと言って、全て出る必要はないのですよ。でも、ソニア王国、コルドバ王国、デーン王国は、留学生として王子や王女がいらしていますから、出席しないといけませんわ」

それと、モラン伯爵家でもパーティを開くから、これも参加決定だ。

「パーシバルの同級生で、今年、社交界デビューする家もパーティを開くでしょう。これも、無視したら失礼になります」

パーシバルが肩を竦める。

「ロマノ大学に入学してから社交界デビューする人も多いです。でも、カエサル様、アルバート様、アーサー様などは、今年みたいですね」

うっ、知り合いが多いよ! それに、エリザベス、アビゲイルもマーガレット王女と一緒に社交界デビューする。

「騎士コースのメンバーは?」

元々、パーシバルは騎士コース選択なのだ。伯爵が首を傾げる。

「父上、騎士コースのメンバーは、ロマノ大学の試験の準備か、騎士団の入団試験で忙しいですよ。社交界デビューは、ロマノ大学に入学してからか、騎士に叙勲されてからでしょう」

あっ、少しパーシバルの声に羨望が感じられる。王立学園を卒業して、見習い騎士になるか、ロマノ大学を卒業して騎士団に入るかしたかったのだろう。

「騎士にならないと、社交界デビューしても意味はないからな」

貴族で何個も称号を持っているなら、それを譲り受けたら貴族だ。カエサルやベンジャミンとかは、生まれた時から嫡子として、称号を貰ったと言っていた。

そうでない場合は、親は貴族だけど、子どもは庶民になってしまう。自分で騎士になるか、官僚になって称号を獲得しないといけないのだ。

ナシウスは、いずれはグレンジャー子爵になる。でも、ヘンリーは自分で騎士爵を確保しないといけない。私の準男爵位を譲ってあげたいな。